社会

敵国条項とは?

敵国条項とは

今回は、「敵国条項」についてです。

 

結論としては

・敵国条項は死文化されているため、実質的には効力を持たない

・但し、条項自体が削除されているわけではない

・中国などが敵国条項を持ち出してくる可能性は非常に高い

・憲法9条改正への妨げにはならないが、慎重に進める必要がある

です。

 

れいわ新撰組の山本太郎さんが、SNSやメディアの前で

旧敵国条項があるため、日本の憲法9条改正し反撃能力を有することは現実的ではない

というような主張をされているので、「敵国条項」について調べてみました。

 

敵国条項という言葉に、あまり馴染みのない人も多いのではないでしょうか。

敵国条項は、国連憲章の第53条・77条・107条の通称のことで

第二次世界大戦において連合国の敵である枢軸国が、侵略行為やその兆しを見せた場合、国連安保理の決議なしに攻撃することが出来る

というものです。

国連憲章とは

国際連合憲章のことで、国際連合の基本事項を記した条約のこと。

国際連合のベースとなる決まりのようなものです。

枢軸国とは

第二次世界大戦で、国際連合の母体である連合国に敵対していた国。

 

敵国条項においては枢軸国を厳密に定義していませんが、日本政府の見解では

・日本

・ドイツ

・イタリア

・ブルガリア

・ハンガリー

・ルーマニア

・フィンランド

が対象になっているとしています。

 

つまり敵国条項を簡単に言えば

敗戦国が軍事的に不穏な動きをした場合、各国は無条件でその国に攻撃をすることが出来る

というものです。

本来的には、世界中の紛争などは国連安全保障理事会の承認がなければ軍事的な行動はできませんが、敵国条項はその例外的なものと言えます。

 

この敵国条項のため、日本の憲法9条改正をすれば攻撃を受ける可能性があると山本太郎さんは言っているということです。

 

敵国条項は死文化している

そもそも国連憲章は、1944年にアメリカ・イギリス・ソ連・中国の4か国によって作られたものをベースとして作られています。

1944年は戦争中ですから、「連合国VS枢軸国」という対立構造があった時代です。

敵国条項はこの対立構造を前提としたもので、連合国側のお互いを助け合う同盟のようなものでした。

 

しかし現在、連合国から見た旧敵国である枢軸国はいずれも国際連合に加盟しており、敵国条項の存在意義は消滅しているとも言えます。

そのような状況ですから、1995年の国連総会において全ての常任理事国5か国を含む155か国の賛成によって(反対0,棄権3)

敵国条項は、既に死文化している

という認識を示す採択がされ、削除することが約束されています。

 

つまり

・敵国条項は、あってないようなもの

・敵国条項は、削除するのが妥当

という世界的な共通見解があるとも言えるわけです。

 

このようなことから考えると

・敵国条項があるから日本は憲法9条を改正して反撃能力を持つ事はできない

・日本が反撃能力を持つと、敵国条項によって他国に攻撃される

という判断は、適当ではないと言えます。

 

現に、ドイツなどの旧敵国の中には反撃能力を保有した国もありますが、敵国条項が発動したことはありません。

 

未だ削除されていない

鎖

とは言え、敵国条項は国連憲章から削除されたわけではありません。

削除を約束はされていますが、未だに残っています。

 

敵国条項を削除するには、国連憲章改正の手続きが必要になります。

国連憲章改正には、総会構成国2/3以上の賛成で採択され、かつ常任理事国5か国を含む国連加盟国2/3以上によって批准されることが必要です。

「敵国」とされている国以外にとっては、かなり面倒だというのもあるようです。

また、実際に削除しようと進めたところで、常任理事国であるロシアと中国が反対することが予想されます。

 

ロシアと中国は、日本との間に領土問題がある国です。

本来的には領土問題などないのですが、ロシア派北方領土に対して、中国は尖閣諸島に対して自国の領土だと主張しています。

中国は日本が実効支配している尖閣諸島に対して、敵国条項をちらつかせています。

日本の尖閣諸島の実効支配を旧敵国による侵略と捉えられたら、平和的解決や話し合いをせずに、中国は軍事侵攻出来てしまうとも言えます。

 

そのような意味では、領土問題や憲法9条改正に関して、敵国条項のリスクがないわけではありません。

日本は地政学的にもリスクの高い場所に位置していますしね。

 

まとめ

まとめ

・敵国条項は、死文化していて実質効力を持たない

・しかし、条項が国連憲章から削除されているわけではない

・中国やロシアが日本に対して敵国条項を使ってくる可能性はある

中国やロシアなどのリスクはありますが、基本的には敵国条項があるから憲法9条改正が出来ないという論理はおかしいと思います。

十分に慎重になる必要はありますし、難しい問題ではありますが、敵国条項削除に向けて外交的な努力をするべきではないでしょうか。

死文化していて実質的には無効な条項によって、日本の進む道が曲げられるのは国益を損なうだけです。

 

そもそも憲法9条改正を主張する人たちに対して、護憲派の人たちが「軍国化したいのか」と言うことがありますが、的外れにも程があります。

憲法9条改正を主張する人も、護憲を主張する人も、目指すところは

戦争をしない

というところのはずです。

そのためにベストだと考える手段が違うだけです。

不毛な罵り合いをするのではなく、生産性のある議論をするべきです。

 

個人的には、戦争しないためには軍事力を増強しなくてはならないと考えています。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。