健康・医療

患者には歯科医師の技術は判断できない

患者には歯科医師の技術は判断できない

今回は、「患者は歯科医師や歯科衛生士などの技術を判断できるのか」ということについてです。

 

結論としては

・患者には歯科医師などの技術を判断することはできない

・患者の評価は的外れ

・最終的には、好き嫌いなど相性で歯科医院選びをするのが良い

です。

 

「あそこの歯医者は腕が良い」

「あの歯医者は下手でヤブ医者」

このように患者が歯科医師などの技術を評価しているのはよく聞きますが、残念ながら全く根拠のないただの思い込みです。

患者がわかった気になっているだけです。

結果として、その評価がたまたま当たっていたということはあるでしょうが、それは患者が適切な判断を下した結果ではありません。

患者の勝手な思い込みと、実際の歯科医師などの技術が、偶然合致しただけの話です。

 

患者には歯科医師などの技術を判断する術がない

ということが現実です。

 

また歯科医師からすれば、「患者が上手いと勘違いするように治療する」ということは、決して難しい事ではありません。

どのようにすれば、患者が上手いと思い込んでくれるかは、歯科医師を数年でもやっていれば大体わかります。

患者の望みに迎合すれば、勝手に腕が良いと評価してもらえます。

しかし、そのような治療は実際には良くない治療であることの方が多いと言えるでしょう。

 

では、なぜ患者は歯科医師の技術を判断できないのか、そしてだったらどのようにして歯科医院選びを刷れば良いのかについて説明します。

 

痛みと技術は無関係

まず、ほとんどの人が歯科医師の技術を判断する材料にしているものが、「痛み」です。

痛い   → 上手い

痛くない → 下手くそ

という判断なわけです。

気持ち的には分からなくはないですが、残念ながらこの判断基準は全く役に立ちません。

 

ほとんどの場合において

治療時の痛みの程度と治療技術は、相関性は無い

というのが事実です。

 

そもそも痛みというのは、非常に主観的で不確かなものです。

どの程度の刺激から痛いと感じるかというラインは、人によって全く違いますし、同じ人でも部位によって大きく異なる場合もあります。

つまり、個人差や個体差が大きいものであり、痛いか痛くないかは単なる結果でしかありません。

 

例えば、仮に虫歯の治療を麻酔をしないで行うとします。

虫歯をどこまで削るかというのは、歯科医師の判断というより虫歯の範囲に依存します。

除去するべき虫歯を過不足なく削ったとして、痛みを感じる人もいれば、感じない人もいます。

感じるか感じないかは、歯科医師の技術ではなく患者の感覚に依ります。

つまり、結果として痛いか痛くないかは、患者次第だということです。

そこに歯科医師の技術は関係しません。

歯科医師の技術が関係するのは、「虫歯を過不足なく除去できたか」ということについてですが、残念ながらそれを患者が知る術はありません。

 

さらに言えば、「痛くない」ということは良くない治療だという可能性すらあります。

(麻酔をして痛みを感じないようにしている場合は別です。)

虫歯を除去するにしても歯石を除去するにしても、しっかり除去しきるよりも、ある程度まで除去して深いところは残してしまった方が痛みは出にくくなります。

手を抜けば痛みを出にくくすることが出来るということです。

つまり、虫歯や歯石を取り残すことで痛みを出にくくすることができ、患者に上手いと思われやすいということです。

そのように治療したであろうと思われるものは、よく目にします。

歯科医師が悪いのは当然ですが、痛みで評価してばかりの患者にも非があります。

そして、もちろん患者には歯科医師がそのように手抜き治療をしたかどうかは、知る術はありません。

 

「治療が速い=上手い」とは限らない

もう1つ勘違いしやすいこととして

治療が速いのは上手な証拠

ということがありますが、これも必ずしもそうとは言い切れないので注意してください。

 

治療が遅くても、丁寧で上手な場合はあります。

治療が速くても、雑で下手な場合もあります。

 

但し

技術が高い人は、速く治療することも出来る

ということは言えると思います。

 

とは言え、治療が速いからと言って上手とは限らないわけですから、やはり治療の速さで患者が歯科医師の技術を判断することは出来ないということです。

 

得意分野がある

また、仮に歯科医師の技術を判断できる患者がいたとしても、その歯科医師のレベルを判断するには相当の時間がかかります。

というのも、歯科医師にも得意・不得意があるのです。

 

歯科治療は様々な分野がありますが、全ての分野を同じレベルで治療できる歯科医師はいません。

得意な分野もあれば、不得意な分野もあります。

人間であれば当然のことです。

 

例えば、虫歯の治療は不得意でも抜歯などの外科的な分野は得意な歯科医師もいれば、外科は苦手でも歯周病の治療は得意な歯科医師もいます。

そのような場合、どのように評価するべきなのか難しくなりますし、そこまで細かく患者が評価することは不可能と言えます。

 

ですから、そもそも技術が高いかどうかというのは、かなりあやふやなものであるとも言えるのです。

技術を評価するということは、そう簡単にできるものではないのです。

 

相性で選ぶ

では、歯科医師の技術を評価できないのであれば、どのようにして歯科医院選び・歯科医師選びをすればいいのでしょうか。

前提として、これには絶対的な正解などありません。

人によって判断基準は違います。

 

但し、歯科治療の特性上、継続的に通院が必要になることを考えると

ストレスが少なく通えるところを選ぶ

というのが大切ではないかと思います。

 

ストレスを少なくするために、「家から最も近い所」という基準の人もいると思います。

それでも全然良いと思いますが、もしいくつか候補がある中で迷うようであれば

自分と相性が良いと思う歯科医院・歯科医師

を選ぶと良いと思います。

わかりもしない技術なんかを考えるよりも、人としての好き嫌いで決めると良いと思います。

あとは

人として信用できると思えるかどうか

ということですね。

要するにフィーリングです。

 

結果として腕の良い歯科医師なのかはわかりませんが、腕を判断することが出来ない以上、自分の感性で決めるよりほかないと思う次第です。

 

まとめ

まとめ

・患者は歯科医師の技術を判断することは出来ない

・「痛くない=治療が上手」は完全な間違い

・歯科医師にも分野によって得手不得手がある

・歯科医師選びは、最後はフィーリングで決めるほかない

技術を評価するというのは、そんなに簡単なものではないのです。

 

歯科医師が、他の歯科医師の技術を判断することすら、中々困難です。

毎日一緒に働いていたとしても、数日では技術力を判断することは出来ません。

 

また、歯科医師が患者として他の歯科医師の治療を受けたとしても、その技術を判断することは出来ないかもしれません。

判断するには、治療した歯の模型やレントゲンを見せてもらったりしても相当の時間がかかると思います。

技術を判断するというのは、そのようなレベルなのです。

 

歯科医師への患者の評価もそうですが、全てのことにおいて少し学んで知識を得た人は、自分の判断が正しいと傲慢になりがちです。

実際には、ほとんど何もわかっていないんですけどね。

「無知の知」こそが重要だと思います。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。