今回は、「節税」についてです。
と言っても、節税の方法などについてではなく、節税をすることは社会にとってどのような影響があるのかということについてです。
結論としては
・今の日本では、節税をすることは社会にとってメリット
・庶民が富裕層の節税を批判するのは、道理に合わない
・批判するべきは富裕層の節税ではなく、政府の政策
です。
富裕層や資産家の節税などによる税金逃れの行為に対して、批判的な世論が高まることがよくあります。
金融所得課税が20%であることを利用して、資産家・富裕層が資産を増加させていることに対しての批判も、この類のものです。
金融所得課税20%の内訳としては、所得税15%、住民税5%となっています。
また、復興特別所得税0.315%も2037年まで20%に加算されます。
もちろん、脱税は違法ですから行ったら罪に問われます。
しかし、合法的に行う節税は、本来的には誰にも文句を言われる筋合いはないはずです。
にも拘らず、合法的な節税に対しても一般大衆は批判の的にするわけです。
しかし、資産家・富裕層の節税に対して批判をすることは、全く合理的ではありません。
自分で自分の首を絞めているようなものです。
私たち一般大衆は、合理的に考えれば資産家や富裕層にはどんどん節税をしてもらった方が良いのです。
では、節税に対してなぜ批判が起こるのか、そしてなぜ本来的には節税してもらった方が合理的なのかについて説明していきます。
節税を批判する理由

一般大衆が資産家や富裕層の節税などに対して批判するのは
・妬み
・ひがみ
・羨望
という感情的理由からでしょう。
多くの人が会社員などの雇われの身です。
雇われが良いとか悪いとか言うことではなく、雇われという立場である以上、節税などをして税金をコントロールすることはほとんど出来ません。
それに対して経営者などは、かなりの範囲で税金をコントロールすることが出来ますし、資金的に余裕があるため低い税率で金融所得を得ることもできます。
その差に対して、一般大衆は妬みやひがみや羨望の感情を抱き、批判という行動に繋がるのだと思います。
気持ちは分からなくもありません。
自分たちは必死に働いても給料は上がらず、税金や社会保険料は上がっていくため、生活は楽になっていきません。
それなのに、自分たちよりもはるかにお金を持っていて余裕のある資産家・富裕層が、自分たちのできない節税を駆使して資産を増加させているわけです。
不満に思うのも仕方ないのかもしれません。
しかし感情論を抜きにして考えると、資産家や富裕層の節税を批判することは全く合理性がなく、むしろ自分たちの首を自分で絞めている行為でしかありません。
節税をして税金の支払い額を極力小さくすることは、その人にとってだけでなく社会全体にとってもプラスになることなのです。
節税は社会に対してプラス

なぜ節税が社会全体にとってプラスなのかと言うと
経済が良くなるから
です。
経済の状況というのは、お金の流通量に関係します。
おおまかに言えば
使われるお金の量が多いほど、景気は良くなる
ということです。
使われるお金の量が多いということは、需要が高いということです。
「需要>供給」の状態は、物価が上昇するインフレになり、基本的に経済は成長していきます。
節税をして納める税金を減らすことで、使えるお金の量は増えるわけですから、需要の押し上げに繋がります。
逆に税金を納めるということは、使えるお金の量が減るということであり、社会に流通するお金の量が減るということになります。
言ってみれば、税金として納めたお金は社会から消えてなくなってしまうわけです。
つまり、税金はたくさん徴収するほど、インフレを抑えてデフレ化させるインフレ対策なのです。
では今の日本はどうかと言えば、長いデフレから脱却できたとは言えない状況で、2%というインフレ目標に未だに到達できる気配もない状況です。
要するに、不景気だということです。
そのような状況では、インフレ化させるデフレ対策をしなくてはなりませんから、税金は少なくするべきなのです。
つまり今の日本社会全体において
・出来るだけ使われるお金の量が多い方が良い
・そのためには、できるだけ税金として納める額は少ない方が良い
ということになるわけです。
資産家や富裕層にたくさんの税金を納めることを求めるということは、社会に流通するお金の量を減らそうとしていることと同義です。
それは景気を悪くして、一般大衆自身の給料を上げないで貧しくなる方向の圧力を自分自身でかけていることに他なりません。
非合理の極みです。
ですから、本来的には資産家や富裕層には少しでも多くのお金を使ってもらうために、積極的に節税をしてもらった方が社会全体のためには好ましいのです。
悪いのは政府の政策

しかし多くの人は
資産家や富裕層は節税してお金をたくさん持っているのに、自分たちの生活は苦しくて納得できない
と思っているわけです。
この考えは、全く筋が通りません。
この根底にあるのは
金持ちのせいで、自分たちの生活は苦しい
という考え方ではないでしょうか。
しかし実際には、ここに因果関係があるわけではありません。
私たち一般の国民の生活が良くならないのは
・日本の経済が衰退し続けているから
・不景気にも拘らず、政府が税金や社会保険料を上げ続けているから
です。
つまり、一般の国民の生活が良くならないのは
金持ちの節税のせいではなく、政府の政策のせい
なわけです。
消費税などはその顕著な例です。
消費税は、誰にも等しくかかる税金ですから、貧しい人たちの方がダメージを大きく受けるものです。
このような税は、景気が悪い時には最悪の税金です。
要するに、一般大衆が自分たちの生活を良くしたいのであれば
・資産家や富裕層の節税を歓迎する
・政府の政策を批判する
が適切で合理的な行動ということです。
政府の政策というのは、いわゆる緊縮財政全般のことです。
但し、自分たちの生活を良くしたいのではなく、金持ちに嫌がらせしたいだけの人はこの限りではありませんが。
まとめ

・一般大衆が富裕層などの節税を批判するのは、非合理的
・節税した方が、景気は良くなり社会にプラス
・批判すべきは、政府の政策
公共事業や公務員の給料・人数と同じ構造です。
景気が悪い時には
・公共事業を増やす
・公務員の人数を増やす
・公務員の給料を増やす
などをして世の中に流通するお金の量を増やすのが、適切な対応です。
しかし多くの人は
「公務員の人数や給料を減らせ!!」
「無駄な公共事業はやめろ!!」
と自分で自分の首を絞めるようなことを言い続けてきたわけです。
節税の話も全く同じことをしているのです。
納税という面から見ても、そもそも資産家や富裕層は一般大衆より高額の税金を納めています。
資産家や富裕層をねたむのは勝手ですが、声には出さないで心の中にしまっておいてもらいたいです。
理不尽な批判をして、資産家や富裕層が嫌になって海外に行ってしまうのが一番困ります。
現にそういう人は多いですよね。
日本にとって痛手以外の何物でもありません。
理論的に破綻したことを感情で喚き散らす前に、しっかり勉強してほしいものです。
但し、出来るだけ税金を払わない方が良いのは、デフレやインフレが足りない時の話です。
景気が過熱してインフレ率が上がり過ぎている場合は、逆に税金を多くとらなくてはなりません。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。