健康・医療

夢が持つ驚くべき2つの機能

夢が持つ驚くべき2つの機能

今回は、「レム睡眠と夢が持つ機能」についてです。

 

結論としては

レム睡眠と夢は、「メンタルヘルス」と「創造」の機能を持つ

となります。

 

長い間「夢」は、睡眠の中でも特に謎とされてきましたが、近年夢の役割が分かってきています。

それは、フロイトが提唱した「潜在的な意識が夢に現れる」といった夢判断などではありません。

夢判断は、現代の科学においては否定されています。

 

夢は、主にレム睡眠中に脳が見せるものです。

レム睡眠の役割は、大きく分けて

・メンタルヘルス

・問題解決と創造性

の2つがあります。

そしてこの2つは、レム睡眠だけでは果たすことができず、夢が必要だということが分かっています。

 

つまりレム睡眠中に夢を見ることで、「メンタルヘルス」と「問題解決・創造性」の機能を果たすということです。

 

それでは、レム睡眠と夢の役割について説明していきます。

 

レム睡眠中の脳

レム睡眠中の脳は、起きている時と同じように活発に活動しています。

脳波を見ても、起きている時(覚醒時)とレム睡眠中は同じような波形になっていて、区別することが出来ません。

 

レム睡眠中の脳の中で、特に活発に活動している部位が4つあります。

それが以下の4部位です。

・視空間を司る部位(脳の後方部)

・運動を司る部位(前頭葉の中の運動野)

・記憶を司る部位(海馬とその周辺)

・感情を司る部位(扁桃体)

感情を司る扁桃体に至っては、起きている時に比べて30%活動量が増えています。

脳の構造 扁桃体 脳の構造 前頭葉

その反面、合理的思考や論理的意思決定を司る前頭前皮質(前頭葉の前方)は、レム睡眠中には全く活動していません。

 

つまり、レム睡眠中の脳は

・視覚、運動、記憶、感情に関しては、活発に活動している

・合理性、論理性という理性に関しては、完全に休止している

という状態だということです。

 

理性に捉われない自由な状態です。

常識から解放された状態とも言えるかもしれませんね。

夢の中で現実的からかけ離れたようなことが起こるのは、このようなことが理由なのです。

 

そして、レム睡眠中の脳がこのような状態であるため、レム睡眠と夢が驚くべき機能を果たすのです。

 

メンタルヘルス

レム睡眠中は、ストレスホルモンの一つであるノルアドレナリンが、脳内から完全に無くなることがわかっています。

ノルアドレナリンが脳内から完全に無くなるのは、1日のうちでレム睡眠中のみです。

このことから、レム睡眠はストレスや負の感情を消すことに対して、何かしらの働きがあると考えられてきました。

 

そして、様々な実験や研究や臨床経験などによって

トラウマになるような体験をした直後に、その体験の夢を見た人は、その後抑うつ状態を脱して心の問題を克服している

ということが、わかるようになりました。

 

逆に

夢を見ても辛い体験そのものの夢を見なかった人たちは、その体験を克服できず、1年経っても抑うつ状態から脱却できない

ということもわかってきたのです。

 

このようなことから

辛い体験と同じ感情の夢を見ると、辛い体験に伴うネガティブな感情を消せる

ということがわかってきました。

 

体験した辛かったことや怖かったことの夢を見るのは、精神的にもよくない「悪夢」として認識されがちですが、実は逆なのです。

そのような夢を見るからこそ、辛かった出来事は事実として覚えていても、その時の辛い感情を忘れることが出来るのです。

すごいですよね。

 

つまり夢は

辛い体験のネガティブな感情だけを、選択的にはぎ取って消してくれる

ということです。

 

このように、夢は精神を健全に保つために重要な役割を果たしているのです。

 

創造性と問題解決

レム睡眠と夢には、メンタルヘルス以外にもう一つ、とんでもなく高度で驚くべき機能があります。

それが、「創造性と問題解決」です。

 

