今回は、政府が借金をして資金調達する手段である国債の発行についてです。
ここまで学んできた要点としては
・日本政府は財政破綻(デフォルト)しない
・銀行は信用創造によって、無からいくらでもお金を作れる
・銀行がお金を貸し出す原資は、個人などからの民間預金ではない
でしたね。



これらの知識を踏まえて、今回の結論としては
政府の国債発行による資金調達は、銀行による政府への信用創造
となります。
さらに言えば、実質的には「日本銀行による政府への信用創造」となります。
つまり政府が発行する国債は、実質的には日銀が信用創造により無からお金を作って買っているということです。
どうやっても、デフォルトなどするはずもないですよね。
それでは政府の国債発行が、どのような流れで行われているのかを詳しく説明していきます。
信用創造による国債発行

政府の資金調達のための国債発行は、実質的には日銀による信用創造です。
しかし日銀が政府の国債を直接引き受ける行為は、「財政ファイナンス」と呼ばれ、財政法という法律の第5条で禁止されています。
実質的には日銀による信用創造が行われていますから、この法律の意味があるかは不明です。
しかし法的に禁止されているので、政府の国債発行は民間銀行を介して行われます。
そのために、少し面倒な手順を踏むことになります。
政府が民間銀行を介して国債発行をする流れを理解する上で、まず前提として以下の事実を知っておく必要があります。
・政府は民間銀行に口座を持っておらず、日銀にのみ当座預金口座がある
・民間の銀行も、日銀に当座預金口座を持っている
このため政府が国債を発行する際は、日銀の当座預金口座を利用することになります。
政府の国債発行の流れは
・政府
・日銀
・銀行(民間)
・企業
これらの間の、銀行預金のやり取りによって説明できます。

このような登場人物になります。
では、いきましょう。
政府が1億円分の国債を発行して、その1億円で企業に公共事業を発注するとします。

~①~
政府の発行した1億円分の国債を銀行(民間)が購入します。
すると代金の1億円は、銀行の日銀当座預金口座から、政府の日銀当座預金口座に移動します。
銀行の日銀当座預金の残高が1億円減って、政府の日銀当座預金の残高が1億円増えたということになります。
これはもちろん口座の中の数字の変化のみで、実際に現金が移動したわけではありません。

~②~
政府は企業に公共事業の発注をして、代金の1億円を政府小切手で支払います。

~③~
企業は1億円分の政府小切手を、取引している銀行に持っていきます。
そして銀行に、政府から1億円の取り立てを依頼します。

~④~
取り立てを依頼された銀行は、企業の口座に1億円を記帳します。(振り込みます。)
また政府小切手を使って、政府から1億円取り立てることを日銀に依頼します。
この段階で、お金(預金)が増えているのがわかります。
①~③では預金の合計は±0だったのに対して、④では+1億円になっています。
つまり、この段階でお金が増えたことを意味します。

~⑤~
政府小切手により、政府の日銀当座預金から銀行の日銀当座預金に1億円が移動します。
もちろんこれも、現金が動いているわけではなく、口座預金残高の数字の変化のみです。
銀行の日銀当座預金は1億円が戻ってきて元の状態に戻ったので、また①に戻って国債を購入することができるようになります。
この一連の流れから、重要なことが2つ分かります。
・政府の国債発行は、民間預金の制約を受けない
・政府の借金が、民間の資産(預金)を増やす
とても重要なことですので、一つずつ説明します。
政府の国債発行は民間預金の制約を受けない

財政破綻論を主張する人たちは
今は民間に潤沢な預金があって、国債の買い手になっている。
しかし、それが尽きてしまえば国債の買い手がいなくなる。
そして金利が上がってしまう。
ということを言ったりします。
しかし、国債発行の流れを理解すると、これはあり得ないことがわかりますよね。
政府が国債を発行する流れの中で、どこにも民間の預金は出てきませんよね。
つまり
国債発行は、民間預金の制約を一切受けない。
ということです。
というか、全くの無関係です。
銀行が貸し付ける原資は、預金ではありません。

・国債が発行できるのは、民間に潤沢な預金があるからではない。
・国債を発行することで、民間の預金が尽きることはない。(無関係)
・国債の買い手がいなくなることはない。
・金利が上がってしまうことはない。
ということです。
金利が上がるとは
国債を買いたい人がたくさんいれば、金利(利息)を低くしても買ってくれる人がいます。
しかし、国債を買いたい人が減ってしまうと売れなくなってしまいます。
そうなると国債を売るためには、メリットを大きくする必要がありますね。
その場合、金利(利息)を上げて買ってくれる人を増やすのです。
つまり
金利が高い → 買いたい人が少ない
金利が低い → 買いたい人が多い
ということです。
また、信用という面から見れば
金利が高い → 信用が低い
金利が低い → 信用が高い
ということになります。
ちなみに、日本国債の金利は世界で見ても最も低いレベルです。
財政破綻論者の主張が、荒唐無稽であることが分かるのではないでしょうか。
政府の借金が民間の資産を増やす

