経済

格差を否定するべきか

格差を否定するべきか

今回は、社会における経済的な格差についてです。

 

結論としては

・資本主義社会である以上、経済的格差は拡大していく

・日本において、格差是正よりも経済の底上げの方が重要

となります。

 

世の中は、誰もが経済的に平等というわけではありません。

国によって経済レベルは違いますし、同じ国の中でもお金持ちの人もいれば貧乏な人もいます。

経済的な貧富の格差が、ありとあらゆる場所に存在しています。

当然ながら、日本の中でも経済的格差は存在します。

そしてこの経済的格差は、時間と共に広がっています。

 

しかし、「格差の是正」は世界中で対応するべき問題とされていて、それは日本においても同様です。

完全な経済的平等は無理だとしても、もっと平等に近い世の中にするべき

ということは、当たり前のように目指すべきこととされているわけです。

現実は完全に逆行してしまっていますが。

 

しかし

・経済的格差は無くす(減らす)ことができるのか

・そもそも経済的格差は、無くすべき悪いものなのか

ということについて、一旦立ち止まって考えるべきだと思います。

感情的に格差を否定しているという面があるのも、否めないのではないでしょうか。

 

それでは、経済的格差について説明していきます。

 

格差は広がり続ける

まず、「経済的格差は無くせるのか・減らせるのか」ということですが

・基本的に経済的格差は是正できない

・むしろ経済的格差は今後も広がっていく

ということが、残念ながら結論になります。

 

このことは、フランスの経済学者のトマ・ピケティ氏が、2013年に出版された著書『21世紀の資本』の中で証明しています。

トマ・ピケティ氏は、20カ国を対象に過去300年間さかのぼり、15年という期間を費やして資本主義を徹底的に研究しました。

その研究結果を記したのが、『21世紀の資本』です。

つまり『21世紀の資本』には、トマ・ピケティ氏の個人的意見ではなく、研究を基にして導き出したエビデンスが書かれているということです。

この本は、世界中でベストセラーになり、世界中の人々に衝撃を与えました。

 

『21世紀の資本』に書かれていることを一言で言えば

資本主義においては、「r>g」というルールが存在する

ということです。

 

rとgは、それぞれ以下のものを表します。

r:資本収益率

g:経済成長率

つまり「r>g」というのは、「資本収益率>経済成長率」ということになります。

 

かみ砕くと

資本収益率とは、「お金がお金を生む力」

経済成長率とは、「労働がお金を生む力」

と置き換えることが出来ます。

つまり

資本家が保有している資本を用いてお金を増やしていくスピードは、労働者の労働によって給料が上がっていくスピードよりも速い

ということです。

 

さらに端的に言えば

金持ちはさらに金持ちになり、そうでない人との差は常に開き続ける

というわけなのです。

これが資本主義における普遍的な法則のようなものであり、資本主義のルールとも言えるものです。

 

要するに

資本主義においては、経済的格差は広がり続ける

ということです。

ですから資本主義社会が続く限り、経済的格差は無くなったり小さくなることは無いということになります。

 

格差は悪なのか

そのように広がり続ける格差を、少しでも是正することが出来る可能性があるのが、税金です。

 

例えば所得税の累進課税などは、収入が多い人ほど税金が高く収入が低い人ほど税金が安いため、格差拡大を緩衝する役割があります。

相続税なども累進課税です。

 

それに対して、消費税のように一律に課せられる税金は、格差を拡大させてしまいます。

格差を是正するなどと言いながら消費増税をするのは、全く理に適っていないわけです。

では格差をなくすためには消費税などをやめて、累進課税を強化すれば良いのかと言えば、そう簡単な話ではありません。

(現状においては、消費税は引き下げもしくは廃止するべきです。)

 

まず考えるべきは

格差は悪なのか

という、そもそも論です。

現実問題として資本主義である以上、格差が拡大していくのは鉄則のようなものなのです。

格差の拡大を否定するということは、資本主義を否定するということに他なりません。

もし資本主義に反対で、共産主義や社会主義になるべきだと考えている人であれば、格差の否定は理屈が通ります。

ですが、資本主義が継続するべきだと考えているにも拘らず格差を否定するのは、理屈が通りません。

資本主義が継続すると仮定するのであれば、格差の否定は無意味なのです。

 