睡眠を大きく分けると、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2つに分けられます。

それぞれの記憶に対する機能として

<ノンレム睡眠>

短期記憶を取捨選択して整理し、長期記憶に移動して定着させる。

 

<レム睡眠>

様々な記憶を統合し、高度に活用する。

ということを行っています。

睡眠は最高の記憶術
睡眠は最高の記憶術覚醒時に得た情報は海馬に短期記憶として保管され、ノンレム睡眠時に整理され長期記憶に移動します。レム睡眠時には、それを過去の経験や他の記憶などと統合します。ノンレム睡眠によって記憶は強化・定着し新たに記憶できるようになるのです。...

 

レム睡眠中の記憶の統合とは、かけ離れた記憶を繋げたり、最近知ったことと昔から知っていることを繋げたりしています。

起きている時には、なかなか意識的に繋げられないような記憶を繋げてくれるのが、レム睡眠と夢なのです。

そのため、独創的で新しい発想などを生み出すことが出来ます。

 

事実として、夢の中で新しいアイデアが浮かんできたり、どうしても導けなかった答えを導けたりすることは、よくあることなのです。

 

一つ実際にあった伝説的な話を紹介します。

ロシアの化学者であるドミトリ・メンデレーエフが、1869年2月17日に見たと言われている夢の話です。

ドミトリ・メンデレーエフは、元素の規則性を発見し、周期表を作ったメチャクチャ偉大な人です。

元素周期表

これです。

この元素周期表を作ることを成し遂げる上で、レム睡眠と夢が驚くべき威力を発揮しているのです。

 

メンデレーエフは宇宙の元素には、何かしらの規則性があるはずだと考え、その規則性を見つけるために何年も挑戦し続けました。

諦めずに挑戦し続けていましたが、どうしても規則性を見つけられず、失敗続きでした。

 

そしてある時、3日連続で徹夜した後に眠った時の夢が、全てを解決してくれたのです。

 

メンデレーエフが見た夢の中では、元素が「周期」と「族」を基準に、性質に従って整然と並んでいたのです。

起きている時にはできなかったひらめきを、レム睡眠中の夢の中で脳は、あらゆる知識を統合し元素表を作り上げたのです。

 

メンデレーエフ自身の言葉です。

「私は夢の中で表を見た。その表の中に、全ての元素がぴったりとはまっていく。そして目が覚めると、すぐに紙に書いた。後で訂正が必要になったのは、たった1ヵ所だけだった。」

夢の中で知識が統合され、創造性が爆発し、問題解決されたすごい例ですよね。

 

他にも、ビートルズの「イエスタデイ」「レット・イット・ビー」は、ポール・マッカートニーが夢の中でメロディが浮かんできたと言っています。

夢で独創的なひらめきが生まれたことは、他にも数多く報告されています。

 

レム睡眠中は、理性を司る前頭前皮質は完全に活動していないのに対して、他の部分は覚醒時と同等かそれ以上に活動しています。

脳の中では様々な活動が行われていますが、理性が働いていないため、常識や枠組みがない状態なのです。

そのため、創造性が強くなり問題解決に導けるということですね。

 

まとめ

・レム睡眠と夢は、辛い体験のネガティブな感情だけを消す。

・レム睡眠と夢は、起きている時に出来ない知識の統合と創造を行う。

知識を定着させるためにも、新しい発想を生み出すためにも、睡眠は重要だということですね。

何かに煮詰まったら、最善の解決策の一つは、「良く寝ること」なのかもしれませんね。

 

精神的な安定にも、睡眠が重要であることも明らかです。

 

このようなことから、睡眠というのが単なる休憩ではないことがよくわかります。

寝ている間というのは外界からの余計な情報が入ってこないため、むしろ脳は起きている時よりも高度なことを行っているとも言えます。

 

身体の健康のためだけでなく、メンタルケアや記憶・創造性など脳の機能に対しても、睡眠は非常に重要なのです。

睡眠不足は、それらの効果をことごとく失ってしまいかねません。

よく寝ましょう。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。