先程の「信用創造による国債発行」の④と⑤を見てください。
合計の預金が+1億円になっています。
そしてその1億円は、企業の預金という民間の資産(預金)になっています。
元々のスタートは、①で政府が国債を1億円分発行したことですね。
つまり
政府が借金した分だけ、民間の資産(預金)が増えた
ということなのです。
このことは、非常に重要なことです。
当たり前のことですが、誰かの支出が誰かの収入になります。
ということは、誰かがどんどんお金を支出しまくってくれれば、他の人たちの収入は増えていくことになります。
そして信用創造について学んだ通り、銀行は貸し出すことで、お金を無からいくらでも作ることができます。
つまり、誰かが銀行から借金をして消費(支出)をしまくれば、他の人たちの収入・資産はどんどん増えていきます。
企業や個人は、デフレ下ではそのようなことはできませんが、政府であれば可能です。
政府こそが唯一デフレ下において、国債を発行するという手段で借金をし、支出を増やしていくことのできる存在なのです。
それによって、民間の収入を増やしてデフレ脱却に向かえるということです。
政府が国債を発行して借金をすればするほど、国民の所得(資産)が増えるのです。
これが全てと言っても、過言ではないくらいです。
日銀の買いオペ

ここまでで、「政府の国債発行による資金調達は、銀行による政府への信用創造」ということを説明しました。
また、冒頭で「政府の国債発行による資金調達は、実質的には日本銀行による政府への信用創造」ということを書きました。
どういうことかと言うと、端的に言えば
日銀が銀行(民間)から国債を買い上げる
ということになります。
これを買いオペ(買いオペレーション)と言います。
結局のところ国債は
政府 → 銀行(民間) → 日銀
と移動していきますから、実質的には
政府 → 日銀
と何も変わらないわけです。
このことだけわかっておけば問題ありませんが、もう少し詳しく流れを説明します。
⑤の図です。
信用創造の流れが、一通り終わったところですね。

この状態を整理すると
・政府の発行した1億円分の国債は、銀行が持っている。
・政府は1億円分の国債を発行したため、1億円の借金がある。
そして日銀は政府の子会社なので、政府の一部として考えられます。
これらを踏まえて、それぞれの資産と負債は以下のようになります。

政府は、負債が1億円(国債分)あります。
銀行は、資産が1億円(国債分)・負債が1億円(企業の預金)あります。
企業は、資産が1億円(銀行預金)あります。
政府(政府+日銀)と民間(銀行+企業)で見ると
・政府は、負債が1億円
・民間は、資産が1億円
ということがわかります。
まさに政府の赤字が、民間の資産になっていますね。
銀行の負債の1億円は、少しわかりにくいかもしれませんね。
企業の銀行預金残高が1億円ということは、企業が1億円を現金として下ろそうとした場合、銀行は企業に1億円渡す義務があります。
つまりこれは、銀行が企業に1億円の負債があるということです。
もちろん企業は、資産が1億円あります。
このように銀行預金は、銀行にとっては負債になります。
また、銀行は政府の発行した1億円分の国債を保有しています。
これは1億円というお金に変えられますから、銀行は1億円の資産を持っていて、政府は1億円の負債があるということです。

買いオペです。
日銀が、銀行から1億円の国債を買い取ります。
1億円分の国債が銀行(民間)から日銀に移動する代わりに、日銀から銀行に1億円が支払われます。

政府(政府+日銀)と民間(銀行+企業)で見ると
・政府は、負債が1億円
・民間は、資産が1億円
というのは、変わりませんね。
政府の負債が、民間の資産になっています。
そしてこれは
1.政府が発行した1億円の国債を日銀が購入する
2.その1億円を政府が、小切手で企業に支払い事業を発注する
3.企業が小切手を、銀行(民間)に持ち込む
4.銀行は企業の預金を1億円増やし、政府小切手を日銀に持ち込み政府から取り立ててもらう
という流れの結果と同様です。
信用創造による国債発行は民間の銀行を介して行われていますが、結果を見れば、日銀が政府から国債を直接購入したことと同じことが起こっています。
つまり政府の国債発行は
日銀による政府への信用創造
と言えるわけですね。
ちなみに、買いオペの反対の「売りオペ」というものもあります。
買いオペ:日銀が市場から、債券などを買うこと
売りオペ:日銀が市場に、債券などを売ること
買いオペ・売りオペは、「公開市場操作」の一つです。
公開市場操作とは
中央銀行(日本だと日銀)が、市場で債券などを売買することによって、世の中にあるお金の量をコントロールすること
日銀が民間の銀行から国債を買い取るということ(買いオペをするということ)は、民間の銀行の国債をお金に換えるということです。
つまり、世の中のお金の量を増やすデフレ対策です。
デフレのときにはどんどん買いオペをして、インフレが過熱しそうな場合には買いオペをやめたり売りオペをすればいいわけです。
まとめ

・政府の国債発行による資金調達は、実質日銀による信用創造
・政府の国債発行は、民間の預金の制約など受けない
・政府の負債が、民間の資産になる
国債保有者の保有割合は以下の通りです。

43.7%が日銀なのがわかりますね。
長期国債だけであれば、50%近くが日銀になります。
なんにせよ、日銀にかなりの割合頼っているのがわかります。
そして仮に、日本政府が民間銀行や保険会社などに返せなくなったとしても(あり得ませんが)、日銀が国債を買い取っておしまいです。
日銀は、いつでも国債を買い上げることができるのです。
そして日銀と政府は一体ですから、日銀が買い上げた瞬間に、政府の借金は実質的に消えているのと同義なのです。
どうやってもデフォルトしませんし、国債の買い手がいなくなることもありません。
政治家やメディアが叫んでいる財政破綻が嘘だということが、よくわかりますよね。
正しい知識というのは、論理的に破綻しないものです。
政府やメディアの言っていることを論理的に考えていくと、事実と異なったり辻褄が合わなくなります。
嘘だったり、間違っていたりするからです。
正しい情報の取捨選択というのは、論理的整合性があるかどうかや、事実に反しないかどうかなどを自分の頭で考えなくてはなりません。
思考停止では、正しい情報や知識に辿り着くことはできないのです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。