今回は、インフレとデフレについて説明します。
インフレとデフレは、経済を理解する上での基礎になる部分です。
経済を理解するなんて意味ないと思うかもしれませんが、経済は私たちの生活に直結しているものですから、理解することは非常に重要です。
日本経済の傾向として
・景気が良くならない
・給料が上がらない
・生活が良くならない
等があります。
これは、日本経済の状態が悪いことに起因しています。
平成の「失われた20年(30年)」という長期の不況の時代を経て、日本の経済は全く成長しなくなってしまいました。
世界中の国が経済成長をしている中、日本だけがマイナス成長だったのです。(1995~2015年のGDP成長率においてマイナス20%)
日本は世界中の経済成長に取り残されて、どんどん貧しくなっているということです。
このように日本が経済成長しなくなってしまったのは、よく言われるように日本の企業が無能だとか、そんな理由ではありません。
日本が経済成長しなくなった本当の理由は
政治が間違った方向に舵を切り続けたから
です。
政治家や経済学者などが、経済のことを理解せずに間違った政策を続けた結果、日本は成長しない国になってしまったのです。
政治家や経済学者は、それを企業などのせいにしているわけです。
最悪です。
政治家や経済学者が、経済のことを理解していないなんて信じられないかもしれませんが、事実です。
そして、間違った政策を後押しし続けてきたのは、私たち国民に他なりません。
つまり、日本が貧しくなっているのは、私たち国民が経済について無知であることも原因だということです。
しかし逆に言えば、多くの国民が経済について正しい知識を身につけることで、状況を好転させることもできるはずです。
ですから、ぜひとも少しでも多くの人に経済を正しく理解してもらいたいと思います。
そして、間違った政策を推し進める政治家は排除して、正しい方向に導いてくれる政治家を選んでもらいたいと思います。
では、経済を理解する上で土台になるインフレとデフレについて、説明していきます。
需要と供給

インフレとデフレについて説明する前に、まず需要と供給について説明します。
インフレやデフレという経済の基礎のさらに基礎になる部分が、需要と供給です。
経済というものは、需要と供給のバランスで成り立っています。
これを需給バランスと言います。
インフレやデフレは、需給バランスの状態がどうなっているかを表す言葉です。
ですから、需要と供給を理解していれば、インフレやデフレを理解するのは容易です。
需要・供給とは
需要
消費者が、モノやサービスを購入すること
簡単に言えば、買うこと・買いたいこと
供給
モノやサービスを、販売するために市場に出すこと
簡単に言えば、売ること・売りたいこと
となります。

つまり、需要と供給は反対の関係にあるということです。
需要を消費、供給を提供とも言えますね。
この需要と供給の大小関係によって、経済状況が変わってきます。
では「需要>供給」の場合と、「需要<供給」の場合をそれぞれ説明します。
需要 > 供給
「買いたい>売りたい」という状況です。
「需要過剰」「供給不足」とも言えます。

このような状況ですね。
おにぎりを買いたい人が6人いるのですが、おにぎりは4個しかありません。
「需要>供給」になっています。
このような状況では、買いたい人や売りたい人は次のように考えます。
買いたい人
おにぎりが欲しいので、価格が多少高くなっても買いたい
売りたい人
欲しい人が多いので、価格を上げても売れるだろう
すると、必然的におにぎりの価格は上がります。
つまり、「需要>供給」の場合には、物価は上昇します。

プレミアがつくのは、この最たる例ですね。
そして、このような物価上昇が持続的に起こることを「インフレ」と言います。
需要 < 供給
「買いたい<売りたい」という状況です。
「需要不足」「供給過剰」とも言えます。

このような状況ですね。
先程とは逆です。
売りたいおにぎりは6個あるのですが、買いたい人は4人しかいません。
「需要<供給」になっています。
すると
買いたい人
おにぎりは余っているので値下がりするだろうから、値下がりした後で買おう
売りたい人
買いたい人が少ないから、価格を下げて少しでも多く買ってもらおう
と考えます。
結果として、おにぎりの価格は値下がりします。
つまり、「需要<供給」の場合には、物価は下落します。

野菜などが豊作すぎると、価格が下がるのがこの例ですね。
そして、このような物価下落が持続的に起こることを「デフレ」と言います。
インフレ

インフレとは
「需要>供給」を背景に、持続的に物価が上昇すること
でした。
インフレになると物価が上昇してしまうため、嬉しくないことのように思うかもしれませんが、そんなことはありません。
インフレの時に、起こることを説明していきます。
インフレ時の流れ
インフレになると、以下のような流れになります。

