今回は、免疫の話です。
結論を言うと
免疫は、超優秀で最強の防御システム
です。
免疫は、病原体などに抵抗するために、人間に備わっている非常に優れた能力です。
細菌やウイルスなどが無数に存在する世の中で人間が生きていけるのは、この免疫機能のおかげなのです。
細菌やウイルスなどだけでなく、人間の体自身が作り出してしまう癌細胞などを排除してくれるのも免疫です。
逆に言えば、免疫がなければ人間は生きていくことはできません。
本当の意味での健康は、病院などの医療によってもたらされるものではないのです。
免疫を高く保つことこそが、健康を維持して豊かに人生を送ることに繋がります。
日本人は病院依存が非常に強く、「何かあったら病院に行けばいい」という間違った常識が蔓延しています。
しかし、免疫力が落ちていれば、いくら治療を受けても健康は戻ってこないことがほとんどです。
自分の免疫力に目を向けて、本当の意味で健康を維持する必要があります。
それでは、免疫とはどのようなものなのか、その仕組みなどについて説明していきます。
最強にして超優秀な免疫機能を理解して、自分の免疫力を大切にしましょう。
自然免疫と獲得免疫

免疫システムは、大きく分けると「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられます。
自然免疫
生まれつき備わっていて、異物が侵入した時にまず対応する免疫システム
獲得免疫
自然免疫では対応しきれない場合に後天的に作られる免疫
体内に異物が侵入した場合、まず自然免疫が戦い、それでも排除しきれない場合には獲得免疫が応答します。
自然免疫
自然免疫は、元々人間の体に備わっている免疫システムです。
ウイルスや細菌などの侵入してきた病原体や、異常になった自分の細胞をいち早く感知して、それらを排除しようとする仕組みになっています。
自然免疫の中心的役割をする細胞は以下の通りです。
![]() |
好中球
盛んに動き回り、 侵入してきた異物を食べることで感染を防ぐ。 |
![]() |
マクロファージ
異物や死んだ細胞などを食べる。 また、その情報を獲得免疫の司令官であるヘルパーT細胞に伝える。 |
![]() |
樹状細胞
異物を取り込んで、その情報を獲得免疫の司令官であるヘルパーT細胞に伝える。 |
![]() |
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
全身を単独でパトロールしながら、ウイルス感染細胞や癌細胞を見つけ次第攻撃する。 |
他には、寄生虫などに対応する好酸球や好塩基球があります。
獲得免疫
自然免疫では、血液中に入った小さな異物や、細胞の中に入ってしまった異物を認識することができません。
そのような自然免疫では対処できない異物に対処するのが、獲得免疫です。
獲得免疫は、自然免疫に比べて応答するまでの時間は長くかかり、異物が侵入してから応答までに数日程度はかかります。
獲得免疫は、「免疫記憶」という素晴らしい特徴があります。
免疫記憶とは、一度感染した異物を記憶し二度目以降はすぐに対応できるようになることで、感染を防いだり重症化を防いだりしてくれます。
つまり、人間の免疫力は
ウイルスや細菌の感染を受けた分だけ強くなる
ということです。
獲得免疫の中心的役割をする細胞は以下の通りです。
![]() |
ヘルパーT細胞
獲得免疫の司令官。マクロファージや樹状細胞から受けた情報をもとに、キラーT細胞やB細胞に指令を出す。 |
![]() |
キラーT細胞
ヘルパーT細胞からの指令を受けて、ウイルスに感染した細胞や癌細胞を攻撃する。 |
![]() |
B細胞
ヘルパーT細胞の指令を受け、抗体を産生し異物を攻撃する。成熟すると形質細胞というものになり、抗体を量産する。 |
他には一度侵入した異物の情報を記憶するメモリーB細胞や、各細胞が免疫異常を起こさないように制御する制御性T細胞などがあります。
免疫反応の流れ

では異物が侵入した場合、どのような反応が起こっているのか見ていきましょう。
実際には、とてつもなく複雑に様々なことが起こっていますが、ここではメインになる流れを説明していきます。

<異物が侵入すると、まず自然免疫が対応>
1.好中球やマクロファージが、異物を食べる。
2.NK細胞は、独自にウイルスに感染した細胞などを攻撃する。
<自然免疫で対応しきれない場合は、獲得免疫が応答>
3.マクロファージや樹状細胞が、ヘルパーT細胞に情報を伝える。
4.ヘルパーT細胞は、キラーT細胞やB細胞に指令を出す。
5.キラーT細胞はウイルスに感染した細胞などを攻撃し、B細胞は抗体を産生して異物を攻撃する。
6.異物を排除し終わると、制御型T細胞が全ての細胞の攻撃を終了させる。
そして獲得免疫が応答した場合は、その異物に対しての情報を記憶する「免疫記憶」を獲得します。
その結果、その異物が再度侵入してきたときには、すぐに獲得免疫が応答して感染や重症化を防げるようになります。
また、以前は免疫記憶は獲得免疫のみだと考えられていましたが、最近は自然免疫の活性化も記憶されることが分かっています。
このように、人間の免疫は二段構えで学習機能もあるという、超優秀な防御システムになっているのです。
免疫力と年齢

非常に優秀で強固な免疫システムですが、残念ながら免疫力は不変ではありません。
基本的には、年齢と共に免疫力は低下の一途をたどります。
以下のグラフは、年齢による免疫力の変化を表したものです。

免疫力は20歳ころにピークを迎えて、その後は下がり続けていますよね。
成人であれば誰もが、免疫力は下り坂に入っているわけです。
ただし、この数値はあくまでも一般平均です。
20歳の時と同じ免疫力を80歳の時に維持することはさすがに不可能でしょうが、努力次第で低下幅を小さくすることは可能です。
努力とは、食事・運動・睡眠などの生活習慣のことで、熱心に病院に通って治療を受けることなどではありません。
つまり
年齢により免疫力は低下してしまうが、生活習慣の改善で低下の程度を小さくすることができ、免疫力を高く維持することは可能
ということです。
免疫力が低下すると癌にもなりやすくなる

