健康・医療

睡眠不足は寿命を縮める

睡眠不足は寿命を縮める

今回は、睡眠不足と寿命についてです。

 

結論としては

・睡眠不足は、あらゆる病気のリスクを高めてしまう

・睡眠時間が短いほど、寿命は短い

です。

 

医学界の疫学研究には、数百万人を数十年間にわたり追跡調査をした膨大なデータがあります。

その結果を分析すると、全ての研究に共通点が見つかるそうです。

それが

睡眠時間が少ないほど、寿命が短くなる

ということです。

 

心臓病・がん・認知症・糖尿病など様々な病気は、睡眠不足と関係あることが指摘されています。

また睡眠不足により、万病の基である肥満になりやすくなることもわかっています。

睡眠不足は肥満のもと
睡眠不足は肥満のもと睡眠時間と肥満率は逆相関の関係があります。睡眠不足だと、食欲が増進してしまい、ジャンクなどを食べる傾向が強くなってしまうのです。さらには、睡眠不足でダイエットをしても脂肪は減らず筋肉が減ってしまいます。...

 

睡眠不足により、様々な病気に罹患しやすくなったり悪化しやすくなるため、寿命が短くなってしまうのも当然と言えば当然なのです。

 

今回は

・糖尿病

・感染症

・がん

・生殖機能

これらと睡眠不足の関係について、説明していきます。

 

糖尿病と睡眠不足

まずは、糖尿病とはどのような病気なのかについて、説明します。

(今回ここで扱う「糖尿病」は、「Ⅱ型糖尿病」のことです。)

 

多くの人は糖尿病を

血糖値が高くなる病気

と考えていると思いますが、それだと間違いではありませんが正確でもありません。

 

実際には糖尿病とは

インスリンが正常に働かなくなることで、糖代謝異常が起こる。

その結果として、血糖値が高い状態が慢性的に継続してしまう状態。

のことを言います。

糖尿病の本体は糖代謝異常で、糖代謝異常になる原因はインスリンの機能異常ということです。

インスリンとは

糖代謝を調節し、血糖値を下げるホルモン。

 

糖代謝とは

ブドウ糖をエネルギーとして活用したり、肝臓に貯蓄したり、脂肪にして蓄える仕組み。

 

血糖値とは

血液中のブドウ糖濃度のこと。

 

糖代謝の流れは、以下のようになります。

糖質を食べて血糖値上昇

①食事から糖質を摂取する

②胃や腸で糖質がブドウ糖に分解される

③小腸でブドウ糖は血管へ吸収され、血液に乗って全身に運ばれる

④血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が上昇する

 

このままだと、血糖値は上がったままになってしまいます。

そこでインスリンの出番です。

糖代謝でのインスリンの働き

⑤膵臓のβ細胞からインスリンが分泌される

血糖値が上昇したのを察知して、膵臓にあるランゲルハンス島という細胞の塊の中にあるβ細胞からインスリンが分泌されます。

⑥インスリンの働きによって血液中のブドウ糖を

・筋肉などの細胞にエネルギーとして取り込ませる

・グリコーゲンに変えて肝臓に貯蔵させる

・余った糖は脂肪として蓄えられる

このように各組織にブドウ糖を取り込ませることで、その結果として血糖値(血液中ブドウ糖濃度)は下がります。

この一連の流れを糖代謝と言い、インスリンは糖代謝を調節することによって、各組織にブドウ糖を配り血糖値をコントロールしているということです。

グリコーゲンとは

体内でエネルギーを一時的に貯蔵しておくための物質で、主に筋や肝臓に含まれる。

取り込んだ糖のうち、グリコーゲンにしきれなかったものは、脂肪になる。

 

つまりインスリンは、糖代謝を調節して行った結果として、血糖値を下げるということです。

そのインスリンが正常に働かなくなることで、血糖値が高い状態が続き、糖尿病になってしまうわけです。

糖尿病ってどんな病気?
糖尿病ってどんな病気?糖尿病は、インスリンが正常に働かなくことによる糖代謝異常です。糖代謝以上の結果として、血糖値が高くなってしまうのです。ですから、血糖値を下げることを目的とした治療によって、糖尿病が改善しないのは明白なのです。...

 

そして、もちろん糖尿病の根本的な原因は糖質の過剰摂取ですが、睡眠不足も糖尿病のリスクを高めてしまうことがわかっています。

 

統計的データから、慢性的に睡眠時間が6時間以下の人は、平均に比べてⅡ型糖尿病のリスクがはるかに高いことが判明しているのです。

しかし、この統計では

・糖尿病だから、睡眠時間が短くなってしまうのか

・睡眠時間が短いから、糖尿病のリスクが上がってしまうのか

このどちらなのかは、わかりません。

相関関係はあるのは確実ではあるけれど、因果関係はわからないということです。

 

そのため、様々な実験が行われました。

その中の実験を、一つ紹介します。

実験内容は以下の通りです。

血糖値が正常で健康な大人に対して、実験を行う。

4時間睡眠を6日間続けてもらう。

結果は次のようになりました。

インスリンの働きが、40%低下した。

 

多数の実験で、同様の結果になっているようです。

つまり、睡眠不足になるとインスリンの働きは低下し、血糖値がコントロールできなくなってしまうのです。

このように、睡眠不足も糖尿病の原因の一つであることは間違いありません。

それにも拘らず、内科や糖尿病内科に受診しても、睡眠指導が行われることはほとんどありません。

 

感染症と睡眠不足

感染症と睡眠不足の関係については、これまで鬼畜極まりない実験が多々されてきているようです。

 

