健康・医療

滅菌・消毒・除菌・殺菌・抗菌の違い

滅菌・消毒・除菌・殺菌・抗菌の違い

今回は、滅菌・消毒・除菌・殺菌・抗菌の違いについてです。

 

結論としては

・「除菌」「殺菌」「抗菌」は量的制約はなく、有効かどうか不明

・一般的に最も菌に対して有効なのは、「消毒」

・過剰な菌排除思考は逆効果

となります。

 

最近は、ありとあらゆるところにアルコール消毒が置いてあります。

アルコール消毒のスプレーを携帯している人も少なくないでしょう。

またドラッグストアや家電量販店などに行っても、「除菌」「抗菌」「殺菌」などの菌を排除して清潔になるようなイメージの言葉が、そこかしこに並んでいます。

除菌率99%

抗菌コーティング

殺菌作用

などなどです。

 

何やら効果がありそうに見えますが、実際にどのような効果があるのかについては

「何となく清潔な感じがする」

「菌は少しでも減らした方が良さそうな気がする」

というように、ほとんどの人が根本的には理解せず、言葉に踊らされているのではないでしょうか。

 

滅菌・消毒・除菌・殺菌・抗菌は、同じように見えますが、実はそれぞれ意味は全く違います。

 

それでは、それぞれどんな意味でどのような効果があるのか、そしてひたすらに菌を排除しようとする現代の流れの危険性について説明していきます。

 

滅菌とは

滅菌とは

ウイルスや細菌など全ての微生物を、完全に死滅か除去すること

を言います。

 

滅菌には明確な基準があり

微生物などの数が100万分の1以下になることが滅菌状態

と定義されています。

滅菌は、滅菌・消毒・除菌・殺菌・抗菌の中で最強で、最も無菌状態に近づけるものです。

 

滅菌方法の種類としては

・高圧高温によるもの

・ガスによるもの

・電磁波によるもの

などがあります。

 

しかし、滅菌を日常生活で目にすることは、ほとんどありません。

基本的には医療機器やオペ室などの医療現場において行われるものですから、医療従事者以外の一般の人が滅菌に触れることは、まずないと考えてください。

 

ドラッグストアや家電量販店などで、「滅菌」という言葉を見かけないのはこのためです。

 

消毒とは

消毒とは

病原性微生物を死滅か除去か無毒化すること

を言います。

 

消毒はウイルスや細菌を全ていないようにすることが目的ではありません。

ウイルスや細菌などの病原性の微生物が残っていたとしても、感染力がないレベルまで毒性を下げられていれば消毒の目的は達成できているということになります。

 

消毒の方法としては

・アルコール消毒などの化学的消毒

・煮沸消毒などの物理的消毒

など、様々なものがあります。

 

消毒の最も一般的なものとしては、今や建物や店舗の入り口のどこにでも存在しているアルコール消毒ですよね。

アルコール消毒はエタノール(エチルアルコール)が一般的に使われますが、適切な濃度は70~80%とされています。

実はそれより濃度が高くなっても低くなっても、消毒効果は下がってしまいます。

 

ちなみに携帯用のアルコールスプレーは、水が無いような地域でも手を清潔にできるように作られたものです。

本来的には、水があって手を洗えるところであれば、アルコール消毒は必要ないとも考えられます。

今や、水で手を洗うよりもアルコール消毒が優先になってしまっていますが。

 

メタノール(メチルアルコール)は人体に有害ですので、間違ってもエタノールの代わりとして手指などに使用しないようにしてください。

 

除菌とは

除菌とは

微生物の数を減らすこと

を言います。

 

但し、程度に関しては定義されていません。

どういうことかと言うと、元々微生物がどれだけの数いたとしても、微生物の数を一つでも減らすことができれば除菌できたということです。

100万の微生物が99万9999になっただけだとしても、それは除菌成功なわけです。

 

要するに、除菌の効果を謳っていても

効果の保証はない

ということなのです。

 