免疫システムは、ウイルスや細菌などの外から侵入してくる異物を排除してくれるだけではなく、体自身が作り出してしまう癌細胞も排除してくれています。
癌細胞とは
人間の体は、約60兆個の細胞から成っています。
毎日その中の約1%である約6000億個が、死んで新しい細胞に入れ替わります。
新しい細胞は、DNAをコピーして細胞分裂することで生まれます。
しかしコピーの過程で、コピーミスが起こることがあります。
いわゆる遺伝子の突然変異です。
遺伝子の突然変異で、「死なない細胞」ができてしまいます。
この「死なない細胞」が、癌細胞なのです。
実はこのがん細胞は、健康な人でも1日5000個できると言われています。
免疫が癌細胞を排除する
毎日できる5000個の癌細胞を、免疫システムはウイルスや細菌と同じように「異物」として認識します。
そして、癌細胞を排除してくれているのです。
「NK細胞」「キラーT細胞」などがその役割を果たしてくれています。
つまり、毎日「免疫vs癌細胞」の戦いが起こっているわけです。
そして、免疫の5000勝0敗が毎日続いているのです。
しかし免疫力が低下すると、NK細胞などの数が減ってしまい、5000勝0敗ではなくなっていきます。
免疫が負けだすと、癌細胞が生き残ってしまいますね。
その癌細胞が、時間をかけて増殖して塊となることで「癌」になってしまうのです。
免疫力を高く保つ

免疫力は20歳くらいをピークに低下してしまいますが、その低下の程度は人によって大きく異なります。
もちろん先天的な要素もありますが、免疫力の維持や低下に最も大きく関わる要素は「日頃の生活習慣」です。
逆に言えば、生活習慣次第では免疫力を高く維持することも可能です。
免疫力を高めるには以下の二つのことが重要と言われています。
・腸内環境を整える
・体温を上げる
免疫細胞の6~7割は腸にいると言われています。
腸内環境が悪いと、免疫力は低下してしまいます。
また体温は、免疫力に対して非常に重要な要素です。
体温が1℃下がると免疫力は30%低下し、逆に1℃あがると一時的には免疫力が5~6倍になるとも言われています。
具体的に生活習慣で注意すべきことは
・食事
・運動
・睡眠
・入浴
・ストレス
などがあります。
食事
腸内環境に良いとされる食べ物として、納豆・ヨーグルト・チーズ・味噌などの発酵食品や食物繊維が豊富な食べ物があります。
ただし、それらをとにかくたくさん摂ればいいというわけではありません。
やはり大切なのは、栄養豊富なバランスのとれた食事です。
基本的には現代人は糖質や脂質を摂り過ぎの傾向にありますから、野菜やたんぱく質を意識して取ると良いです。
また食事内容だけでなく、食べない時間をどれだけ作るかが重要なことがわかっています。
1日3食は食べ過ぎで、腸内環境を悪くして免疫力を低下させてしまいます。
基本的には、1日1食か2食が適切です。
現代人は、とにかく食べ過ぎなのです。
運動
適度な運動は、身体を温めて免疫力を向上させてくれます。
最もお勧めなのが筋トレです。
但し運動不足の人が、急に筋トレをすると怪我をする恐れもあるので、ストレッチなど負荷の少ないものから始めてください。
また、ウォーキングなど無理のないレベルから始めても良いです。
ただし、ランニングなど長時間の有酸素運動は、デメリットも多いためお勧めできません。
睡眠
睡眠中は、免疫細胞が非常に活性化するために免疫力が高まります。
睡眠時間7時間以下の人は8時間以上の人に比べて、3倍も風邪をひきやすいという調査結果もあるそうです。
入浴
ゆっくり入浴することで、血流も良くなり免疫力は高まります。
目安としては、38~40℃のお湯に20~30分くらいゆっくり浸かると良いとされています。
ストレス
ストレスによって、免疫力が低下してしまうことがわかっています。
日頃から自分なりの方法で、ストレスを解消するようにしましょう。
特に「笑う」というのは、免疫が活性化するという研究結果もありますので、思いっきり笑ってストレスを発散できるものがあると良いですね。
まとめ

・免疫は最強で超優秀な防御システム
・免疫には自然免疫と獲得免疫がある
・一度対応した異物を、免疫は記憶して2度目以降は即座に対応する
・免疫力は20歳をピークにして、低下し続ける
・免疫は癌細胞も排除している
・免疫を高く保つには、日々の生活習慣が重要
コロナやインフルエンザのように致死率の低い感染症で亡くなってしまうのは、基本的には免疫力が低下した「免疫弱者」です。
コロナで
高齢者や基礎疾患がある人が、重症化しやすく死亡することが多い
と言われますが、当たり前のことです。
高齢者や基礎疾患持ちは、免疫力が低下しているのです。
人間は、ウイルスや細菌などとは昔から共存してきました。
感染症が無くなることなど、存在しません。
そんな中、人間が感染症に負けず健康でいるために何よりも重要なことは
免疫力を高く保つこと
に他なりません。
自粛などして、家に籠っていることではないのです。
外にも出ず、人にも合わず、運動もしない。
こんなことしていたら、免疫力は下がる一方です。
メディアが言っていることを思考停止で鵜呑みにして、周囲の同調圧力に流されてはいけません。
自分の健康は、自分でしか守れません。
そしてそのために最も重要なことは、免疫力です。
しっかり自分の頭で考えて行動しましょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。