1.需要>供給になる
2.モノやサービスはよく売れるので、物価は上がる
3.企業の業績は良くなり、利益は大きくなる
4.企業の業績が良くなったので、従業員の給料が増える
5.給料が増えた人々は、もっと消費をするようになる(需要が増える)
6.1に戻る
このようにインフレ時は、物価だけでなく企業の業績や人々の給料も増えていきます。
経済が成長している状態です。
いわゆる好景気(好況)というわけです。
つまり
経済成長をしていて景気が良い状態は、インフレであることが前提
ということです。
インフレ時の心理
でも、給料が増えても物価も上がるのだから、結局買える量は変わらず消費は増えないのでは?
と思う人もいるかもしれません。
そのように考えるのも当然ですが、実際には消費は増えます。
インフレの時に消費が増えるのは、物価と給料の関係だけではないのです。
実は心理的要因が、大きく関わってきます。
例えば、インフレの時に家を買おうと考えたとすると
・時間が経てば、家の価格は上がってしまう
・時間と共に、給料は増えると考えられる
という2つの条件が付随します。
この条件であれば
早いうちに買っておいた方が良い
という選択になりますよね。
つまり、将来の見通しが明るいと、人々は楽観的になって消費を増やす傾向にあるのです。
景気の動向は、消費者の心理的要因に大きく左右されるということです。
お金とモノの価値の変化
インフレをより深く理解するために、「お金の価値」と「モノの価値」という面からも、見てみましょう。
お金の価値は一定だと思っている人は多いのですが、そんなことはありません。
お金の価値は変化します。

おにぎり1個が100円だったのが、インフレで200円になったとします。
インフレ前は
おにぎり1個の価値=100円の価値
となっていました。
しかし、インフレ後はおにぎりの価格が200円になったため
おにぎり1個の価値>100円の価値
というように変化します。
インフレによって
おにぎり1個の価値は上がり、100円の価値は下がった
ということです。
つまりインフレにおいては
・お金の価値は下がる
・モノの価値は上がる
ということになります。
このようにお金の価値とモノの価値は、逆相関の関係にあります。
実はこのことからも、インフレの時に消費が増えることを説明できます。
人々は、価値の低いものよりも高いものを欲しがります。
ですから
価値の低いお金を使って
価値の高いモノを買う
とも言えますね。
つまり消費が促進されるということです。

インフレのリスク
インフレは経済成長の前提であることからも、基本的には「適度な」インフレは好ましい状態と言えます。
一般的には年2~3%程度のインフレ率(物価上昇率)が、程度だとされています。
年に2~3%くらいずつ物価が上がっていくということですね。
2~3%という数字に明確なエビデンスがあるわけではなく、経験的にそのくらいがバランスが良いと考えられているということです。
しかし、インフレが行き過ぎてしまうと好ましくない事態になってしまいます。
インフレが行き過ぎた状態が
・バブル
・ハイパーインフレ
の2つです。
<バブル>
基本的にはインフレが加速しすぎると、物価の上昇に給料の増加が追いつかなくなっていきます。
しかし、景気が過熱しすぎると人々は大胆になってしまいがちです。
家(不動産)を例に考えてみましょう。
1.景気が過熱している時は、銀行もどんどん融資する
2.人々は銀行から借りたお金で、身の丈に合わない高額の家を買う
3.価格は上昇しているので、数年後に売れば利益が出る
4.その利益を元に、また融資を受けてさらに高額の家を買う
5.これを繰り返して資産を作っていく
これは日本のバブル期に、多くの人が実際に行っていたことです。
しかし何かのきっかけで、バブルは必ずいつかは弾けます。
銀行が融資を絞ったり、お金を貸す時の金利を上げたりするなどにより、バブルは脆くもは弾けてしまうのです。
バブルが弾ければ、借金の返済ができなくなった人々は家(不動産)の売却を始めます。
売る人が多くなり「需要 <<供給」となれば、みるみるうちに家(不動産)の価値は下がっていき、投げ売りが始まります。
これがバブルの崩壊です。
インフレが行き過ぎて景気が過熱しすぎると、バブルになってしまう可能性が出てきてしまうのです。
<ハイパーインフレ>
このバブルよりもさらにひどい状況が「ハイパーインフレ」です。
「需要 >>供給」があまりにも行き過ぎてしまう状態です。
ハイパーインフレでは、お金の価値が下がりすぎてもはや紙屑同様になってしまいます。
ジンバブエで起こったハイパーインフレでは、インフレ率(物価上昇率)が2億3000万%以上という異常な事態になりました。
これは、1個100円で売っていたおにぎりが1個2億円以上になったということです。
レジで並んでいる最中に、値段が上がっていくとまで言われました。
これではお金を持っている意味はほとんどないですよね。
このようなハイパーインフレは、供給不足が進みすぎたときに起こることが多いです。
例えば食料が全くなくなり、日本全体でおにぎりが10個しかなかったら、ものすごい値段になりますよね。
そして10個しかないおにぎりであれば、いくらお金を積まれても誰も売ろうとはしません。
お金があっても、食べ物が無ければ生きていけませんからね。
それが、お金が紙くず同然になるということです。
供給不足が進みすぎるのは
・国の供給能力が徹底的に破壊されるような戦争や内戦
・独裁者が軍事のために、あり得ない量のお金を発行する
などのようなときにしか、基本的には起こりません。
要するに、経済成長のためにはインフレは必要ですが、過度なインフレにはならないようにしなくてはならないということです。
デフレ

