今回は、「知識の定着」についてです。
結論としては
・授業や講義を受けるだけでは、知識は定着しにくい
・知識の定着には、インプットとアウトプット両方必要
となります。
「ラーニングピラミッド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

これです。
このラーニングピラミッドは、1960年代初頭にアメリカの国立訓練研究所で開発されたものを基にしています。
学習の方法と知識などの定着の程度を比較したものです。
つまり
どのような学び方をすれば、最も知識が定着しやすいか
ということを表したものです。
ラーニングピラミッドは、様々なところで使われています。
意識高い系の人々が大好きなピラミッドと言えば、ラーニングピラミッドです。
ラーニングピラミッドの結論を大まかに言えば
知識の定着には、能動的学習が効果的で、受動的学習は効果が低い
ということになります。
このような結論から
「講義や授業なんて意味ない」
「アウトプットこそが大切」
というようなことを言う人が結構います。
しかし、学びにおいて講義や読書が意味がないということは、当然ありません。
確かに、ラーニングピラミッドは能動的学習の重要性を示す良いツールですし、感覚的にも理解しやすいものです。
そして、学びのためのヒントや指標になりやすいのも間違いありません。
ですが、ラーニングピラミッドを妄信してしまうのは、非常に危険です。
実は、上記のようなよく用いられているラーニングピラミッドには、大きな落とし穴が2つあります。
それは
・必要なのは、定着だけではない
・ラーニングピラミッドの割合には、根拠が存在しない
ということです。
それでは、ラーニングピラミッドの2つの落とし穴についてと、学ぶために必要なことについて説明していきます。
学びに必要なのは知識の定着だけではない

ラーニングピラミッドの落とし穴の一つ目は
ラーニングピラミッドは、知識の定着のみを表しているだけ
ということです。
ここで言う「定着」とは
しっかり理解して覚える
というような意味合いになります。
確かに、講義を聞いたり本を読んだだけでは、定着せずにすぐに忘れてしまいます。
いきなり覚えられる人は、一握りの天才だけです。
それに対して、能動的学習である「他者に教える」ということが、定着しやすいのは感覚的にもわかるのではないでしょうか。
他者に教えるためには自分がしっかり理解している必要があるだけでなく、説明をすることによって自分の頭の中も整理することが出来ます。
定着という視点で見れば、講義や読書は不向きで、他者に教えるなどの能動的な方法が向いているのは当たり前のことと言えます。
そもそも、講義・授業・読書などの受動的な学習は、定着させるためというよりも新しい知識を知るための手段です。
そもそも論として、定着させるための手段ではないのです。
ですから、講義や授業や読書がラーニングピラミッドにおいて、定着率が低いのは当たり前です。
別に、講義や授業や読書自体が劣った学習方法というわけではありません。
つまり、知識を定着させるまでには、大きく分けると
1.新しい知識を知る
2.その知識を定着させる
という段階が存在するわけです。
1の新しい知識を知ることは、講義や読書などです。
2の定着させることに効率的なのが、他者に教えるなどの能動的な学習なのです。
どちらが大切かではなく、どちらも必要で大切なわけです。
ラーニングピラミッドの割合に根拠は存在しない

二つ目のラーニングピラミッドの落とし穴は
定着率を表している割合の数字に根拠は存在しない
ということです。
講義 5%
読書 10%
他者に教える 90%
といった数字です。
実はアメリカ国立訓練研究所の研究結果には、定着率の数字は出てこないのです。
つまり、この数字は後付けされたものだということです。
そして、現在のところエビデンスが確認されていません。
しかも驚くべきことに、定着率だけでなく「他者に教える」という項目も、元々はなかったというのです。
インパクトを強めるために、誰かが付け加えたものが広がったのかもしれませんね。
とは言え、ラーニングピラミッドが完全にデタラメというわけでもありません。
知識の定着に能動的な学習が有効なことは間違いないことですし、自ら体験したり他者に教えることで理解が深まるのも間違いありません。
ただし、定着率の数字に関しては、参考程度に考えておいた方が良いかもしれませんね。
学校教育にはインプットしかない

ラーニングピラミッドは、定着のためには能動的な学習が効果的だということを教えてくれます。
つまり、定着させるためには、アウトプットが効果的だということです。
しかし先ほども説明した通り、定着させる知識を得るには、講義や読書などが必要です。
知識を得るためには、インプットもしなくてはならないということです。
要するに
講義や読書でインプットした知識を、他者に教えるなどのアウトプットを行うことで定着させることが出来る
ということになります。
どちらも必要であり、大切なのです。
しかし日本の学校教育などは、講義・授業を聞かせるようなインプットばかりで、アウトプットがありません。
その結果、当然知識は定着しないわけです。
授業だけで頭は良くならない
ということです。
このような日本の教育の現状があるからこそ、ラーニングピラミッドが注目されるという側面もあるでしょう。
ラーニングピラミッドは、妄信しすぎるのは危険ですが、そのような意味では学びに対して非常に重要なことを教えてくれていると言えます。
インプットとアウトプットは、両輪だということです。
まとめ

・ラーニングピラミッドは、知識の定着率を表す。
・ただし、数字に関してはエビデンスがないので、要注意。
・学びにはインプットとアウトプット両方が必要。
・日本の学校教育は、インプットばかり。
インプットして得た知識は、人に教えたり自分で体験することなどによって、定着します。
そして、定着した知識を使って行動をすることで、はじめて知識に意味を持たせることが出来ます。
知識を得て、定着させて、行動する。
ということが、大切です。
日本の学校教育のように、インプットのみでは学びとは言えないということですね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。