今回は、「痛み」についてです。
要点としては
・痛みは、電気信号が神経を伝わり脳に伝えることで感じる
・痛みを伝える神経は、痛みを伝えるのに特化した神経
・痛みを感じる場所と感じない場所がある
・心の痛みも身体の痛みも、脳では同じような反応が起こる
です。
痛みは嫌なものですね。
痛みを感じていると、身体の機能は落ちますし、気分も滅入ってきます。
あらゆる痛みを感じることなく過ごせるのであれば、それに越したことはないと思ってしまいます。
とは言え、痛みは私たちにとって必要不可欠なものでもあります。
痛みは危険を知らせる警告アラームの役割をしていますから、全てについてではありませんが、痛みのお陰で身体の不調などの問題が起こったことを認識できることもあります。
つまり私たちは、生きている限り痛みと付き合っていかなくてはならないわけです。
一生付き合っていくわけですから、少しでも痛みについて理解をしていた方が、無駄に敵視しなくても済むかもしれません。
ということで、痛みについてのあれこれを説明していきます。
痛みを感じる流れ

痛みを含めたすべての感覚は、脳が感じています。
腕が痛くても、足が痛くても、頭が痛くても、歯が痛くても、その痛みを感じている場所は脳(大脳)です。
大まかな流れは、以下のようになります。

1.身体の様々な部分(末梢)が、刺激(感覚)を受け取る。
2.その刺激を電気信号にして、神経が伝える。
3.神経を通ってきた電気信号が、脳に伝わる。
4.脳が電気信号を受け取り、刺激を受け取った末梢の痛みとして感じる。
体の部位が刺激を受け取り、神経がそれを伝え、脳が感じるわけですね。
神経には専門の感覚がある

「末梢→神経→脳」という流れは、痛覚に限ったことではなく、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの他の感覚でも同様です。
あらゆる感覚の刺激は、神経によって脳に伝達されます。
但し、一つの神経で様々な感覚の刺激を伝えているのではなく、それぞれの神経は一つの感覚に特化しています。
痛みを伝える神経は、痛み専門であり、痛みの電気信号のみを脳に伝えます。
同じように、目の視神経は光にしか反応しません。
耳の聴覚神経は、音にしか反応しません。
ですから、仮に聴覚神経に光を当てても、反応しないわけです。
このように、神経にはそれぞれ専門性があるのです。
全か無かの法則

また、神経には「全か無かの法則」という特性があります。
これは、神経が刺激を伝える際に、ONかOFFしかないということです。
それぞれの神経の受ける刺激が、ある値を超えたらONになり電気信号を伝え、超えなければOFFで電気信号を伝えません。
その値のことを「閾値(いきち)」と言います。
つまり、神経は痛みなどの感覚の強弱を伝えることは出来ないということです。
しかし実際には、私たちは痛みなどの強弱を感じています。
これは、それぞれの神経で閾値が異なるためです。
例えばA,B,Cの3つの神経があり、閾値が以下の通りだったとします。
A・・・1
B・・・2
C・・・3
すると刺激の大きさによって、反応する神経の数が異なります。
刺激が1未満 反応なし
刺激が1以上2未満 1つ反応(Aのみ)
刺激が2以上3未満 2つ反応(A,B)
刺激が3以上 3つ反応(A,B,C)
反応する神経の数が多ければ、痛みを強く感じます。
このようにして、痛みの強弱を感じているのです。
つまり「全か無かの法則」は、神経一つ一つについては成り立ちますが、複数の束になった場合には成り立たないわけです。
実際には無数の神経が束になっているため、全か無かの法則は成り立たないのです。
痛みを感じる場所・感じない場所

では、痛みを感じる神経はどこにあるのでしょうか。
実は、痛みを感じる神経は身体中全てに存在しているわけではありません。
痛みを感じる神経がない場所は
・毛
・爪
・骨
・軟骨
・歯の歯髄以外
などです。
毛や爪は切っても痛くないので、わかりやすいですよね。
しかし、骨や軟骨は痛みを感じる神経が通っていないというのは想像しにくいかもしれません。
骨折などをした時には非常に強い痛みを感じますからね。
骨折の痛みは、実は骨の痛みを感じているのではなく、周囲の組織の痛みを感じているのです。
逆に痛みを感じる神経がある場所は
・筋肉
・靭帯
・腱
・膜
などがあります。
但し、大半が筋肉の中です。
これらは全て軟組織ですから、レントゲンなどで異常を見つけることが非常に困難です。
ですから、痛みの原因がなかなかわからないというようなことが、よくあるわけです。
心の痛みと身体の痛みは同じ?

痛みについて、面白いことがわかっています。
それは
体の痛みも心も痛みも、脳では同じような反応が起こっている
ということです。
また、体の痛みと心は、密接な関係にあることもわかっています。
負の感情は痛み関連の脳領域を活性化し、癒しの感情は痛みを和らげることが解明されてきています。
さらには、精神的なストレスは痛みを感じやすくさせることや、睡眠不足や睡眠の質の低下も痛みの感じ方を敏感にさせるのです。
痛みは、肉体的な問題だけでなく、メンタルや様々な要素によっても大きく変動したりもします。
そのようなことを考えると、痛みを解決するためには末梢である身体の部位への治療だけでは不十分かもしれませんね。
まとめ

・感覚は、末梢が刺激を受け取り、神経が伝えて、脳が感じる
・神経が伝える感覚は、一つに特化している
・痛みを伝える神経は、骨や軟骨などには存在しない
・脳は、身体の痛みと心の痛みに対して、同じような反応をしている
痛みというのは、身体の危険を知らせてくれる警告アラームの役割をしている重要なものです。
しかし、それと同時に非常に主観的なものでもあります。
乱暴に言ってしまえば、痛いと思っていれば痛くなり、気にしなければ痛くならないこともあります。
事実、腰痛などは病院で検査しても原因を特定できない場合が80%以上と言われています。
もちろん、今の医学レベルでは原因を特定できないということかもしれませんが、心の持ちようが大きく関与しているという可能性も非常に高いです。
メンタルや体調や睡眠などの様々な要素が、痛みに深く関与していることが解明されてきています。
そのような様々な要素が痛みに関与しているのであれば、痛みを取り除くことを医療者のみで行うことは不可能に近いということです。
自分の痛みをコントロールするためには、各々が痛みについて理解することが必要なのかもしれません。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。