デフレとは
「需要<供給」を背景に、持続的に物価が下落すること
でしたね。
インフレと逆の現象です。
残念ながら「物価が下落するから、生活が楽になる」とはなりません。
インフレと同様に説明していきます。
デフレの流れ
デフレになると、以下のような流れになります。

1.需要<供給になる
2.需要が足りないため、モノやサービスはあまり売れず物価は下がる
3.企業の業績は悪くなり、最悪倒産する
4.企業の業績が悪化したので、従業員の給料は減り、最悪失業する
5.収入が減ったため、人々は消費をせず貯蓄する(需要がさらに減る)
6.1に戻る
このようにデフレになると物価は下がりますが、企業の業績は悪化し、従業員の給料も減ってしまいます。
それによって人々は消費を控えるようになり、さらに需要は減るという悪循環に陥ってしまいます。
この悪循環を、「デフレスパイラル」と言います。
経済全体が、停滞・縮小している状態ですね。
いわゆる不景気(不況)です。
つまり
デフレは、不景気で経済が停滞・縮小している状態
ということです。
デフレ時の心理
デフレ時もインフレ時と同様に、心理的要因が大きく関わってきます。
「給料が下がっても物価も下がるから、消費は減らない」とはなりません。
例えば、デフレの時に家を買おうと考えたとすると
・時間が経てば、年々家の値段は下がっていく
・今後、給料が減ったり失業したりするかもしれない
という条件が付随します。
この状況であれば
・家を買うのはやめておこう
・買うにしても、十分に貯蓄して、家が安くなってからにしよう
となりますよね。
将来の見通しが暗いと、人々は悲観的になって消費を減らして貯蓄を増やす傾向にあります。
実際にデフレ時は、個人だけでなく企業も、できるだけ貯蓄を増やそうとします。
すると消費はさらに冷え込んでいくので、需要は減りデフレスパイラルから抜け出せなくなっていきます。
経済が縮小してしまうのです。
お金とモノの価値の変化
インフレと同様に、デフレでもお金とモノの価値は変化します。

おにぎり1個100円だったのが、デフレで50円になったとします。
デフレ前は
おにぎり1個=100円の価値
となっていました。
しかし、デフレ後はおにぎりの価格が50円になったため
おにぎり1個の価値<100円の価値
というように変化します。
デフレによって
おにぎり1個の価値は下がり、100円の価値は上がった
ということです。
つまりデフレにおいては
・お金の価値は上がる
・モノの価値は下がる
ということになります。
このことからもデフレ時に消費が減って、貯蓄が増えることを説明できますね。
人々は、価値の低いものよりも価値の高いものを欲しがるので
価値の高いお金を貯めて
価値の低いモノを買わない
となります。
消費が抑制されるということです。

