経済

客にお金を使わせる3つの方法

客にお金を使わせる方法

今回は、ビジネスをする上で「客にお金を使わせる方法」についてです。

 

結論としては

・人の脳は、出費をするときに身体の痛みと同様に痛みを感じている

・客に物を売るために、脳を騙すような方法(罠)が多く取られている

・売る側の方法を把握して理解すれば、罠に引っかかりにくくなる

となります。

 

人は、モノやサービスに対してお金を支払うときに、身体的苦痛の処理に関わる脳の部位が刺激されることが分かっています。

脳は「身体的な痛み」と同様に、「出費の痛み」を感じているということです。

お金を支払うということに対して、人間の脳はマイナスの反応をするということですね。

これは、「人は損失を回避しようとする傾向がある」というプロスペクト理論によっても裏付けられています。

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プロスペクト理論は、行動経済学の基となる理論です。

行動経済学とは、経済学に心理学を反映させた学問です。

従来の経済学は、人は経済活動を行う上で合理的な行動をすることを前提としています。

それに対して行動経済学は、人が心理的・感情的に非合理的な経済活動を行うことを加味しています。

実際に近いのは、従来の経済学よりも行動経済学です。

 

すると、モノやサービスを売る側からしたら、消費者の「脳が感じる出費の痛み」をどれだけ低減できるかが重要になってくるわけです。

つまり、ビジネスにおいて

消費者の脳を騙して、出費の痛みを低減させることが鍵になる

ということです。

 

そして出費の痛みを低減する方法としても、行動経済学が用いられています。

様々な方法がありますが、ここでは代表的な3つの方法(罠)を紹介します。

・時間差の罠

・注目の罠

・相対性の罠

の3つです。

 

ビジネスの上では当たり前のように使われていますが、理解しておくことで消費者としては無駄にお金を使わされることを無くしたり減らしたりすることが可能です。

つまりは騙されないようになれる、ということです。

 

それでは、それぞれの罠について説明していきます。

 

時間差の罠

時間差の罠とは

モノやサービスを消費するタイミングと、お金を支払うタイミングの時間差を大きくするほど、出費の痛みを減らすことができる

というものです。

実際の出費の額が小さくならなくても、脳が感じる出費の痛みは小さくなるわけです。

脳が騙された錯覚状態になるということですね。

 

モノやサービスの提供側としては、時間差を使って財布の紐をゆるめようとするわけです。

 

出費をするタイミングとしては

・消費前

・消費中

・消費後

の3つがあります。

 

消費前

いわゆる前払いです。

旅行などにおける費用全額込みの前払いパッケージツアーなどがこれにあたります。

 

もちろん出費するときの痛みが無くなるわけではありませんが、未来のイベントに支払うため投資しているような感覚になり、支払ったお金は失った感覚が小さくなります。

お金を支払っているので、旅行までの期間も純粋に楽しみな期間になりますしね。

しかし、消費前の支払いは脳が騙されるだけでなく、実際に損をする可能性が高いです。

その理由として

・割高になる

・消費までの間の利息などが無くなる

ということがあります。

 

基本的に全額込み前払い方式は、割高になります。

本来的には特に必要のないサービスが、大量にパッケージされていますからね。

旅行中は色々と食べたり飲んだりサービスを利用しても支払いがないので、無料気分で食べ過ぎ飲み過ぎになることも確実です。

必要なサービス分だけ、その場で支払った方が割安になるのは明らかですね。

 

また前払いすると、前払いしてから消費するまでの期間に、そのお金で稼ぐことのできた運用益や利息を失う結果になります。

例えば1年前に100万円の旅行の前払いをしたとしたら、年利6%で1年間で増やせた6万円を失うことと同義です。

 

このように前払いは、脳の出費の痛みを時間差の罠でごまかされてしまうだけでなく、実際の損得でもマイナスになりがちです。

 

ただし、前払いはデメリットばかりではありません。

前払いをしているため、消費中はお金のことを気にせず存分に楽しめるとも言えます。

例えば新婚旅行や年に1回の家族旅行などのように、多少の収支のデメリットを受けても楽しむことを優先したい場合は、前払いは有効な方法とも言えます。

 

大切なのは、メリット・デメリットをしっかり理解しておくことです。

 

消費中

消費したいときに随時支払いをする、時間差のないパターンです。

時間差がないため出費の痛み減らせませんから、消費前・消費中・消費後の中で最も出費の痛みを感じます。

逆に言えば、出費を最も抑えやすいのが消費中の出費です。

消費者の立場からすれば、最も合理的な選択肢になります。

 

何かをするたびに、いちいち財布から現金が出ていくのを考えると、わかりやすいですよね。

よく吟味してから出費するようになり易いです。

 

しかし、前払いなどと比べると、いちいちお金のことを考えなくてはならないため、旅行中などに目一杯楽しむのには不向きとも言えます。

 

