健康・医療

睡眠を奪う5つの原因

睡眠を奪う5つの原因

今回は、「睡眠を奪う原因」についてです。

 

結論としては

現代人が睡眠不足になる主な原因は、以下の5つ。

・人工の光

・温度

・カフェイン

・アルコール

・社会のタイムスケジュール

となります。

 

これまで、睡眠不足による弊害などについて説明してきました。

今回は、なぜ睡眠不足になってしまうのか、ということについて説明していきます。

 

少しでも睡眠不足の原因になる因子を排除して、質・量ともに十分な睡眠をとりましょう。

 

最適な睡眠時間

睡眠不足になる原因を説明する前に

そもそも最適な睡眠時間は、どのくらいなのか

ということについて説明します。

 

まず前提として、様々な睡眠に関する研究からは

睡眠によるデメリットは、現時点で一つも見つかっていない

という事実があります。

たくさん寝ることで悪影響があるという証明は、現在のところ存在しないのです。

 

しかし、疫学的なデータで見ると、睡眠時間と死亡リスクは反比例しません。

米国で、男性約50万人・女性約60万人を6年間追跡調査した結果が、以下のようなグラフになります。

睡眠時間と死亡リスクグラフ

7~8時間睡眠で死亡リスクが最も低くなり、それ以上でもそれ以下でも死亡リスクが高くなります。

グラフが、Uの字を描く感じですね。

これを見ると

寝過ぎは、むしろ害

というように思うかもしれません。

 

しかし、これにはカラクリがあります。

睡眠時間が長くて死亡リスクが高い人というのは、そもそも重い病気などを抱えていることが多いのです。

つまり、因果関係の逆転です。

〇 死亡リスクが高い状態 → 睡眠をたくさんとる

× 睡眠をたくさんとる → 死亡リスクが高い状態になる

ということです。

重い病気などになっていて、身体が弱っている時には、身体は回復するために睡眠を欲します。

たくさん寝るわけです。

そのような理由で、睡眠時間と死亡リスクの疫学的データはこのようになるのです。

 

とは言え、寝れば寝るほどいいというわけでもありません。

睡眠時間が長いということは、覚醒時間が短いということですからね。

何事もバランスが大切ですから、睡眠時間が短すぎることも、覚醒時間が短すぎることも、どちらも好ましくありません。

 

最適なバランスと言われているのが

睡眠時間8時間

覚醒時間16時間

くらいです。

ですから、睡眠時間は7~9時間を目安にすると良いですね。

 

人工光を浴び続けている

現代の世の中は、人工の光が溢れています。

人間は、電気を手に入れて人工光を使えるようになったことで、時間にかかわらず活動することが出来るようになりました。

夜を克服したとも言えるかもしれません。

 

しかし、その代償として失ってしまったのが睡眠です。

睡眠のリズムを司る視交叉上核は、弱い人工光でも昼だと認識してしまいます。

視交叉上核とは

脳の真ん中あたりにある、概日リズムを司る部位。

メラトニン分泌を制御する。

睡眠のタイミングを決める2つの要素
睡眠のタイミングを決める2つの要素睡眠のタイミングを決める要素は、概日リズムと睡眠圧の2つです。人の概日リズムは平均24時間15分ですが、視交叉上核がメラトニンによって誤差を調整します。睡眠圧は起きている間増え続けるアデノシンの量によるので、24時間リズムではありません。...

 

視交叉上核が昼だと認識してしまうと、メラトニンは分泌されません。

メラトニンは暗くなってから分泌が始まるため、光を消しても数時間程度は、眠りに入るためのメラトニン量に足りていない状態です。

つまり、人工光を寝る直前まで浴びているということは、眠ろうとするときにメラトニンが不足しているのです。

 

特にLEDは、白熱灯に比べてメラトニン生成への悪影響が2倍もあるそうです。

ちなみに、パソコンやスマホなどもLEDが使われています。

 

ですから

・できるだけ夜は光を浴びない、弱くする。

・スマホなどは、LEDをカットするアプリをインストールする。

・寝るときは光がない様に、真っ暗にする。

などが大切になります。

 

寝る直前まで布団の中でスマホをいじっているのは、睡眠に対しては非常に悪影響なわけです。

 

室温が高すぎる

 

温度は、寝つきや睡眠の質に影響を与えます。

大雑把に言えば、睡眠のためには暑いよりも寒い方がベターです。

 

睡眠に対して最適な温度は、布団など温かい寝具を使うこと前提で、18.3℃だそうです。

想像以上に低い温度ですよね。

 

そもそも眠りに入るためには、身体の中心の温度である中核温度が1℃ほど下がることが必要です。

というのも、メラトニンの分泌を促すためには

・暗くなること

・中核温度が下がること

の両方が必要なのです。

 

ですから良い睡眠に入っていくには、暗いだけでなく温度がある程度低いことも重要なわけです。

しかし、多くの人の寝室の温度は高すぎます。

高すぎる温度は、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠の質も低下させてしまいます。

眠りにつくときには

身体の温度を下げる

ということを意識する必要があるのです。

 

身体の温度を下げるうえで効率的に放熱できる部位は、手・足・頭です。

ですから

・寝る前に顔を洗う。

・布団から手足を出す。

というのは、非常に有効です。

(※顔を洗うというのは、顔を冷たい水で冷やすということではなく、水分が蒸発するときに気化熱を奪ってくれるからです。)