デフレで失うもの
ここまで見てきたように、デフレ時はデフレスパイラルという悪循環に陥ってしまいます。
デフレスパイラルの悪循環は、人々や企業含めた国全体を貧しくし、人々の生活を苦しくしてしまいます。
日本は、平成の「失われた20年(30年)」と言われる長期デフレによって、貧困化してしまいました。
貧困化というのを具体的に言うと
・供給能力が失われる
・外国に資産を買われて失う
ということになります。
<供給能力が失われる>
デフレは供給過剰なので、赤字を減らすために企業は活動を縮小して供給量を減らす
その結果、給料の減った人々は消費を控え、需要はさらに減少する
減ってしまった需要に合わせて、また供給量を減らして需要も減る
このように、デフレスパイラルが続く限り、供給量はどんどん減ってしまいます。
例えば、自動車産業を考えてみましょう。
デフレスパイラルが続いて、自動車が売れなくなっていったとします。
すると、企業はリストラしたり工場を閉鎖したりして、事業規模を縮小します。
そしてそれは、デフレが続けば続くほど進んでしまいます。
そのようなことが続くと、自動車を提供する力が失われて行ってしまいます。
いざ自動車生産を増やそうとしても、一度失われたものを戻すのは簡単ではありません。
会社自体が多数倒産してしまっていたら、自動車産業自体の存続の危機にもなり得ます。
もちろん、このようなことは自動車産業だけでなく、様々な業種においても起こります。
建設業の会社がどんどん倒産したら、道路や建物や川の堤防などを作ったり修繕したりする様々な土木事業が衰退します。
自然災害大国の日本にとっては、大変なことなのですが、これは相当進行してしまっています。
最近、河川の氾濫などが目立つのは異常気象のせいではなく、治水工事が十分行われていないことが主な原因です。
病院や老人施設などがどんどん閉院したら、医療や介護を受けたくても受けられなくなるかもしれません。
その他にも飲食業やコンビニなど、現代の日本において生活する上で必要な業界がどんどん縮小してしまうかもしれません。
つまり、デフレスパイラルが続き供給量が減少するということは、社会全体の供給能力が失われていくということです。
社会全体の供給能力が失われるということは、社会全体に存在するモノやサービスが失われていくということです。
供給能力から生み出されるモノやサービスは、その国にとっての資産です。
大原則として、モノやサービスは提供する側がいなければ手に入りませんよね。
供給能力が失われるというのは、提供する側がいなくなっていくということです。
道路、ダム、堤防、橋、水道、電気、ガス、電話、食糧、衣服、医療、交通機関、電子機器など、全てのものは提供する力、つまりは供給能力がないと誰もそのモノやサービスを使うことはできないのです。
そしてデフレスパイラルが続くということは、この供給能力を破壊することに他ならないのです。
<外国に資産を買われて失う>
世界で長期間デフレなのは、日本だけです。
これだけの長期間のデフレは、世界でも類を見ないものです。
・日本は、物価や給料は下がっている
・日本以外の国は、物価や給料は上がっている
というわけです。
つまり、日本は他の国から見て、「安い国」になっているのです。
一昔前は、日本人が東南アジアなどに旅行に行くと、物価がめちゃくちゃ安かったのと同じです。
ただ、残念ながら今は日本が、その東南アジアの国々の立場になっていますが。
日本に外国人観光客がたくさん来ていたのは、「お・も・て・な・し」のお陰ではありません。
日本が安いから
です。
しかし、日本が外国に比べて安いと、観光客が増えるだけではありません。
外国人に日本の資産を買われる
ということが起こります。
日本の資産とは
・土地
・水源
・企業
・人材
などです。
給料が下がり続けている日本人からしたら、日本の土地は高く感じるかもしれませんが、外国人からしたら安いのです。
実際に、日本のあらゆる資産は外国によって、買い荒らされています。
日本の資産が外国に買われまくれば、日本人は日本にいながら外国人経営者に安い賃金で働かされて、一生豊かになれることはないかもしれません。
このように、日本だけが長期のデフレであることは、危機的状況なのです。
まとめ

・インフレは「需要>供給」で、物価上昇が持続的に起こること
・デフレは「需要<供給」で、物価下落が持続的に起こること
・日本は長期のデフレにより、貧困化している
日本が長期のデフレによって、貧困化してしまったのは、政治が間違い続けているからです。
今現在も間違った方向に進んでいます。
デフレが続く限り、日本の未来は明るくありません。
何としてもデフレを脱却して、適度なインフレを実現し、成長していかなくてはなりません。
そのためには、一人でも多くの人が経済を正しく理解し、間違った政治に「NO」を突きつけなくてはなりません。
何も考えず思考停止でいたら、どんどん悪い方向に進んでしまうのです。
今後も経済についての記事を書きますので、ぜひ経済を学んでください。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。