消費後

いわゆる後払いです。

クレジットカード払いやリボ払いなどが、これにあたります。

最も一般的に、時間差の罠として用いられる方法で、最も効果的な時間差の罠です。

 

消費者は出費を先送りしているため、出費の痛みを和らげることができます。

出費をしている感覚すらない人もいるかもしれませんね。

ということは、当然出費への抵抗は少なくなり余計に出費をしてしまいやすくなるということです。

 

クレジットカードの分割払いやリボ払いなどは、消費後の支払いを分割してさらに先送りしますから、もっと出費の痛みは低減されます。

そしてクレジットカード会社などは、この人の非合理的な習性を利用して、たっぷりと利息をとって稼ぐわけです。

そして後払いにした人は、利息を払うことで実質的な損得も当然マイナスです。

 

注目の罠

2つ目の罠は、注目の罠です。

注目の罠とは

支払いをしている人の、「お金を支払う」という行為への注目を減らすことで、出費の痛みを低減することができる

というものです。

 

最も注目が高くなってしまうのが、財布から現金を出して支払うことです。

明らかに現金を失うという行為を、目の当たりにするわけですからね。

 

それに対して、注目を減らす方法としては

・クレジットカード、電子マネー、リボ払い

・制限付き利用

などがあります。

 

クレジットカード・電子マネー・リボ払い

これらは、お金を支払っている感覚を薄めることができます。

財布から現金は一切出ていっていませんからね。

クレジットカードなどは、時間差の罠だけではなく注目の罠の効果も持っているわけです。

 

これらを消費者に使わせることで

・金離れが良くなる。

・高額なものを買いやすくなる。

・支払った金額を、低く見積もる傾向にある。

という効果が期待できます。

 

要は、余計にお金を使わせやすくなるわけです。

 

制限付き利用

ギフトカードなどのことです。

現金をギフトカードなどに変えることによって、注目を下げることができます。

前払いにもなりますから、時間差の罠の効果もあります。

 

ギフトカードなどを使用すると、使用金額は大きくなりやすく、使う金額も大きくなってしまう傾向にあります。

クレジットカードと同じですね。

 

また、汎用性の高い現金をわざわざ汎用性の低いものに変えてしまうわけです。

合理的に考えればあり得ない選択ですが、消費者にお金を余計に使わせるには有効な手段になります。

 

相対性の罠

3つ目は、相対性の罠です。

相対性の罠とは

本来比べる意味のない比較対象を作ることで、実際の価値とかけ離れた評価をさせて、出費の痛みを低減することができる

というものです。

 

セールを始めとした値下げなどで、主に用いられます。

例えば

1万円の商品が、6割引きの4000円!!

というものを見つけて購入したとしたら、多くの人は得をした気分になるでしょう。

 

これは「4000円支払った」と同時に、「6000円得した」と感じるからですよね。

では、その商品がもともと4000円だったとしたら、割引されていた時と同じように感じるでしょうか。

もちろん、同じようには感じません。

元々4000円だった場合と1万円が4000円になった場合とでは、4000円でその商品を買うというのは同じであるにも拘らず、全く感じ方が変わるのです。

 

これは、「1万円」という基準値が設定されているかどうかによります。

1万円という基準と比べたら、4000円が安いのは当然です。

しかし、本来考えなくてはならないことは

・元値の1万円という金額は、そもそも適正なのか?

・自分にとって、そのシャツは4000円で買う価値があるのか?

ということです。

 

本質的には、1万円と4000円を比べて安くなったということは、何の意味も持たないのです。

6000円得したのではなく、「そのシャツに対して4000円支払った」ということだけが事実です。

そして4000円支払うということは、そのシャツを手に入れる代わりに4000円で買える他のモノやサービスを諦めるを言うことと同義です。

 

しかし消費者はそのようには考えられないため、売り手側としたら4000円で売りたい商品を最初1万円にして、後で4000円に値引きすればいいわけです。

この方法は

本質的には意味のない比較対象を、近くに少数だけ設定する

ということをしているのです。

それによって、消費者に比べさせて非合理的な判断をするように誘導するということです。

 

まとめ

・消費者にお金を使わせるために、様々な罠がある

・代表的なものとしては、「時間差の罠」「注目の罠」「相対性の罠」

・消費者としては、理解しておくことで騙されにくくなれる

 

最近は現金の使用がどんどん減って、クレジットカードや電子マネーなどが主流になっています。

これらは現金と違いポイントなどが付与されるため、上手く利用すればメリットも大きいものです。

しかし知らず知らずのうちに罠にはまっていて、余計な出費を重ねるようなことは避けたいですよね。

大切なのは、これらの罠を理解しつつクレジットカードや電子マネー使うことです。

 

ただし、人々が積極的にお金を使うことは、マクロ経済的に見れば良いことです。

デフレが続いている日本にとっては、どんどんお金を使ってもらいたいところですからね。

 

どのような判断をするにしても、自分の頭でしっかり考えて判断できるようになるのが重要です。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。