 

また、寝る少し前にお風呂に入るのも、睡眠には有効です。

これは、身体が温まることが睡眠に対して良いのではなく、温まった後に放熱して中核温度が下がるためです。

 

カフェイン

眠気覚ましに、最も一般的に使われるのが、カフェインですよね。

カフェインは、アデノシンの受容体を占拠することによって、睡眠圧を消してしまう効果があります。

 

体内のカフェイン量は、飲んで30分ほどすると、ピークになります。

そしてその後、体内のカフェイン量は徐々に減っていくのですが、カフェインの半減期は5~7時間ほどもあります。

半減期とは

分解されたり排泄されたりすることで、量が半分になるまでの時間のこと。

 

夕方の17時にコーヒーを飲んだら、夜の23時ごろはまだ半分のカフェインが残っているということです。

それでは、十分な睡眠圧を得ることが出来ません。

ちなみに、年齢が上がるほど分解速度は遅くなり、カフェインは体内に長く残ります。

 

そしてカフェインの効果が切れると、それまで蓄積してきたアデノシンが、一気に受容体に殺到します。

アデノシンは、起きている時間に比例して増加していくので、この時の眠気はカフェインを飲む前以上のものになります。

これを「カフェイン・クラッシュ」と言います。

つまり、カフェインの効果は

眠気を先送りにしているだけ

ということになります。

 

カフェインの効果によって、本来眠るべき時間に眠らないというのは、睡眠の適切なリズムを壊すことになってしまいます。

カフェインは、出来るだけ摂らないか、摂るとしてもお昼過ぎくらいまでにするべきです。

 

アルコール

アルコールも、睡眠を奪う原因の一つです。

アルコールを飲むと、よく眠れると思っている人が結構いますが、完全な間違いです。

確かにアルコールは覚醒状態を奪いますが、それは自然な眠りとは全く異なるものです。

 

アルコールは、最初に理性を司る前頭前野を鎮静させます。

酔うと、気が大きくなったり大声を出したり暴れたりするのは、このためです。

理性が働かない状態になっているわけです。

 

その後、脳の他の部位も鎮静させて、覚醒状態を奪っていきます。

これは、睡眠というよりも、麻酔をかけられているのに近い状態です。

 

アルコールは、他にも

・睡眠を断片的にする。

・レム睡眠を抑制する。

という悪影響があります。

 

睡眠を断片的にするということは、何度も起きてしまうということです。

「お酒飲んだ後寝ても、全然起きていない」という人は、単に覚えていないだけです。

様々な実験では、アルコールを飲んで寝た人は何度も起きていたにもかかわらず、そのことを覚えていた人はほとんどいなかったことがわかっています。

 

そしてアルコールは、現在分かっている限り、最も強力なレム睡眠抑圧因子です。

事実、アルコール依存症の人は、レム睡眠がほとんどなくなります。

そのため、身体はレム睡眠を欲して、起きている間にも夢を見てしまうようになってしまいます。

それが、妄想や幻覚の正体なのです。

 

要するにアルコールは

・睡眠の質を低下させる

・睡眠の時間が減る

という悪影響があるということです。

 

アルコールは飲まない方が良い

と言わざるを得ません。

 

社会のタイムスケジュールが早すぎる

一般的に社会が始動する時間は、大人の朝型の人に合わせて作られています。

大人の中でも朝型の人は4割程度しかいませんし、思春期などの若い人は概日リズムが遅くなっています。

つまり、現在の社会のタイムスケジュールは、ほんの一部の人にしか適応していないのです。

 

そのようなタイムスケジュールに合わせて社会がまわっていますから、本来朝寝ているべき時間に起きなくてはならない人が、たくさんいるわけです。

当然のように睡眠不足になります。

 

そのような人たちが、無理して起きるために使っているのが、「目覚まし時計」です。

自然に起きた人に比べて、目覚まし時計で起きた人の脈拍と血圧は、急上昇してしまいます。

特にスヌーズ機能は、短時間の間に何度も心臓にショックを与えているようなものです。

 

出来るのであれば、目覚まし時計を使わずに自然と起きるのがベストです。

しかし、どうしても目覚まし時計が必要なのであれば、少なくともスヌーズ機能を使わないようにしましょう。

 

まとめ

・最適な睡眠時間は、8時間。最低でも7時間。

・夜はできるだけ人工光を避ける。

・睡眠には涼しい室温が好ましく、適温は18.3℃。

・カフェインは摂らないか、お昼過ぎまで。

・アルコールは飲まない方が良い。

・出来るだけ目覚まし時計を使わない。

 

人工光・カフェイン・アルコールを可能な限り避けて温度に気を付ければ、相当睡眠の質と量を改善できます。

最も厄介なのは、社会のタイムスケジュールが早すぎることです。

自分が朝型なのか夜型なのかをしっかり把握して、自分のクロノタイプに合った生活ができる職業などを考えるのも一つの選択肢です。

学生の間は、留年しない程度に調整しながら、適当に遅刻していくのも良いですね。

学校の始業に間に合わせることなどよりも、適切な睡眠をとることの方がはるかに大切です。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。