今回は、「病気になるのは自己責任なのか?」ということについてです。
要点としては
・病気自己責任論は、ライン引きが非常に難しい
・病気自己責任論の根底は、経済的負担にある
です。
2020年に行った新型コロナ感染症に対する意識調査において
新型コロナに感染する人は自業自得だ
と考える人の割合は、日本では11.5%となり、他国と比べて非常に高い水準となりました。
日本 11.5%
中国 4.83%
イタリア 2.51%
イギリス 1.49%
アメリカ 1.0%
11.5%ですから自己責任と考える人は少数派ですが、それでも自己責任と考える人が他国よりもかなり多い傾向にあることは間違いありません。
新型コロナの実態がどうかは別として、感染症というのは生活習慣病などの慢性疾患に比べて、自分の意識や行動で防ぎきることが難しい病気です。
もちろん免疫力が感染症を防ぐために重要ですから、感染症に対しても普段の生活習慣が関与します。
そのため、自己責任の部分がないわけではないでしょう。
しかし、私たちが集団社会で生活している以上、感染症は自分以外の他人や環境などにも大きく左右されます。
そのような意味では、感染症を自己責任とするのは、さすがに酷だと思います。
但し新型コロナに関しては、無症状でPCR検査を受けて新型コロナと診断されるような人たちは、自己責任と言って良いかもしれません。
そのような感染症に比べると、がん・高血圧・糖尿病などの生活習慣病は、自分でコントロールできる部分が大きくなります。
自己責任の範囲が大きくなると言ってもいいかもしれません。
では、生活習慣病になるのは自己責任かと言えば、そう言い切れるものでもないと思います。
このことは、非常に難しい問題です。
では、「生活習慣病は自己責任なのか?」ということなどについて考えていきます。
遺伝要因の難しさ

自己責任かどうかということを判断するためには、「生活習慣病になった原因が本人に変えられるものなのか」ということは大きな焦点になります。
生活習慣病などの病気になる主な要因としては
・環境要因
・遺伝要因
があります。
環境要因の中の主たるものが、生活習慣です。
少し乱暴な分け方をすれば
生活習慣が原因 → 自己責任
遺伝が原因 → 自己責任ではない
という考え方が出来ます。
このように考えると、遺伝要因がどのくらい関わっているのかは、判断基準の一つになると言えますね。
遺伝要因は遺伝的に受け継いだリスク要因のことを言いますが、実はよくわかっていないことが多々あります。
多くの人が医学を過信していますが、現代医学においても人間の身体は分からないことだらけです。
例えば
・親が糖尿病で、子どもが糖尿病の割合
・親が糖尿病ではなく、子どもが糖尿病の割合
この2つを比べた場合、有意差があれば糖尿病には遺伝要因があると考えられます。
ですが、実際に遺伝子レベルでどのようなものが影響を与えているかということに関しては、わかっていることは少ししかありません。
わかっていないことの方が圧倒的に多いと思われます。
また、有意差があったとしても、それを遺伝要因と言えるのかも微妙です。
子どもは親の習慣などを引き継ぐことが多くあります。
虐待された子どもは大人になって親になったら虐待する傾向は強いですし、親が離婚した子供が大人になって離婚する確率も高いです。
同じように、生活習慣が良くない親の子どもは、大人になっても生活習慣が良くない傾向になります。
そのような親から引き継いだ負の遺産とも言うようなものは、環境要因なのか遺伝要因なのかという判断が難しい所でもあります。
生活習慣ですから環境要因ではありますが、幼い頃からずっと親からインプットされた続けたものという意味では、遺伝要因とも捉えられますよね。
要は、本質的に言えばどこまでが環境要因(生活習慣)で、どこからが遺伝要因なのかというラインを引くのは非常に困難だということです。
ですから生活習慣病には自己責任の部分もあるでしょうし、そうでない部分もあるでしょうが、その割合を明確に断言するのは本来的には難しいわけです。
つまり「病気になるのは自己責任か?」という問題は、現段階の医学では答えを出せない問題なのではないかと思います。
自己責任論の根底は経済的負担

