3.失われた20年は人災

失われた20年は人災

今回は、「失われた20年(30年)」と言われる長期のデフレについての話です。

 

結論としては

・日本は、長期デフレにより世界で唯一の経済衰退国になり貧困化している

・長期デフレは、政府が起こした人災

・「財政破綻論」が諸悪の根源

・日本が貧困化したのは、国民自身の責任でもある

です。

 

日本は「失われた20年(30年)」を経て、貧困化しています。

長期のデフレスパイラルから、抜け出せずにいるのです。

そしてそれは、政府が間違い続けていることが原因です。

つまり、日本のデフレは人災なのです。

 

この記事では

・日本の経済状況はどのようなものなのか

・人災である長期デフレは、具体的にどのようにして引き起こされたのか

・政府が間違い続けている理由は何なのか

などについて、説明していきます。

 

私たち国民一人一人が正しい知識を得ることで、デフレを脱却して日本は成長できるはずです。

何の知識の裏打ちもなく、何となく政治家のいうことに賛成したり反対するのは、完全に思考停止です。

そのような思考停止から生み出される同調圧力は、社会を壊す害悪でしかありません。

 

しっかり考えることが重要です。

考えるためには、正しい知識が必要不可欠です。

一人でも多くの人が、経済の正しい知識を得られることを願っています。

 

貧困化する日本

失われた20年とは

バブルが崩壊した1990年頃から、2010年頃までの20年間

を指します。

1990年頃から2020年頃までの30年間で、「失われた30年」という人もいます。

日本がデフレスパイラルにはまり込んで、抜け出せずにいる時期です。

「平成不況」とも呼ばれています。

(但し、現在もデフレから抜け出せているとは言えない状況です。)

 

このデフレは、日本において戦後初めてのデフレです。

そして、これだけ長期間デフレが続くのは、世界でも類を見ません。

世界的にも、日本のデフレは異常な事態なのです。

 

以下は、インフレ率を表す「コアコアCPI」の推移です。

1990~2018のコアコアCPIグラフ

コアコアCPIとは

 

物価上昇率(インフレ率)を表す「消費者物価指数(CPI)」というものがあります。

これは消費者が実際に、モノやサービスを購入する価格を表す指数です。

 

消費者物価指数は大きく3つに分けられます。

・総合的にみる「CPI」

・CPIから気候などの条件で大きく変動する生鮮食品を除いた「コアCPI」

・CPIから食料(酒類除く)と石油などのエネルギーを除いた「コアコアCPI」

 

世界的にはインフレ率を測る場合、コアCPIやコアコアCPIを用いて議論されるのが一般的です。

食品やエネルギーは、需給バランスだけではなく、気候や原産国の政情というその国の経済と関係ない要素によって変化してしまうからです。

 

コアコアCPIは物価の変動を表すので

プラスの時

物価が上昇しているということなので、インフレということ

 

マイナスの時

物価が下落しているということなので、デフレということ

となります。

インフレとデフレ
インフレとデフレインフレは「需要>供給」で、物価上昇が持続的に起こることで、デフレは「需要<供給」で、物価下落が持続的に起こることです。日本は長期のデフレにより、貧困化してしましました。それは、政治が間違った対策をとり続けてきたことが原因です。...

 

1992年以降からはデフレ方向に進み、1999年頃からは完全にデフレになっています。

ちなみに1997年と2014年に大きく上昇していますが、これは消費税増税によるものです。

消費税増税によって物価が上昇したことによるものですから、実質的にはインフレになったというわけではありません。

それを考慮すると、実質的にデフレに突っ込んだのはもっと早いと考えられます。

そして、それ以降ずっとデフレです。

 

これだけの長期間のデフレは世界でも類を見ないだけでなく、この期間にデフレだったのは世界で日本だけです。

基本的には

・インフレは経済成長

・デフレは経済衰退

となりますから、世界中で経済成長している中で、日本の経済だけが衰退してしまったということです。

 

