健康・医療

虫歯菌はどこからやってくるのか

虫歯菌はどこからやってくるのか

今回は、「虫歯の原因となる虫歯菌は、どこからやってくるのか」ということについてです。

 

結論としては

・虫歯菌は、親(特に母親)から唾液を介して垂直感染する

・一度感染した虫歯菌は、完全に除去することはできない

・虫歯菌がいても、歯磨きをしっかりすれば虫歯は予防できる

です。

 

虫歯は、虫歯菌が感染して起こる細菌感染症の一つとされています。

(以前はミュータンス菌という細菌が虫歯菌とされていましたが、最近はミュータンス金だけでなく様々な細菌が虫歯の原因になると言われています。)

感染症とは

細菌・ウイルスなどの病原性の微生物が、体内に侵入して症状が出る病気のこと

を言います。

感染症ですから、虫歯菌もどこかから感染してくるわけです。

ただし、厳密に言えば虫歯は感染症とは一線を画します。

 

感染とは、細菌やウイルスなどが「体内」に侵入することが前提です。

体内とは、細胞や血管やリンパ管や組織の中のことです。

 

それに対して、口や鼻から管をいれて到達できるところは、全て「体外」になります。

口・鼻・肺・胃・腸などの中は、全て体外ということです。

 

虫歯菌は口の中にいるため、「体外」に存在します。

そのような意味では感染症とは言い難い面もありますが、ここでは感染症を少し広い意味でとらえて、虫歯は感染症という定説に従って進めます。

 

実は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、虫歯菌はいません。

お母さんのお腹から出たばかりの時は、ほぼ無菌状態です。

しかしその後、口の中に虫歯菌が感染してしまいます。

 

感染経路としては

親(特に母親)からの垂直感染

が主であることが、DNAを使った研究で明らかになっています。

 

それでは虫歯菌の感染について、そして虫歯菌の感染を防げるのかについて、説明していきます。

 

子どもへの虫歯菌の感染

赤ちゃんに歯が生え始めるのは、生後半年くらいです。

そして、子どもの歯が増えてきて生えそろってくる1歳7カ月~2歳7カ月の間に、一気に虫歯菌が感染すると言われています。

 

その感染経路ですが

親などの大人から、唾液を介して感染する

ということがわかっています。

 

具体的には

・キスをする

・口移しで食べさせる

・食べ物を冷ますために、フーフーしてから食べさせる

・同じ食器やスプーンなどを使う

などです。

子どもへの愛情を込めた行動が、虫歯菌を感染させる原因になってしまうわけです。

 

そして一旦感染してしまった虫歯菌は、口の中から完全に除去することはできません。

一旦棲みついてしまったら、いなくなることはないのです。

このように、口の中に常に存在する細菌のことを「口腔内常在菌」と言います。

体内に侵入しているわけではないため、免疫力で駆逐できるわけではありません。

 

虫歯への対策

親から子供へ虫歯菌をうつさないために

・キスをしない

・口移しで食べさせない

・食べ物を冷ますために、フーフーしない

・同じ食器やスプーンなどを使わない

・食器を洗うスポンジを別にする

などを推奨する人や、実行している人もいるようです。

これらを徹底すれば、確かに子どもへの虫歯菌の感染リスクは低減できるでしょう。

 

しかし個人的にに、このような対策はするべきではないと思っています。

虫歯のリスクを下げることも確かに大切ですが、子どもへの愛情表現やコミュニケーションを犠牲にする必要はあるのかをよく考えてもらいたいです。

親(特に母親)とのふれあいやコミュニケーションは、幼い子どもにとっては何よりも大切なものです。

幼いころから愛情を注がれた子どもと注がれなかった子供を比べると、非認知能力の発達などに対して大きな差が生じることもわかっています。

それは大人になった後の人生においても、大きな影響があります。

 

そして、虫歯にならないための方法は、何も虫歯菌に感染しないことだけではありません。

虫歯菌が感染していたとしても、虫歯菌のみでは虫歯にすることはできません。

口腔内に入った糖に虫歯菌が集まり、歯垢(プラーク)を形成します。

歯垢

この歯垢の状態になってはじめて、虫歯を作る酸を出します。

そして歯垢が出来た瞬間に虫歯になるわけでもありません。

虫歯になるには、時間が必要です。

ですから、毎日の歯磨きでこの歯垢をしっかり除去していれば、虫歯菌に感染しようが虫歯にはならないのです。

親子のふれあいやコミュニケーションや愛情表現を犠牲にしなくても、虫歯は予防できるのです。

 

また、母親に虫歯がある場合と母親に虫歯がない場合を比べると、母親に虫歯がある子どもの方が3倍も虫歯になりやすいという研究結果があります。

親が自分の口の中を虫歯のない状態にしておくことで、子どもの虫歯のリスクを下げることが出来るということです。

 

幼い子どもにとって、親は世界の全てと言っても過言ではありません。

親の愛情こそが、子どものその後の発育に大きく影響を与えるのです。

はっきり言ってしまえば、虫歯菌なんかよりも、はるかにそちらの方が大切です。

 

ですから虫歯への対策は

・虫歯菌の感染は気にせず、子どもとスキンシップを取る。

・歯磨きを徹底することで、虫歯は予防する。

・親自身も虫歯のない状態にしておく。

というようにするべきだと思います。

虫歯菌のことを気にするよりも、気兼ねなく最愛のお子さんに愛情を注いでください。

 

大人同士では虫歯菌は感染しない

親から子供に虫歯菌は感染しますが、大人同士では虫歯菌は感染しません。

一度虫歯菌が感染して、細菌の棲み分けが完成した後では、それが外からの新たな虫歯菌で変わることはないとされています。

虫歯菌が感染するのは、子供の頃だけということなのです。

 

ですから、虫歯がひどい人とキスをしたからといって、自分がひどい虫歯になるというようなことはありません。

 

逆に言えば、大人になったら自分の口の中の虫歯菌を無くしたり変えたりできないということです。

つまり虫歯にならないようにするためには、歯磨きをしっかりして予防する以外にないということです。

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まとめ

まとめ

・生まれたばかりの赤ちゃんの口の中は、ほぼ無菌状態。

・虫歯菌は、親(特に母親)から子どもに唾液を介して垂直感染する。

・一度感染した虫歯菌を、完全に除去しきることはできない。

・感染予防のため子どもとのスキンシップをやめるのは、お勧めしない。

・虫歯は歯磨きをしっかりすれば、予防することが出来る。

そもそも、人間の身体はだらけです。

口の中だけでなく、身体中の皮膚の上にも常在菌は無数にいます。

そしてそれらの細菌は、人間にとって必要なものでもあります。

常在菌は、身体に侵入しようとやってきたウイルスや細菌を捉えて排除する働きもあります。

言ってみれば、免疫システムの第一陣と言えるものです。

 

とにかく除菌して細菌やウイルスなどはいない方が良いと思っている人がいますが、決してそんなことはないのです。

そして、細菌やウイルスを排除することなど不可能です。

 

ですから感染自体を防ごうとするのではなく、感染しても問題ないように対応することが重要なのです。

虫歯に関しては、とにかくしっかり歯磨きをすることです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。