3.リターンはリスクの対価

リスクとリターン

今回は、リスクとリターンについてです。

 

リスクとリターンの関係において、理解しておかなければならないことは

リターンは、リスクの対価

ということです。

言い方を変えれば、「リスクはリターンの源」とも言えます。

 

つまり

リスクを取らなければ、リターンを得ることはできない

ということです。

 

このことは投資に限らず、基本的に全てのことについて当てはまります。

しかし、「リスクを無くせ!!」というような間違った常識を持っている人が非常に多いですよね。

特に日本人は「ゼロリスク信仰」が非常に強いため、リスク自体を非常に嫌う傾向にあります。

まずは、この常識を疑ってください。

 

リスクに対しての考え方として重要なのは

× リスクを無くす

〇 リターンを得るために、適切にリスクを取る

ということです。

 

例えば、医療について考えてみましょう。

病気を治すために、薬を飲んだりしますよね。

しかし、薬は本質的には体にとって「毒」です。

副作用が出るかもしれませんし、アレルギーが出てしまうかもしれません。

ですから、病気でない時には薬は飲まないわけです。

 

つまり、病気の時に薬を飲むのは、「病気を治す」というリターンを得るために、「毒である薬を飲む」というリスクを支払っているということなのです。

リスクとリターンの関係

こんな感じです。

 

このように、リターンを得るにはリスクを取る必要があります。

つまり、生きていく上で、リスクは必要不可欠なものだということです。

 

そして投資は、リスクとリターンの関係を学ぶのに、非常に有効です。

常識を捨てて、自分の頭で考えてみてください。

 

それでは、リスクとリターンについて、説明していきます。

 

リスクとリターンの関係

リターンはリスクの対価ですから、当然リターンとリスクの間には相関関係があります。

・ローリスク → ローリターン

・ハイリスク → ハイリターン

となりますよね。

大まかに言えば、リスクとリターンの間には比例関係が成立します。

 

これを投資の資産クラスで考えてみると、以下のようになります。

リスクとリターンの関係図

・預金は、ローリスク・ローリターン

・債券は、ミドルリスク・ミドルリターン

・株式は、ハイリスク・ハイリターン

 

では、下の図におけるリスクとリターンの比例関係から外れたAとBの領域には、どのようなものが入るでしょうか?

ハイリスクローリターンとローリスクハイリターンの図

<Aの領域>

ローリスク・ハイリターンです。

小さいリスクで、大きなリターンが期待できるという領域です。

誰もが望む領域ですが、投資に限らず、基本的にAの領域に該当するものは存在しません。

 

但し、厳密に言えば、Aの領域は存在するとも言えます。

存在はしますが、ローリスク・ハイリターンを獲得するためには、リスク以外に支払わなければならないものがあります。

例えば

・権力があること

・資産家であること

・特別な人脈があること

などです。

つまり、一般的には持ち得ない特別な力を持っている場合のみ、ローリスク・ハイリターンを獲得することができる可能性があるということです。

 

逆に言えば、ほとんどの人にとってローリスク・ハイリターンは、やはり存在しないのと同義だということです。

「ローリスク・ハイリターンは存在しない」というのを、絶対に忘れないようにしてください。

 

<Bの領域>

ハイリスク・ローリターンです。

大きなリスクを支払うにも拘らず、小さなリターンしか期待できないものです。

誰も見向きもしないような領域ですよね。

 

しかし、Aの領域と違いBの領域には、様々なものが数限りなく存在します。

詐欺案件や、手数料ばかり搾取されるような詐欺まがいのボッタクリ商品などです。

詐欺やボッタクリなどは、あたかもAの領域かのように見せかけて、Bの領域のものを売りつけてきます。

 

誰もが「自分は引っかからない」と思っていますが、そういう人ほど引っかかってしまうんですよね。

強欲になって、「ローリスク・ハイリターン」というリスクとリターンの原則から外れたものを求めると、気づかないうちにBの領域にはまってしまうものです。

「ローリスク・ハイリターンは存在しない」という原則を、絶対に忘れないようにしてください。

投資に限らず、全てにおいてです。

 