実験内容は

鼻の穴の中に大量の風邪ウイルスを突っ込んで、睡眠時間別に経過を見ていく

というものです。

どの実験でも結果は同じで

感染リスクと睡眠時間は反比例する

というものです。

 

さらに、ワクチンの効果と睡眠時間についても関係があることがわかっています。

2002年にワクチンと睡眠時間の関係を調べた研究があります。

健康な若い大人を対象として、インフルエンザワクチン接種を行う。

ただし、2つのグループに分ける。

① 4時間睡眠を6日間続けた後、ワクチンを接種する。

② 8時間睡眠を6日間続けた後、ワクチンを接種する。

数日後、抗体反応を調べる。

結果は以下の通りです。

①の4時間睡眠グループの免疫反応は、②の8時間グループの免疫反応の50%しかなかった。

つまり、①は②の半分しか抗体が産生されていなかった。

さらに、①のグループがその後2~3週間十分に睡眠をとっても、②のグループの免疫反応のレベルに到達することはなかったそうです。

このことから

失った睡眠は取り戻せない

ということがわかります。

 

また、風邪の実験とワクチンの実験から共通して言えることは

睡眠時間が減ると免疫反応は弱まり、免疫力は低下する

ということです。

感覚的にも誰もがわかっていることではないでしょうか。

 

感染症を防ぐためにやるべきことは、家に引きこもったりマスクをすることではなく、免疫力を高く維持することです。

 

がんと睡眠不足

免疫力は、睡眠不足が少し続くだけで、大幅に落ちてしまいます。

そして免疫力が下がると、感染症だけでなく、がんのリスクも高まってしまいます。

 

まずは、がん細胞がどのようにできるのかについて説明します。

人間の体は、約60兆個の細胞から成っています。

毎日その中の約1%である約6000億個が死んで、新しい細胞に入れ替わります。

新しい細胞は、DNAをコピーして細胞分裂することで生まれます。

 

しかし、このコピーの過程で、コピーミスが起こることがあります。

いわゆる遺伝子の突然変異です。

 

遺伝子の突然変異で、まれに「死なない細胞」ができてしまいます。

この「死なない細胞」が、がん細胞なのです。

実はこのがん細胞は、健康な人でも1日5000個できると言われています。

 

そのままだとがん細胞がどんどん増えてしまいますが、人間の免疫システムは非常に優秀なので、がん細胞を排除する仕組みがあります。

その仕組みを主に担うのが、リンパ球の一種であるNK(ナチュラルキラー)細胞という免疫細胞です。

NK細胞は、体内を単独でパトロールし、ウイルスに感染した細胞や癌細胞を見つけ次第攻撃していきます。

免疫力が高い間は、NK細胞はがん細胞に対して、毎日5000勝0敗を繰り返しているということです。

 

しかし、このNK細胞が睡眠不足によって減ってしまうことがわかっています。

 

以下は、NK細胞と睡眠不足の関係を調べた実験です。

① 1日のみ4時間睡眠にしたグループ

② 8時間睡眠のグループ

起きた後のNK細胞の数を測定する。

とてもシンプルな実験ですよね。

4時間睡眠と言っても、1日のみです。

結果は以下の通りです。

①の4時間睡眠グループは、②の8時間睡眠グループに比べて、NK細胞が70%減少した。

70%も減ってしまったのです。

 

NK細胞の個数だけでがんになるかどうかが決まるわけではありませんが、たったの1日だけ睡眠不足になっただけで、70%減るのは驚愕ですよね。

 

また、様々な研究によって

慢性的に6時間以下の睡眠の人は、7時間以上の人に比べて

ガンになる確率が40%高い

ということがわかっています。

 

睡眠が免疫に影響を与えるので、免疫に影響されるがんが睡眠の影響を受けるのは、当然と言えば当然なのです。

 

WHOも

夜勤のある仕事は発がん性がある

と正式に認めています。

夜勤のある人は、概日リズムと睡眠リズムがくるってしまいますから、質の良い十分な睡眠がとれず免疫力が低下してしまいますからね。

 

生殖機能と睡眠不足

睡眠不足は、健康被害があるだけでなく、生殖機能も低下してしまいます。

 

20代半ばの健康な男性に、1週間5時間睡眠にしてもらったところ、テストステロンが大幅に減少したそうです。

その減少幅は、10~15歳くらい歳をとったのと同様だったそうです。

テストステロンとは

「男性ホルモン」とも言われ、生殖機能だけでなく、骨密度・集中力・やる気などにも関係するホルモン。

 

また、睡眠不足だったり睡眠の質が悪いと、精子の量は減少し、睾丸のサイズも小さくなってしまうこともわかっています。

 

男性だけでなく女性も、睡眠不足によって生殖機能が低下してしまいます。

慢性的に睡眠時間が6時間以下だと、排卵に欠かせない卵胞刺激ホルモンが20%減少し、受精にも影響するそうです。

また

・夜勤などある仕事だと、生理不順の確率が33%高くなる。

・夜勤などある仕事だと、妊娠で苦労する確率が80%高くなる。

・8時間以下睡眠の人は、8時間以上に比べて、3か月以内に流産しやすくなる。

などもわかっています。

 

睡眠不足は、子作りなどに対しても、男女とも不利に働いてしまうということです。

 

まとめ

・睡眠不足は、あらゆる病気のリスクを上げてしまう。

・睡眠時間が短いほど、寿命は短い。

シンプルに、睡眠不足は健康に悪いということですね。

睡眠時間を削って、頑張って色々と活動したとしても、その分寿命は短くなってしまう可能性が高いわけです。

 

良く寝ましょう。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。