答えなど出せないにも拘らず、なぜ「病気は自己責任か」という問題がよく提起されるのかを、そもそも論として考える必要があります。
究極的に言えば、自分の近しい人を除けば
他人が病気になった理由など、自分には関係のない事
で良いはずです。
それをいちいち自己責任だのなんだのと問題になるのは、理由があるからなのです。
その理由とは
自分の経済的負担になるから
です。
日本は国民皆保険制度を採用していて、保険というのは相互扶助で成り立っています。
相互扶助とはお互いが助け合うことで、皆から集めた保険料を何かあった人に分配します。
しかし日本の国民皆保険制度は、保険料の値上げをしていますが、集めた保険料だけでは足りず税金も投入されています。
そしてその税金も、どんどん増税されています。
つまり
病気になって医療費を使う人が多いと、保険料アップや増税が行われる
ということです。
だからこそ、病気自己責任論が勃発するわけです。
健康に気を使って生活して医療費を使わない人が、割を食う仕組みになっていますからね。
そのような人からすれば、勝手に不摂生をして病気になった人に自分が働いて稼いだお金を奪われるように感じ、納得いかないのも最もな事と言えます。
病気が自己責任かどうかのラインを引くのは難しいとはいえ、生活習慣病などに関しては生活習慣がトリガーになっている以上、不公平なシステムであることは間違いありません。
このようなシステムである以上、病気自己責任論が出てくるのは当然のことなわけです。
経済と医療の立て直しが必須

そして生活習慣病の原因としてもう一つ忘れてはならないのは
医原性要因
です。
端的に言えば、医療が病気を作るということです。
これは実際に非常に多いです。
例えば高血圧などは、基準値を何の根拠もなく引き下げることによって、患者を激増させたりしたのは医者たちです。
もちろん、自分たちの利益のためです。

遺伝要因の割合などの判断は難しいにしても、生活習慣を見直すことで生活習慣病を予防出来たり改善出来ることは明白な事実です。
にも拘らず、医者の大半は薬を延々と出し続けているだけだったりするわけです。
病気が自己責任かどうか議論をするよりも、医者が全ての人に生活習慣病に対する正しい知識を提供し、生活習慣の予防などに向けて邁進する必要があります。
そしてそれを医学的な知識というよりも、国民全体としての「当たり前」にしていくべきです。
自己責任かどうかよりも、生活習慣病そのものを減らせばいいだけのことなのです。
時間はかかるかもしれませんが、医療の本質的な役割はそういうことのはずです。
医療本来の姿に立て直さなくてはなりません。
また、経済の立て直しも重要です。
そもそも日本のように自国通貨発行権を持っている国では、医療費などを社会保険料や税金を増やすことで賄う必要がありません。
国債を発行すればよいだけです。
景気が過熱している時は問題ですが、不景気の現在などは国債を発行して医療費に充てればいいだけです。
それをさせないのが緊縮財政です。
緊縮財政のため、財政支出を絞って国民からお金を吸い上げているわけです。
その結果、給料は増えないのに社会保険料や税金だけが上がっていくのですから、不満が出るのは当たり前です。
逆に景気が良い時は、社会保険料や税金を上げても問題ないわけです。
要するに、病気自己責任論の根底には日本の不景気があり、その原因は愚の骨頂である緊縮財政だということです。
早急に緊縮財政をやめて、積極財政をする必要があります。
まとめ

・病気自己責任論は、ライン引きが難しい
・遺伝要因は、わからないことが多々ある
・保険制度の不公平さが自己責任論の根底
・医療と経済の立て直しこそが、重要
「病気はどこからが自己責任か」という答えが出ないことに対して議論する前に
・生活習慣病を減らす
・相互扶助に不満が出ないような経済対策を行う
というアプローチをすることの方が先ではないでしょうか。
自己責任のラインは、医学の発展と共にわかるようになればいいだけのことです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。