適切なリスクを取るためには相場を知る

騙されたりしないためには、「どのようなものがローリスク・ハイリターンなのか」ということを知らなくてはなりません。

そのためには、リスクとリターンの適正値を知れば良いですよね。

「適正値から外れているから怪しい」と気付けるわけです。

 

この適正値のことを、「相場」と言います。

要するに

相場を知れば、詐欺やボッタクリに騙されない

ということです。

 

この適正値は、様々な分野でそれぞれ学ぶ必要がありますが、一つ例として投資案件を考えてみましょう。

以下のような案件があったとします。

・元本保証

・年利6%

この案件を、どう判断しますか?

 

答えは、この案件は相場から外れすぎているため、100%詐欺です。

言ってみれば、「ローリスク(ノーリスク)・ハイリターン」な案件です。

リターンを得るための、相応のリスクを支払っていません。

そんなものは存在しませんから、おいしい話に見せかけた詐欺であることは確実です。

 

では、相場を見てみましょう。

<国債・銀行預金>

・元本保証

・年利0.001~0.1%程度

損をすることがない元本保証では、年利0.001~0.1%程度です。

元本保証では、利息はほとんどゼロであることがわかりますね。

 

<米国株式>

・暴落時には短期的に40~50%の暴落もあり得る

・長期的には年利6~7%

年利6%を得るためには、相応のリスクを取らなくてはならないことがわかりますね。

 

このような相場を知っていれば、元本保証で年利6%という話が詐欺だということは、一瞬でわかるわけです。

現代はスマホで様々な分野の相場をすぐに調べられますので、迷ったらまず相場を調べる習慣をつけましょう。

 

投資におけるリスクとは

リスクとリターンの関係を理解したうえで、「投資におけるリスク」とは具体的に何を指すのかについて、説明します。

 

投資におけるリスクとは、損をする可能性を指すわけではありません。

投資におけるリスクとは

リターンの振れ幅(値動きの振れ幅)

のことを言います。

もう少し細かく言えば、「リターンがマイナスになったときの、マイナスの大きさ」のことです。

 

以下のグラフを見てください。

リスクとリターンの振れ幅の図

このような値動きをする銘柄①と銘柄②があったとします。

 

①はリターンがプラスに動いても、マイナスに動いても、振れ幅が大きいですよね。

それに対して②は、振れ幅が小さくなっています。

 

この振れ幅の大きさこそが、投資におけるリスクです。

①はリスクが大きいハイリスク・ハイリターンな銘柄で、②はリスクが小さいローリスク・ローリターンな銘柄ということです。

 

値動きが大きい銘柄は、リスクが高い銘柄と言えるわけですね。

 

リスク許容度の範囲内で投資する

では、実際に投資をする上で、どのようにリスクを考えればいいのでしょうか。

大きなリターンを目指すためには、大きなリスクを背負う必要があります。

 

多くの人がリターンばかりに目が行きがちなのですが、実際に投資をする上で何よりも重要なのは

リスク許容度の範囲内で投資をする

ということです。

 

リスク許容度とは、「自分はどの位までのリスクを許容できるのか」ということです。

もう少しかみ砕くと、「どのくらいのマイナスまで受け入れることができるか」ということになります。

 

具体的には、暴落などで資産が減少した場合にも

・経済的に、日常生活に支障が出ない

・精神的に、問題なく過ごせる

という金額の範囲内で投資をしましょう、ということです。

 

そしてこのリスク許容度は、人によって異なります。

リスク許容度を左右する要因は多数あり、以下のものが代表的なものになります。

リスク許容度の表

様々な要因を考慮したうえで、自分自身のリスク許容度を把握しなくてはなりません。

そして投資はリスク許容度の範囲内で行うことが絶対条件だということを、忘れないようにしましょう。

 