1995年~2015年の世界各国の経済成長率(名目GDP成長率)を見てみましょう。

GDPとは

国内総生産のことで、その国の経済力を表します。

 

1995~2015の各国の経済成長率

世界の平均はプラス139%なのに対して、日本はマイナス20%です。

しかもマイナスなのは、世界中で日本が唯一です。

程度の差こそあれ、世界中の各国が経済成長して豊かになっていったのに対して、日本だけが経済衰退して貧しくなっていったというのがわかりますね。

もちろん原因は、長期間のデフレです。

 

このように、長期のデフレにより経済が衰退すれば、国民の給料もあがりません。

(厚生労働省ホームページより)

日本人給料推移

全く増えていないのがわかりますよね。

むしろ下がっています。

日本以外の国は、経済成長していて給料は着実に伸びているのです。

日本だけが、世界で一人負けの状態です。

 

コロナ騒ぎ前、日本に外国人観光客が増えていました。

これは日本の物価が世界的に見て、安くなっていることが大きな要因です。

日本以外の世界は成長して給料が当たっているにも拘らず、日本は衰退して物価が安くなっていますからね。

 

東南アジアの国などは、物価が安いから海外旅行しやすいイメージがありましたよね。

日本は世界から、それと同じように見られているということなのです。

観光客が増えたのは「お・も・て・な・し」のお陰ではなく、「安い国ニッポン」のお陰なのです。

 

「失われた20年」は人災

日本が、長期のデフレにより貧しくなっているのがお分かりいただけたかと思います。

 

そして

長期デフレは、日本政府が引き起こした人災

なのです。

 

決して、仕方のないことでもありませんし、企業のせいでもありません。

政府の責任なのです。

 

政府が適切なデフレ対策を行っていれば、デフレから脱却することは可能だったのです。

そしてそれは、今でも可能です。

合成の誤謬により、民間の力で自然にデフレから脱却することは不可能です。

政府が適切な対策をする以外、デフレから脱却することはできません。

 

適切な対策とは、もちろんデフレ対策です。

デフレからの脱却   → インフレ化させるデフレ対策

過度なインフレの抑制 → デフレ化させるインフレ対策

インフレ対策デフレ対策比較表

(※合成の誤謬やインフレ対策・デフレ対策について詳しくは、↓を参考にして下さい。)

デフレから脱却するにはデフレは民間の力で自然に脱却することはできません。政府が適切な対応であるデフレ対策を行うことで、デフレから脱却できます。しかし、長期のデフレに来る知る日本で行われていることは、デフレ対策ではなくインフレ対策なのです。...

 

しかし、実際に政府が行い続けている対策は、以下の通りです。

・公共事業などの削減による政府の財政支出の削減

・規制緩和、自由化

・民営化(郵政民営化など)

・グローバル化

・増税(1997年、2014年の消費税増税など)

・金利引き下げ

などです。

「構造改革」と言われるものですね。

 

金利引き下げ以外、見事なまでに「インフレ対策」です。

つまり、日本政府は

デフレ時に、デフレ化させるインフレ対策を行い続けてきた

ということなのです。

そりゃあ、デフレから脱却することなんてできませんよね。

当たり前のことです。

 

デフレ対策とインフレ対策の目的と対策

これこそが20年という長期間のデフレにより、日本が世界で唯一取り残されたように経済成長しなくなった本当の理由です。

にわかには信じられませんよね。

でも、これが事実なのです。

 

日本がインフレ対策である構造改革を始めた頃、欧米では「新自由主義」というものが流行っていました。

規制緩和・自由化・民営化・グローバル化・小さな政府などを推し進めるものです。

インフレ対策のものばかりです。

 

実はこの頃、アメリカやイギリスなどでは、インフレに悩んでいました。

過度なインフレにならないように、インフレを抑えなくてはいけなかったのです。

それに対して行ったのが、インフレ対策である新自由主義です。

理に適っていますよね。

 

そして日本は、あろうことかそれに追従したのです。

デフレなのに、です。

 