では、なぜ格差是正が叫ばれるのでしょうか。

そもそも日本の格差は比較的小さい国です。

それは、生活保護などで経済的な最低ラインがしっかり保障されていることに加え、税制などを含めて金持ちには厳しいからです。

それなのに、なぜか日本人は金持ちの人たちを目の敵にしたがります。

「出る杭は打つ」的な感情論が、そこにはあるのでしょう。

言ってみれば、ひがみや妬みも含まれているわけです。

 

金持ちは税金をたくさん納めてくれているのですけどね。

そのような状況に嫌気がさして、海外に逃げてしまう富裕層は増えています。

富裕層が減ってしまえば、政府は残った人たちからもっと税金を搾り取ろうとします。

本末転倒です。

 

「格差是正」という言葉は、一種のミスリードを誘う言葉だと思います。

私たち大衆にとって、経済的に最も重要なことは何かと言えば、格差が小さくなることなどではありません。

富裕層からたくさんお金を取って、彼らの生活レベルを下げさせることでもありません。

(日本人は、このような他人の不幸を求めている節はあります。)

 

最も重要なのは

富裕層以外の自分たちも経済的に豊かになること

です。

 

富裕層と中間・貧困層の人の差が小さくなっても、中間・貧困の人の生活が経済的に豊かにならなければ、何の意味もありません。

逆に、金持ちがもっと金持ちになって格差が拡大したとしても、中間・貧困の人が経済的に豊かになっていけば良いのではないでしょうか。

 

つまり

重要なのは、格差の是正ではなく経済的な底上げ

ということです。

経済が底上げされて好景気になったことによって、富裕層がさらに豊かになったとしても、みんなが豊かになる方向に進んでいれば良いはずです。

 

ここで間違えてはいけないのが

格差是正と中間・貧困層の引き上げは、同義ではない

ということです。

 

経済というのは、富裕層を下げれば貧困層が上がるというような、シーソーのようなものではありません。

貧困層の人たちを引き上げ、誰もが経済的に豊かに生きていくためには、経済全体が上向きになる必要があります。

その中で、たくさんの税金を納めたり、たくさん消費をしてくれたり、雇用を生み出してくれるような金持ち層は、非常に重要な存在です。

金持ちいびりばかりして、金持ちに海外に逃げられたりした方が、圧倒的に損です。

 

もちろん、金持ち優遇の政策は論外です。

しかし、「金持ちからはどんどんお金を取って良い」「金持ちがさらに稼げる仕組みは問題だ」などのような考え方も、あまりに一方的で不公平ですしマイナスでしかありません。

そのようなことをしても、経済はさらに衰退するだけですし、自分たちが豊かになることはありません。

自分で自分の首を絞めているだけです。

 

緊縮財政が諸悪の根源

実際に多くの人の生活は豊かになるどころか、可処分所得は減り続けています。

その鬱憤が富裕層に向いているとも言えます。

筋違いです。

 

中間層や貧困層の生活が苦しいのは、格差があるからではありません。

日本の経済が衰退しているからです。

日本は、「失われた20年(30年)」という長期のデフレによって、経済が世界で唯一衰退し続けてきた国です。

30年間日本人の給料は上がらず、税金と社会保険料は上がり続けたため、日本人は貧しくなり続けてきました。

 

なぜそのようなことになったかと言えば、ひとえに政府が行い続けている「緊縮財政」のせいです。

企業や資産家のせいではありません。

政府の責任です。

そして、そのような政府を支持し続けてきた国民全体の責任です。

 

それなのに、大半の日本人が貧しいのはあたかも格差のせいのように言ったりしているわけです。

責任転嫁の情報操作のようなものです。

 

まとめ

まとめ

・資本主義である以上、格差は広がり続ける

・日本人の大半が経済的に苦しいのは、格差のせいではなく緊縮財政が原因

日本人の金持ちは、アメリカなど諸外国に比べると、保有資産は少ない方です。

日本は金持ちになりにくい構造ですからね。

日本で今起こっていることは、格差社会というよりも

総貧困社会

です。

足を引っ張り合っている場合ではありません。

格差が問題という以上に、総貧困化が問題なのです。

 

格差が大きくなりすぎるのも問題であり、資本主義の矛盾も確かに存在しますが、日本においてはそのステージではありません。

まずは経済を上向かせる必要があるのです。

そのためには、緊縮財政を即刻やめて、積極財政に切り替える必要があります。

 

ですが、増税や外資誘致ばかりを行っている与党が選挙で圧勝してしまううちは、日本の経済は上向きになるのは難しいでしょう。

国民一人一人が、経済について学ばなくてはなりません。

経済が成長しない状況を続けることこそが、次世代にツケをまわしてしまうことなのです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。