5.お金とは何か

お金とは何か

今回は、「お金とは何か」についてです。

 

結論としては

・お金の大半は、紙幣や硬貨ではなく銀行預金

・お金は、銀行の機能である信用創造によって生み出される

・お金は借金をすることによって無から作られ、返すことで消滅する

となります。

 

誰もが利用していて、生きていくのに欠かせないお金ですが、お金の本質を理解している人はあまりいないのではないでしょうか。

世の中の常識は、事実とは違う間違ったことがたくさんあります。

 

特に、今回説明する「信用創造」という銀行のお金を生み出す機能については、ほとんどの人が理解していません。

しかし「信用創造」を理解すれば、経済のことを理解することができ、巷で叫ばれている財政破綻論などが荒唐無稽であることがわかるはずです。

 

可能な限りかみ砕いて説明しますので、ぜひ「お金とは何か」や「信用創造」について、正しい理解をしていただきたいと思います。

 

現金と銀行預金

「お金(貨幣)」と言われたら、何が思い浮かびますか?

 

紙幣の10000円札・5000円札・2000円札・1000円札

硬貨の500円玉・100円玉・50円玉・10円玉・5円玉・1円玉

これらの「現金」が思い浮かぶのではないでしょうか。

 

しかし、お金(貨幣)はこれらの現金だけではありません。

現金以外にも、現金と同じように貨幣として使っているものがあります。

それが、「銀行預金」です。

 

銀行預金は

・給料の受け取り

・カード(クレジットカードやデビットカード)を介した支払い

・貯蓄

など、様々な用途に使われていて、紙幣や硬貨と同じようにお金として機能しています。

 

例えば、銀行口座に給料が振り込まれ、家賃や水道光熱費などが引き落とされます。

また、クレジットカードで買い物などをすると、その金額も銀行口座から引き落とされたりしますよね。

これらは、現金を使っていませんが、銀行預金でお金のやり取りを間違いなく行っているのです。

 

つまりお金(貨幣)には、現金(紙幣・硬貨)と銀行預金の二つがあるということです。

お金は現金と銀行預金の図

 

お金の中の現金と銀行預金の割合ですが、実は現金は少ししかありません。

大半が銀行預金です。

 

参考までに、2021年6月末における日本の個人金融資産(個人家計が持っている資産の合計)は、1992兆円です。

一人当たり1600万円以上という金額になります。

これは平均なので、超大金持ちの人たちによって引き上げられている数字ですから、体感的にしっくりこない人が多いと思います。

多くの人はこんなに持っていません。

これだけの個人金融資産があるのですが、2020年の年末時点で流通している紙幣の合計額は、118.3兆円しかありません。

他にも硬貨もあるとは言え、現金の割合がわずかなことがわかりますね。

(ちなみにこれでも、日本は他の先進国に比べて現金比率が非常に高いです。)

 

「お金を発行する=お金を刷る」ではない

お金全体から見れば、現金が非常にわずかしかないことが、お分かりいただけたかと思います。

世の中に存在するお金としては、現金より銀行預金の方が圧倒的に多いわけです。

 

つまり

銀行は銀行預金分の現金を保有しているわけではない

ということです。

このことを勘違いしている人が、非常に多いですよね。

勘違いしている人は、通帳に記されている銀行預金の金額は、存在する現金を記入してあるものと思っているようですが、それは違います。

銀行預金の裏付けとしての現金など、存在しません。

そもそも、銀行預金と現金とはそのような関係ではありません。

お金は現金と銀行預金の図

先程説明した通り、お金(貨幣)には現金と銀行預金があり、現金には紙幣と硬貨があります。

つまりお金は

・紙幣

・硬貨

・銀行預金

という種類が存在します。

要するに、銀行預金と紙幣や硬貨というのは、並列の関係だということです。

銀行預金と紙幣の関係性は、紙幣と硬貨の関係性と似たようなものです。

 

ですから、銀行は銀行預金分の現金を保有しているわけではなく、保有している現金は銀行預金の金額の合計と比べると、圧倒的に少ないのです。

何かの原因でパニックが起こって、預金者が一斉に預金を引き出そうとしたら、銀行が破産して潰れてしまうのはこのためです。

 

では、なぜそんなに世の中に存在する現金が少ないのかと言えば

現金を発行していないから

です。

テレビなどで、お札が高速で印刷されているのを見たことがありますよね。

「お金を発行する」というのは、あのようなイメージがあるかと思いますが、そうではありません。

事実は

お金を発行するというのは、お札を刷ったり硬貨を作ることではない

のです。

 

そもそも世の中のお金の量は、一定ではなく増減します。

例えば、景気が悪い時に景気を上向かせるためには、お金の流通量を増やしたりしなくてはなりません。

しかしそれは、お札を刷ったりして現金を増やすことではないのです。

実は、銀行預金を増やすことで、お金の量を増やしているのです。

 

そして銀行預金を増やすことができるのは、当然ながら銀行です。

銀行の「信用創造」という機能により、銀行預金を増やすことができます。

 

古くなった紙幣や硬貨を新しく取り換えるための発行は、行われています。

 

信用創造とは

信用創造とは

銀行が貸し付けをすることで、銀行預金というお金が創造できる仕組み

のことを言います。

もう少しわかりやすく言えば

銀行がお金を貸すことで、お金が増える仕組み

ということです。

 

わかりやすくするために、2つのシンプルなケースを例にして説明します。

 