インフレを抑えたい国でインフレ対策をするのは理に適っていますが、デフレの時にインフレ対策をするのは愚の骨頂です。

というか、意味不明です。

日本は、その愚の骨頂を「アメリカやイギリスに続け!!」と真似しちゃったんですね。

控えめに言って、バカです。

思考停止の極みですね。

 

財政破綻論

このように、インフレ対策を行い続けている日本政府ですから、当然のように一向にデフレを脱却できずにいます。

このような愚行を続ける根底には、「財政破綻論」というものがあります。

 

財政破綻論を簡単に言うと

日本は借金まみれで破綻してしまう!!

というやつです。

 

政府や財務省は、日本が破綻しないようにするためには、日本の財政状態を建て直さなくてはならないと言い続けています。

そのために

・増税して、税収を増やす

・公共事業を削減して、支出を減らす

などが必要だと言っているんですね。

いわゆる「緊縮財政」「財政再建」というやつです。

 

これこそが、デフレ時にインフレ対策という愚の骨頂を政府が続けてきた根底であり、諸悪の根源です。

しかし日本は、政府や財務省が言う「財政破綻」をすることはあり得ません。

 

財政破綻に関しては次の記事から詳しく説明していきますが、日本が財政破綻することはありませんし、デフレ時に緊縮財政をする必要もありません。

端的に言ってしまえば、日本は自国通貨を持っていて通貨を発行することができるため、財政破綻することなどあり得ないのです。

 

ですから、デフレ時には政府がどんどん借金をしてお金を出して公共事業を増やしたり、減税するべきなのです。

それを、荒唐無稽な財政破綻論を振りかざし、緊縮財政を行い続けてきたと言うわけです。

控えめに言って、アホです。

 

長期デフレは国民の責任でもある

長期のデフレは、政府の責任だということを説明しました。

そして残念ながら

長期のデフレは、私たち国民の責任でもある

ということも、理解しなくてはなりません。

このような間違った対応をしてきた政府を、選挙で選び続けたのは私たち国民です。

 

それだけではありません。

デフレで自分たちの給料が上がらないときに

「無駄な公共事業を無くせ!!!」

「公務員の給料を減らせ!!」

「国民が我慢しているんだから、国も節約しろ!!」

と言い続けてきたのも、私たち国民自身です。

 

もちろん公共事業を無くしたり減らしたりすることも、公務員の給料を減らすことも、インフレ対策です。

デフレの時に行えば、デフレはさらに悪化し、国民自身の収入はさらに減っていきます。

そして、デフレから脱却することはできません。

 

自分で自分の首を絞めているのです。

自分たちの感情論が、自分たちの給料を減らし、自分たちの生活を貧しくしているということです。

そして、自分たちの暮らす社会を衰退させているのも、自分たち自身です。

 

私たち国民自身には、大きな責任があるのです。

 

まとめ

・長期デフレにより、物価も給料も上がらず、日本は貧困化し続けている

・世界中で経済が成長していないのは、日本だけ

・長期デフレは、デフレ時にインフレ対策を続けた政府による人災

・根底にあるのは、財政破綻論による緊縮財政・財政健全化

・長期デフレは、無知な国民自身の責任でもある

 

結果論で言えば、世論自体がデフレによる貧困化を求めたということと同義です。

世論は、論理的整合性などなく、感情論で構築されていることがほとんどです。

思考停止と同調圧力の成れの果てです。

世論は、正しいものでも何でもないのです。

 

無知は時に、未来を壊します。

無知は時に、罪でもあります。

知らなければ、また同じことを繰り返すだけです。

 

私たちは、しっかり知識を得て自分の頭で考えなくてはなりません。

国民全員がしっかり知識を得られて、論理的に考えることができれば、長期デフレのように間違った方向に進むことは無くなります。

 

まずは、自分が無知であることを真摯に受け止める必要があります。

誰でも最初は無知です。

無知を認めてこそ、知識を獲得することができます。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。