リスク許容度を超えた投資をすると

投資で最も大切なことは、退場せずに市場に参加し続けることです。

様々な研究や過去のデータからも、長期的に継続することこそが、利益を出すために最も重要なことだということがわかっています。

そのためには、リターンよりもリスクをまず考える必要があります。

リスクを考えてリターンを考える

この流れです。

 

しかし多くの人は、リターンに目を奪われてリスクを考えることが疎かになってしまいがちです。

知らず知らずの間に、リスク許容度を超えた投資になってしまっているのです。

特に上昇相場の時は資産がどんどん増えるので、ついつい気が大きくなってしまいます。

そしてより大きなリターンを求める強欲モードに入ります。

普段はリスクゼロを求めたりするのに、そのような時にはリスクが目に入らなくなってしまうわけです。

 

そしてリスク許容度を超えた投資を続けていると、いつか必ず来る暴落がやってきたときに、莫大な損害を喰らって市場から泣きながら退場という悲惨な結果が待っています。

 

投資をしていれば、暴落は必ず経験します。

しかしその暴落もリスク許容度の範囲内であれば、問題なくそのまま継続できます。

退場せずに投資を継続できれば、暴落時のマイナスを相殺して、さらに大きなプラスリターンを得られる可能性が非常に高いのです。

 

リターンばかりに目を奪われず、「リスク許容度の範囲内で投資する」という大原則を忘れないようにしてください。

 

生活防衛資金

「リスク許容度の範囲内で投資をする」

ということと同じくらい重要な投資の大原則として

生活防衛資金を確保する

ということがあります。

 

投資はマイナスになる可能性もあります。

生活するためのお金まで投資して暴落で失ってしまったら、生活そのものができなくなってしまいますよね。

 

ですから投資は生活資金に手は付けず、余裕資金で行わなくてはなりません。

生活資金は生活をして生きていくためのお金で、余裕資金は仮になくなっても生活に困らないお金です。

生活資金と余裕資金

しかしリストラや病気などによって、急に収入がなくなることがあるかもしれません。

そのような時にも、とりあえずしばらくは生活に困らないようにある程度のお金を貯めておく必要があります。

それが「生活防衛資金」です。

目安として生活防衛資金は、毎月の生活費の6カ月~1年分くらいと言われています。

それだけあれば、とりあえず凌ぎながら新しい仕事を見つけたり病気を治したりすることができるということですね。

 

さらに生活防衛資金があることで

・収入が途絶えているときも投資した資金をそのままにしておける

・相場が下落した時なども、精神的な安定を保ちやすい

というようなメリットもあります。

 

ですから基本は、まず生活防衛資金を貯めて、その後余裕資金で投資をするということになります。

 

ただし生活防衛資金が確保できていなければ、絶対に投資をしてはいけないというわけでもありません。

生活防衛資金を貯めながら、慣れるためにも少額ずつ投資を始めるのもありです。

そのあたりは個人の好みにもよるかもしれません。

ただし生活防衛資金が溜まっていない場合の投資は、必ず少額にしましょう。

 

まとめ

・リスクの対価がリターン

・リスクは無くそうとするのではなく、適切にとる

・リスクとリターンの適正値である相場を知ることで、騙されない

・投資におけるリスクとは、リターンの振れ幅のこと

・リスク許容度の範囲内で投資をする

・生活防衛資金を用意する

 

リスクは、リターンの源です。

人は誰もが、知らず知らずのうちにリスクをとって生きています。

リスクを受け入れるからこそ、リターンを得られて、前に進めるのです。

 

しかし、多くの人はリスクを受け入れている自覚がないことが多いのです。

そのため、「ゼロリスク信仰」のような、現実不可能な考え方になってしまうわけです。

そのような無意味な常識は、さっさと捨てましょう。

 

そして

・リスクを把握すること

・リスクを適切にとること

・リスクをコントロールすること

これらについて、考えてみてください。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。