手洗いやうがいや台拭きで拭くことも、除菌をしているということになります。

ちなみに、除菌シートで拭いた場合と水に濡らしたティッシュで拭いた場合では、除菌効果に差はなかったという実験結果もあるそうです。

多くの人は、除菌シートに過大な期待をしてしまっているかもしれませんね。

 

殺菌とは

殺菌とは

ウイルスや細菌などの微生物を殺すこと

を言います。

 

殺菌も除菌と同様に、程度に関しては定義されていません。

つまり全体の微生物の1%だけ殺して、99%は残って有害だったとしても「殺菌した」と言えるということです。

何だか意味ないような気がしますよね・・・・

 

つまり殺菌を謳っていても

効果の保証はない

ということになります。

 

抗菌とは

抗菌とは

細菌の繁殖を抑えること

を言います。

 

抗菌は細菌を死滅させたり、除去するものではありません。

細菌が繁殖しにくい環境にすることを言います。

 

しかし、抗菌も除菌や殺菌と同様に、程度に関しては定義されていません。

どの程度、菌の繁殖を抑えられるかはわからないということです。

「抗菌コーティング」のような商品は数多くありますが、意味があるのか不明なわけです。

 

つまり、抗菌を謳っていても

効果の保証はない

ということになります。

 

菌排除洗脳のデメリット

現代は、異常なまでの菌排除思考が蔓延しているように思えます。

新型コロナ騒ぎ以降は、その傾向が一層強まりました。

ウイルスや細菌などに感染しないように、繰り返し繰り返しアルコール消毒などを行い、少しでもウイルスや細菌を排除しようとしているわけです。

 

しかし過剰な菌排除思考は、感染予防という観点から見れば、逆効果になってしまう可能性があります。

過剰に消毒や除菌を行うことで身体自身の防御機能を低下させてしまいかねないのです。

 

例えば、のどや口などの粘膜には、多数の粘液・常在菌・免疫細胞などが存在します。

手指の表皮にも、バリアである皮脂・汗・常在菌などが存在しています。

これらは、身体を守る防御機構であり、非常に重要なものです。

過剰な消毒や除菌は、これらを除去してしまうことにも繋がります。

 

常時、消毒や除菌を行うということは、人間の防御機能と微生物とのバランスを崩してしまうことになってしまうのです。

 

まとめ

・滅菌は、最も無菌状態に近づけられるが、一般的には目にしない

・消毒は、病原性微生物を死滅か除去か無毒化すること

・除菌、殺菌、抗菌は程度の定義はなく、効果の保証はない

・過剰な消毒や除菌は、身体の防御機能を低下させる

 

滅菌 微生物を完全に死滅させる
消毒 微生物を無毒化する
殺菌 微生物を殺す(程度は定義なし)
除菌 微生物を減らす(程度は定義なし)
抗菌 微生物の繁殖を抑える(程度は定義なし)

 

効果の程度としては

滅菌 > 消毒 > 殺菌 > 除菌 > 抗菌

のようになるかと思います。

程度が定義されていないものは比べるもの困難ですが・・・・

 

「除菌」「殺菌」「抗菌」に関しては程度の定義がないため、商品にこれらの言葉が並んでいたとしても、意味がない可能性も十分にあるということです。

「滅菌」は一般的に使われることはありませんから、やはり一般的に効果が保証されていると考えていいものは「消毒」くらいですね。

ただし例えばアルコール消毒は、ノロウイルスには効果がないなど万能ではありませんので注意が必要です。

 

しかし、現在のように常にアルコール消毒や除菌に取りつかれて生きていくのは、人間本来の防御機能を低下させてしまう可能性があります。

人間は微生物と共生してきたのです。

そして、今後も共生していかなくてはなりません。

共生するために必要なのが、人間の防御機構なのです。

 

ひたすらに手指などの消毒や除菌を行うということは、正常な細胞も癌細胞も全て殺す抗がん剤治療と同じ発想です。

 

思考停止になって、世の中の同調圧力に押し流されないようにしてください。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。