健康・医療

「痛くない=悪くない」とは限らない

「痛くない=悪くない」とは限らない

今回は、「痛み」についてです。

 

結論としては

・「痛くない=悪くない」とは限らない

・「痛い=悪い」とも限らない

・痛みは身体が出すたくさんのサインの中の一つでしかない

となります。

 

誰もが痛いのは嫌ですよね。

痛いのが嫌なのもあり、多くの人は痛みがあると身体の異常を心配します。

歯に痛みを感じれば、虫歯などになっているのではないかと心配するようなものですね。

 

逆に言えば、「痛くないから問題ない」と考えてしまいがちでもあります。

しかし、これは少し危険です。

 

確かに、痛みというのは身体の異常を知らせてくれるサインになりますが、実はそこまで精度が高いものではありません。

身体のどこかに異常があった場合、必ず痛みが発現するとは限りません。

「痛くない=悪くない」というのは必ずしも成り立つわけではないのです。

 

また逆に、「痛い=悪い」とも限りません。

歯が痛かったとしても、歯には原因がない場合もありますし、痛みがあっても原因が「異常」ではない場合もあります。

 

それでは、痛みについて説明していきます。

 

痛みとは

痛みというのは、人間に備わっている危険察知システムの一つです。

自分を守るための防御機能の一つとも言えます。

痛みがないと危険を察知したり回避したりすることができず、命の危険につながってしまうこともあります。

つまり、痛みは命を守るために必要不可欠なものなのです。

 

では、一つ質問です。

痛みはどこで感じているでしょうか?

 

腕が痛いときは腕、足が痛いときは足、歯が痛いときは歯・・・ではありません。

どこの部位の痛みであったとしても、実際に痛みを感知しているのは脳(大脳)です。

こんな感じです。

痛みの脳への伝わり方1

 

痛みを感じる大まかな流れとしては

1.身体の部位(末梢)が刺激(感覚)を受け取る。

2.刺激が電気信号となって、神経を通っていく。

3.神経を通ってきた電気信号が脳に伝わる。

4.脳が痛みとして感じる。

となります。

 

このような流れは、痛み(痛覚)に限りません。

味覚・嗅覚・聴覚・視覚など全ての感覚について、同様のことが言えます。

感覚を司っているのは脳で、末梢は刺激を受け取る役割、そして神経はそれを伝える回路のようなものですね。

 

「痛くない=悪くない」とは限らない

例えば虫歯が見つかったときに

痛くないのに、なんで虫歯なの??

と驚く人がよくいますが、「痛くない=虫歯じゃない」とは限りません。

 

先程見たように、末梢で受けた刺激が神経を通って脳に伝わります。

当然ですが、刺激が脳に伝わったら何でも痛みとして感じるわけではありません。

ある一定レベルの刺激を超えなくては、脳は痛みとして感じません。

この一定レベルは人によっても違いますし、同じ人でも部位によっても変わります。

 

例を挙げてみましょう。

針で指を刺すことを想像してみてください。

針の先端が指に触れている程度だと、痛みとしては感じませんよね。

これは刺激のレベルが、痛みを感じるレベルよりも小さいからです。

少しずつ針を強く押していくと、どこかで痛みを感じ始めますよね。

この段階で、刺激は痛みを感じるレベルを超えてきたわけです。

 

つまり虫歯やケガなどでも、刺激が痛みを感じるレベルに到達していない場合は、悪い状態だとしても痛みを感じることはないということです。

そして部位によって、強い刺激にならないと痛みとして感じにくい部位などもあります。

そのような痛みに強い部位(刺激に反応しにくい部位)などは、相当悪い状態までいかないと痛みを感じないということです。

肝臓などは、そもそも痛みを感じる神経自体が存在していません。

そのため症状が非常に出にくく、「沈黙の臓器」と呼ばれたりします。

 

つまり

痛くないということと、問題がないということは同義ではない

ということです。

 

「痛い=悪い」とも限らない

「痛くないから悪くないとは限らない」と同様に

痛みを感じる部位が悪いとは限らない

ということも言えます。

 

痛みを大きく分類すると、3つに種類に分けられます。

以下の3つです。

①末梢が原因(ケガなど)

②神経が原因(神経自体が損傷など)

③脳が原因(脳自体が痛みを感じる)

痛みの脳への伝わり方2

①の末梢が原因の痛みは想像しやすいですよね。

ケガや虫歯など、多くの人が一般的に痛みと認識しているものですね。

 