ケース1 ~銀行が現金で貸し付ける場合~

1つ目の例として、銀行が現金でお金を貸し付けた場合を見てみましょう。

登場人物は

・銀行

・Aさん

・Bさん

だけです。

限界までシンプルにしてあります。

 

最初「Aさん」「Bさん」共に所持金は0で、「銀行」は現金10万円持っているとします。

シンプルケース1-1

 

「Aさん」はお金が必要だったので、銀行から現金2万円を借りました。

シンプルケース1-2

 

次に「Aさん」は「Bさん」から1万円で肉を買います。

シンプルケース1-3

 

今度は逆に、「Bさん」が「Aさん」から1万円でブドウを買いました。

シンプルケース1-4

 

最後に「Aさん」は銀行に2万円返しました。

シンプルケース1-5

「Aさん」が銀行に現金2万円返したことにより、最初の状態の「Aさん」「Bさん」共に所持金0、銀行は現金10万円に戻りましたね。(利子は無視しています。)

 

「何してんだよ!!」という声が聞こえてきそうですが、ここで注目してもらいたいのは、お金のやりとりは色々あったものの、合計は常に現金10万円だったということです。

 

ケース2 ~銀行が銀行預金で貸し付ける場合~

ケース1では銀行銀行は現金でお金を貸していますが、現実では銀行が現金で貸し付けることは、まずあり得ません。

事業の融資にしても、住宅ローンにしても、銀行口座に振り込まれます。

つまり、銀行は銀行預金でお金を貸し付けるということです。

 

ケース2では、「Aさん」が銀行からお金を借りるときに、現金ではなく預金口座に振り込まれる場合を考えます。

また「Aさん」と「Bさん」のお金のやりとりも、現金ではなく振り込みで行います。

 

登場人物はケース1と同じで

・銀行

・Aさん

・Bさん

です。

 

個人で考えると現金の感覚がある人も多いかもしれませんが、ビジネスなどでの企業同士の取引で現金が使われることはまずありません。

ですから、現実に近いのはケース1よりもケース2です。

 

 

ケース1同様に、最初「Aさん」「Bさん」共に所持金は0。

「銀行」は現金10万円持っているとします。

 

「Aさん」は銀行から現金ではなく、銀行口座に振り込みで2万円借りました。

すると「Aさん」の銀行口座の通帳には2万円が記入されて、銀行預金が2万円になります。

現金は動いていませんから、銀行の現金は10万円のままです。

シンプルケース2-1

 

次に「Aさん」は「Bさん」から1万円で肉を買います。

振り込みで支払います。

 

今度は逆に「Bさん」が「Aさん」から1万円でブドウを買いました。

これも振り込みで支払います。

シンプルケース2-4

 

最後に「Aさん」は銀行に2万円返します。

これも、もちろん銀行預金で行います。

シンプルケース2-5

 

「Aさん」が銀行に銀行預金から2万円返したことにより、最初の状態の「Aさん」「Bさん」共に所持金0、銀行は現金10万円に戻りましたね。(利子は無視しています。)

 

銀行がお金を貸すとお金が生まれる

ケース1とケース2を見てもらいましたが、違いが分かりましたでしょうか?

ケース1 現金で銀行から、お金を借りた

ケース2 預金で銀行から、お金を借りた

現金なのか預金なのかということ以外は、全て同じですね。

 

注目していただきたいのは「合計金額」です。

合計金額は

ケース1 一定で10万円

ケース2 Aさんが借りている間は12万円で、返すと10万円

となっていますね。

 

Aさんが銀行から銀行預金でお金を借りたら、お金が増えました。

そして返済したら、増えたお金が消えたのです。

現実的には、ケース2のように、銀行からお金を借りる時は現金ではなく預金で借ります。

 

ここからわかることは

借金はお金を作り出し、返済するとお金は消える

ということです。

これはお金や経済を理解する上でとても大切なポイントです。

 

日銀がお金をシャカシャカ刷って発行するから、世の中のお金が増えるのではなく

銀行がお金を誰かに貸すことで、お金が増える

ということなのです。

 

もう一つ重要なことがあります。

銀行がお金を貸す時、口座に振り込まれます。

この際、現金が実際に移動しているわけではありません。

ケース2を見ればわかるように、銀行が「Aさん」に2万円貸すということは、ただ単に「Aさん」の通帳に2万円が記入されるということに過ぎないのです。

これは、金額が100万円でも1000万円でも1億円でも同じです。

 

つまり

銀行は、お金を貸すことで「無」からいくらでもお金を作り出すことができる

ということなのです。

 

この仕組みを「信用創造」と言います。

この信用創造は、経済の仕組みを理解する上で非常に重要です。

 

信用創造の仕組みを知ると、驚く人も多いのではないでしょうか。

常識からは、あまりにかけ離れていますよね。

しかし、事実です。

世の中の常識が間違っているのです。

 

まとめ

・お金の大半は銀行預金で、現金はわずかしかない

・銀行の信用創造によって、お金は発行される

・信用創造とは、銀行がお金を貸すことで無からお金は生み出され、返すと増えたお金は消える

 

理論上は、信用創造によりお金は無から無限に作り出すことができます。

今後、国の財源などがどのように確保されているのかなどについて説明していきますが、信用創造について理解できていれば難しい話ではなくなります。

そして、政治家やテレビのコメンテーターや経済評論家たちの言っていることが、どれだけ荒唐無稽な話なのかが理解できるようになります。

 

まずは常識を疑って、正しい知識を得ましょう。

信用創造で無限にお金を生み出すことはできますが、無限にお金を増やしていいわけではありません。

どの位なら大丈夫かなども、今後説明していきます。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。