今回は、預金や現金が本当に安全資産なのか、ということについてです。
結論としては
・預金や現金は、インフレにより価値が減少する
・インフレを前提にした場合、預金や現金は減らない安全資産ではない
・長期デフレの日本では、預金や現金は安全資産で合理的
となります。
資産クラスには様々なものがあります。
・株式
・債券
・不動産
・コモディティ(金など)
・仮想通貨
・預金(現金)
などなどです。
この中で一般的に最も安全資産と言われるのが、預金・現金ですよね。
安全資産とは、リスクのない資産のことを言います。
確かに銀行が破綻したりしない限り、預金が失われることは基本的にはありません。
現金も紛失したりしない限り、失われることがありません。(もちろん使った場合は別です。)
それに対して、株式をはじめとした他の多くの資産に関しては、保有していると価値が減少してしまうリスクが存在します。
しかし、かといって預金や現金がノーリスクだというわけではありません。
預金・現金は金額自体が減ることはありませんが、価値が下がるリスクがあります。
それが
インフレリスク
です。
聞いたことはあるのではないでしょうか。
価値が下がってしまうというのは、例えば100万円の現金を保有していたとしても、インフレによって100万円以下の価値になってしまうということです。
それでは、預金や現金の価値が下がってしまう「インフレリスク」について、説明していきます。
インフレリスクとは

インフレリスクとは
物価の上昇により、お金の価値が下がってしまうリスクのこと
を言います。
そもそもインフレとは、「物価が持続的に上昇すること」です。

物価が上昇したら、持っているお金が減らなくても買える量が減ったり、買えていたものが買えなくなりますよね。
つまりインフレとはモノに対して、相対的にお金の価値が下がってしまうことでもあります。
例を使って具体的に見てみましょう。

インフレによる物価上昇で、おにぎりの値段が100円から200円に値上がりしたとします。
そして、所持金が1000円だったとしましょう。
おにぎりが100円の時は、10個買えます。
しかし200円になった後は、5個しか買えません。
このように、インフレによって同じ金額でも買える量は減ります。
このことを少し視点を変えてみると
おにぎりは100円のままだとしたら、所持金が500円になったことと同じ
ということになりますね。
・所持金は1000円のままで、おにぎりが100円→200円
・おにぎりは100円のままで、所持金が1000円→500円
この二つのことは、同じことと言えるわけです。
つまり
インフレになるということは、所持金が減るのと同じこと
ということなのです。
インフレリスクが最大の資産は預金・現金

様々な資産の中で、インフレリスクが最も大きい資産は預金・現金です。
株式などのリスク資産と呼ばれるものは、基本的にはインフレに伴って成長していきます。
インフレも取り込んで、それ以上に上昇するわけです。
株式で言えば
株式価格の上昇率 = 株式の実際の成長 + インフレ率
というように、インフレ率分が上乗せされるイメージです。
しかし預金・現金は、そうはなりません。
現金はもちろんインフレになろうが、増えませんよね。
預金の利率の上昇も、インフレ率には全く勝てません。
預金や現金は、株式などのリスク資産と違い、インフレを取り込むことができないのです。
つまり預金・現金は、インフレによって最も価値が下がってしまう資産クラスなのです。
ではどのくらい下がってしまうか見てみましょう。

これは、インフレ率が毎年2%だった場合の物価と、現金価値の表です。
仮に100万円の現金を持っていたとした場合
5年後には約90万円
10年後には約82万円
15年後には約72万円
20年後には約67万円
に減ってしまっていることと同等なのです。
5年ごとに大体1割くらい減ってしまっていますね。
つまりインフレを前提にした場合
預金・現金は安全資産ではない
ということになるのです。
デフレ下における預金・現金

そもそも経済成長はインフレであることが前提です。
そして基本的に世界各国は経済成長をしているため、程度の差こそあれどの国でもインフレしています。
ですから、世界のほとんどの国においては、預金・現金は価値が漸減してしまう資産なのです。
しかし、例外の国が一つだけあります。
それが日本です。
世界の中で日本だけが「失われた20年(30年)」において、ずっとデフレだったのです。
つまり、日本だけが経済成長をしなかったということです。
以下は1995年から2015年の世界各国の経済成長率のグラフです。

すごいですよね。
日本の経済成長率は世界でぶっちぎりの最下位で、1995年から2015年の20年間では唯一のマイナスです。

日本だけは、世界の中で唯一デフレで経済が衰退した国だったのです。
ですから、日本人にとっては「インフレリスク」というのは、関係のないものだったというのも事実です。
日本のように長期のデフレである状況においては、インフレ時とは違い、預金・現金は安全資産であり合理的な選択でもあります。
デフレにおいては、モノの価値が下がってお金の価値が上がりますからね。
そのような意味では、日本人が預金・現金を好み、投資を嫌うのは合理的で正しい判断と言えるわけです。
今後はインフレするのか

今後の日本がインフレになっていくのか、それともこれまでと同じようにデフレが続くのかについては、誰にもわかりません。
ただ一つ言えるのは
日本の政治が正しい対策をすればインフレにすることはできる
ということです。
デフレが続けば貧困化が進んでしまいますから、経済を成長させるためにもインフレにしなくてはなりません。
しかし、日本の政府は平成の間ずっと間違った政策を続けてきました。
そしてそれは今も続いています。
「緊縮財政」「プライマリーバランス黒字化」「財政再建」というやつです。
経済について詳しくは、当ブログの【経済基礎講座】を参考にしてください。
本来であれば、これらの間違った政策は早急に破棄してインフレにしなくてはなりませんが、現状を見る限りそのような方向には進んでいません。
となると日本はまだまだインフレにはならず、インフレリスクとは無縁の可能性は高いと言えます。
しかし正しい経済政策を訴える政治家も増えてきていますから、インフレになる可能性がないわけではない、と言ったところです。
結局のところ政府次第なわけなので、どうなるかわからないのです。
では私たち個人としては、どのような資産を保有することがベストでしょうか。
デフレなのであれば預金・現金で保有するのは、悪くない選択肢ではあります。
(経済全体のことを考えるとマイナスではありますが。)
しかし、現代は米国をはじめとしたインフレに伴う経済成長を続ける国の株式などを、ネット証券で簡単に買うことができます。
日本にいながら、米国株などを買うことで米国のインフレ率を取り込んだ成長の恩恵を享受することができるわけです。
となると
・米国株などの資産を保有して、米国などのインフレの恩恵を享受する
・それによって得た利益をデフレの日本で使う
というのが最強かもしれません。
良いとこ取りというやつですね。
但し国として考えれば、デフレは貧困化の一途をたどるので、インフレになるべきであることは間違いありませんが。
まとめ

・インフレ下においては、預金や現金は価値が減ってしまう
・インフレリスクが最大の資産は、預金や現金
・デフレ下においては、預金や現金は安全資産で合理的
インフレが通常の状態である世界各国においては、預金や現金が安全資産でないのは明確な事実です。
しかし日本においてだけは、預金や現金という選択肢は無しではないんですよね。
日本以外の国のインフレによる成長の恩恵を享受するのも良い選択肢ではありますが、そこには為替リスクが存在するのを忘れてはいけません。
為替の変動によって利益が大きくなる可能性もありますが、その逆もあり得るわけです。
そのようなことも考えると、日本においての預金や現金は、他の国に比べて価値の高い資産かもしれませんね。
最終的にどうするかは人それぞれの考え方によりますが、大切なのはこのようなインフレリスクなどがあることも理解した上で判断することです。
知識を得て自分の頭で考えて判断することが、何よりも重要なのです。
思考停止にならないようにしましょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。