今回は、政府の負債と国民の資産の関係についてです。
結論としては
政府の赤字は国民の黒字
となります。
政府は資金調達するために、国債を発行します。
借金をするということですね。
この政府の国債発行は、実質的に日銀による政府への信用創造であり
・民間預金の制約は受けず、買い手がい無くなることはない
・政府の借金が、民間の資産を増やす
ということを説明しました。

そこで今回は、「政府の借金が、民間の資産を増やす」つまりは「政府の赤字は国民の黒字」ということについて詳しく説明します。
誰かの支出は誰かの収入

まず、当たり前のことなのですが
誰かの支出 = 誰かの収入
となります。
誰かがお金を使う(支払う)からこそ、そのお金が他の誰かの収入になるわけです。
お金は、使うことによって流れていきます。
誰もお金を支出しなければ、誰も収入がない状態になってしまいますよね。
誰かの支出が、誰かの収入なのですから
政府の支出 = 国民(民間)の収入
となります。
国を全体的に考えると、「政府」と「国民(民間)」の2つに分けることができます。
政府にとって自分以外の誰かというのは国民(民間)ですから、政府の支出は国民の収入になります。
ということは、政府が支出を増やすほど、国民の収入は増えるということになります。
政府が支出を増やす = 国民の収入が増える
そして政府は、国債を発行することで日銀による信用創造で、お金を無からいくらでも生み出すことができます。
「政府の借金」ですね。
つまり
政府が借金を増やす = 国民の収入を増やす
ということになるわけです。
ただし、無限にお金を生み出すことは可能ですが、実際にはいくらでも生み出していいわけではありません。
インフレ率によって調整しなくてはなりませんが、そのことについては次の記事で説明します。
政府の財政赤字は国民の資産

政府が支出を増やすには、借金を増やす必要があります。
財政赤字の拡大です。
では、財政赤字を拡大していくと、どうなるのでしょうか。
政府が借金を増やして支出を増やすと、国民(民間)の収入が増えていきますよね。
つまり
政府の財政赤字が拡大するほど、国民の資産が増える
ということになります。
政府の負債 = 国民の資産
ということですね。
要するに
政府の赤字 = 国民の黒字
ということです。
ここまでの流れをまとめると

となるわけですね。
(厳密に言えば、対外国によるものも合算する必要がありますが、わかりやすくするために、ここでは「政府の赤字=国民の黒字」としておきます。)
政府が国債を発行して借金が増えるほど、国民の資産は増えていくわけです。
日本政府の借金が1200兆円を超えている反面、日本国民の資産合計は2000兆円近くあります。(2021年時点)
これは、国民の資産を政府に貸しているのではありません。
政府が借金をしているから(お金を無から生み出しているから)、国民の資産が増えているのです。
仮に政府の借金が0であれば、国民の資産合計は800兆円程度しかなかったかもしれないのです。
国(政府)の借金が1200兆円以上あるから、国民一人当たり980万円以上の借金ということになる
財政破綻論でよく言われることですが、これが全くの間違いであることがわかりますよね。
正解は
国が1200兆円以上の借金をしたから、国民一人当たり980万円以上資産が増えた
ということなのです。
緊縮財政

政府の財政赤字拡大 = 国民の資産増加
となるわけですが、逆も然りです。
政府の財政赤字縮小 = 国民の資産減少
となります。
日本政府や財務省が、平成から現在までのデフレ下で一貫して目指しているものは
・財政再建(財政健全化)
・プライマリーバランス(PB)黒字化
です。
そしてこれらを実現するために、「緊縮財政」を行っているのです。
これらが何を意味するかと言うと
・政府の収支を黒字にする
・政府の財政赤字を縮小する
ということに他なりません。
政府が黒字だとすると、国民はもちろん赤字になります。

政府が黒字化するということは
国民の納税による税収 > 公共事業投資などの政府の支出
ということです。
政府と民間(国民)で考えれば、お金は政府の方に移っていくということです。

つまり、財政再建やプライマリーバランス黒字化のために緊縮財政を行うということは
・国民の収入を減らす
・国民の資産を減らす
ということと同義だということです。
これは、インフレが過熱するのを抑えるべき状況で行うのであれば、インフレ対策として正しい対策です。
お金の量を減らして、需要を少なくできますからね。
しかし、日本はずっとデフレです。
デフレですから、お金の量を増やして需要を増やさなくてはいけないのです。
そのような時に緊縮財政を行うということは
国民を貧困化させる
ということに他ならないのです。
そして残念ながら、国民もそれを後押ししてきてしまいました。
「無駄な公共事業はやめろ!」
「政府は無駄遣いをするな!」
「公務員の給料を下げろ!」
などです。
「自分たち国民が、苦しみながら我慢して耐え忍んでいるのだから、政府や公務員も我慢して無駄遣いするな!!」
というやつですよね。
これらは、感情的にはわからなくはないですが、完全に逆効果です。
余計にデフレを加速させてしまうだけです。
デフレ時には
・無駄でも何でも公共事業はやる
・公務員を増やしたり、公務員の給料を上げる
などが正解になります。
例えば公共事業において
1.有意義な公共事業を行う
2.無意味な公共事業を行う
3.公共事業を行わない・減らす
この3つの選択肢で、デフレ下では3が最悪の選択肢になります。
もちろん1の「有意義な公共事業を行う」というのがベストですが、やらないよりは無意味な公共事業だとしても、やった方が良いのです。
それこそ、穴を掘って埋めるという全く無意味な工事でも、やらないよりはやった方が良いということです。
それによって、政府支出が増えて国民の収入が増えますからね。
このように論理的に考えれば、デフレ下での緊縮財政があり得ない対策であることは明らかなのですが、日本はずっと政府も国民も間違い続けているのです。
(財務省や一部の政治家は、わかっててやっているでしょうが。)
まとめ

・政府の赤字 = 国民の黒字
・政府の黒字 = 国民の赤字
・財政再建やPB黒字化は、政府を黒字にして国民を赤字にする
・日本はデフレ下において、緊縮財政を行い続けてきた
・財政再建(財政健全化)
・プライマリーバランス(PB)黒字化
・緊縮財政
これらは、国民の資産や収入を減らすものです。
デフレにおいては
需要が不足している → 消費するためのお金が足りない
という状況なのですから、当然国民の資産や収入を増やさなくてはなりません。
そうしなければ、デフレ脱却できませんからね。
デフレスパイラルは、合成の誤謬により自然に脱却することはできないのです。

それなのに、日本政府は長いデフレの間に緊縮財政を続けてきて、国民はそれを支持したり受け入れてきたのです。
インフレ目標を達成できない
と言われますが、そんなのは当たり前です。
インフレ化するのとは真逆のことを続けているわけですからね。
多くの人が経済について正しい知見を持てば、すぐにデフレは脱却できるはずです。
現在の政治家にも、正しい貨幣観を持っている人もいます。
そのような人たちに投票をして、緊縮財政を推し進める政治家に「NO」を突きつければいいのです。
逆に言えば、国民の大半が無知のうちは、日本はいつまでもデフレから脱却できないかもしれませんね。
子どもたちやその先の未来の世代のことを思うのであれば、大人が正しい知識を得ることは必要不可欠だということです。
無知は罪にもなり得るのです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。