②の神経が原因の痛みは、例えば坐骨神経痛などです。

神経自体にダメージが与えられることによって、電気信号が伝わっていきます。

この場合は末梢に問題がなくても、痛みを感じるわけです。

 

③の脳が原因の痛みは、「心因性疼痛」と言われるもので想像しにくいですよね。

末梢にも神経にも問題がないにも拘らず、痛みを感じるのです。

 

例えば腕の痛みを感じていたとしても、末梢である腕ではなく、伝達する神経や脳に異常がある場合もあり得るわけです。

そのような場合は、腕をどれだけ検査しても異常は見つかりません。

 

このように痛いと感じている部位に原因がないとされているものを二つ紹介します。

舌痛症

 

舌の痛みや違和感を訴えるものの、舌には問題がないことが特徴です。

痛み止めの薬も効果がないことが一般的です。

 

心理的要因が大きく関わっていると言われています。

つまり脳が痛みを感じるタイプですね。

幻肢痛

 

手足を事故などで失ったり、先天的にない人が、存在しない手足のしびれや冷温感などを感じるものです。

 

脳が痛みを感じるタイプであることは間違いありませんが、まだ原因は解明されきっていません。

 

また、実は脳が感覚を感知する精度は決して高くありません。

例えば、目をつぶって足を延ばした状態で、誰かに足の指を一本触ってもらうとします。

そうすると、意外とどの指を触られているのかわからないのです。

 

他にも、例えば右下の歯が痛いと感じていたとしても、実際にどの歯が痛いのか判別できないようなこともよくあります。

なんなら右下が痛いと感じていても、実際には右上の歯が原因だったということもあります。

 

このように精度が低い原因は、神経の走行によるものです。

神経は各々の末梢から直接、脳に1対1対応でつながっているわけではありません。

右下の歯や歯茎などの神経は集合して1本になり、それが右上から領域の集合した神経と合流して、というようにどんどん合流しながら脳に到達します。

木の枝が幹に集まっていくイメージです。

 

ですから、脳に到達した神経はかなり広い領域からの刺激が伝わってくるため、細かい場所を判別するのが難しいというわけです。

いわゆる錯覚が起こるということです。

 

加齢は異常ではない

少し番外編として

「痛い=悪い」とは限らない

ということについて補足します。

 

80歳を超えたような人が、「腰が痛い」「膝が痛い」と整形外科に通っていますよね。

これ、ほとんどの場合で無意味です。

加齢による組織の変化ですから、異常があるわけではありません。

当然、病院に行っても治る類のものではありません。

 

歳をとって

「白髪になってしまったから、病院で治してもらおう」

「しわが増えてきたから、医者に診てもらおう」

と言っているのと同レベルです。

 

つまり、痛いとしても悪いわけではなく、生きている上で仕方のない変化だということです。

膝が痛いのであれば、まずやるべきことは負荷を減らすために体重を減らすことです。

痩せましょう。

そして、散歩だったりして足の筋肉を維持することなどが、できることになります。

病院に行って、レントゲンを撮って、湿布を貰っても何の意味もないのです。

 

・加齢は病気ではない

・加齢による変化は、医療で解決できない

当たり前のことですが、しっかりと理解する必要があります。

 

まとめ

・「痛くない=悪くない」とは限らない

・「痛い部位=悪い部位」とも限らない

・加齢は医療で治せない

・痛みはサインの中の一つでしかない

 

痛みというのは、身体が出してくれるサインの一つですが、割と不確かなものでもあります。

痛い場合も痛くない場合も、痛みによって何でも判断できるというわけではないのです。

 

ちなみに、医者は患者が痛みを訴えている場合に、どこが痛いのか正確に把握することなんてできません。

患者から見れば、医者はそんなこと当たり前のように分かっていると思うかもしれませんが、医者は意外と何もわからないのです。

 

例えば、歯が痛いと言われたとします。

視診やレントゲン診など、診査をすることでどの歯が痛いのかわかるわけではありません。

歯医者が判断できるのは、「どこの歯や歯茎などに異常があるか」までです。

この歯は、虫歯が大きいから痛みがあっても不思議じゃないな

というように判断しているのです。

つまりは予測ですね。

 

患者からしたら、医師は何でもわかるように思うかもしれませんが、実際はそんなことないんですね。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。