今回は、デフレから脱却するためには、どのような対策をしたら良いのかを説明します。
この記事の結論は
・日本が長期デフレで貧困化したのは、政府が対策を間違い続けてるから
・デフレは自然には脱却できない
・政府が適切な対策を行えば、デフレは脱却できる
です。
「平成の20年(30年)」と言われた長期のデフレにより、日本は世界で唯一の経済成長しない国になってしまいました。
現在も、物価はほぼ上がらず、デフレから脱却できているとは言えない状況です。
デフレが続けば、国民は貧しくなり、国としての資産を失う一方です。

では、デフレは脱却できないのかと言えば、そんなことはありません。
政府が正しい対策さえすれば、デフレから脱却をして適度なインフレ(物価上昇率2~3%)にすることは、可能です。
逆に言えば、日本において長期のデフレが続いているのは、政府間違った対策をし続けてきたからです。
それを政府は、あたかも民間のせいように言ってきましたが、デフレというのは民間の力で脱却できる類のものではありません。
デフレが自然に解消することは、不可能なのです。
では、なぜデフレは自然に脱却できないのか、そして政府がどのような対策をすればデフレを脱却できるのかなどについて説明していきます。
ミクロ経済とマクロ経済

デフレスパイラルは、自然と脱却できるものではないということを理解するためには、「ミクロ経済」と「マクロ経済」を理解する必要があります。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、難しくないので安心してください。
ミクロ経済とは
個人や企業のような個別の単位で、経済を見るもの。
代表的な例が、個人の家計。
1本の木を見るイメージ。
マクロ経済とは
国全体の経済を見るもの。
政府・企業・個人などを全て一括りにして考える。
森全体を見るイメージ。
簡単に言えば、ミクロ経済は個人の家計(経済)で、マクロ経済は国全体の経済のことです。
デフレ時において、ミクロ経済的視点から考えた場合と、マクロ経済的視点から考えた場合について見ていきましょう。
デフレ時のミクロ経済的視点
デフレを、個人や企業などのミクロ経済的視点から考えた場合です。
デフレスパイラルにはまり込むと
・個人は給料が減っていく
・企業は利益が減っていく
となります。
将来の見通しは暗いわけです。
このような時、個人や企業の合理的な行動は
支出(消費)を減らして、貯蓄を増やす
となります。
将来に備えて節約するということですね。
もしデフレの状態で、貯蓄もせずにどんどん支出しまくっている人がいたら、明らかにヤバいですよね。
破産まっしぐらです。
つまりデフレ下において、個人や企業といったミクロ経済的視点から見れば
支出を減らして貯蓄を増やすことが、合理的行動
となります。
デフレ時のマクロ経済的視点
次に、デフレを国全体のマクロ経済的視点から考えた場合を見てみましょう。
デフレスパイラル時は、国全体で見ると
・需要(消費)が減る
・社会全体のお金の流れが滞る(お金があまり流れない。)
となります。
社会にお金が流れないということは、人間の体で言えば血液が流れないことと同義ですから、社会は正常に機能しなくなります。
国全体というマクロ経済的視点から見た場合、やらなければならないことは正常な機能を取り戻すことです。
つまりはデフレスパイラルからの脱却です。
デフレスパイラルから脱却するための、国全体として行うべき行動は
消費を増やして、お金の流れを増やす
ということになりますね。
消費を増やしてお金の流れを増やせば、需要が大きくなるのでデフレスパイラルから脱却できます。
つまりデフレ下において、国全体というマクロ経済的視点から見れば
消費を増やしてお金の流れを増やす必要がある
となります。
合成の誤謬

デフレをミクロ経済的視点とマクロ経済的視点から見た場合、お互いが矛盾してしまうのがわかると思います。
個人や企業がデフレ下で消費を減らして貯蓄を増やすという合理的な行動が、全体で見ると消費を減らしデフレスパイラルからの脱却を妨げてしまいます。
つまり、ミクロでの合理的な行動が、それが集まったマクロになると好ましくない結果になってしまうのです。
このことを合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)と言います。

この「合成の誤謬」こそが、デフレスパイラルの最大の問題です。
個人や企業としては、将来に備えるための正しくて合理的な行動をしているだけです。
それなのに、個人や企業が合理的で正しい行動をすればするほど、デフレスパイラルを継続させてしまう結果になってしまいます。
つまり
合成の誤謬が起こるため、自然にデフレから脱却することは、あり得ない
ということなのです。
デフレから脱却するためには

合成の誤謬が起こるため、どうやってもデフレから脱却できないかと言えば、そんなことはありません。
以下の二つの要件を満たすことで、デフレから脱却できます。
・誰かが、非合理な行動である「ひたすら消費をする」ということをする
・それを、デフレから脱却するまで続ける
ということです。
もちろん、普通の個人や企業には不可能なことですよね。
そんなことしたら、破産したり倒産したりして、一人負けになってしまいます。
しかし、この非合理な行動をできる存在が一つだけあります。
それが「政府」です。
政府のみが、社会の中で採算を考えずに支出をして、デフレから脱却させることができる存在なのです。
「財政破綻が~」などの意見もありそうですが、財政破綻はあり得ません。
そのあたりの理由については、後々説明します。
当たり前ではありますが、政府は個人や企業などとは全く異なる存在ですよね。
政府は、社会をデフレから脱却させられるだけでなく、過度なインフレにならないようにすることも可能です。
つまり、政府は経済の状況を押したり引いたり、調整することが出来るのです。
・デフレから脱却する「デフレ対策」
・インフレが過度にならないようにする「インフレ対策」
これらを行うのは、民間ではなく政府の役目なのです。
というよりは政府にしかできないことです。
では、「デフレ対策」や「インフレ対策」がどのようなものなのか、続けて説明していきます。
デフレ対策

デフレは「需要<供給」の状態です。
つまり「需要不足」「供給過剰」ということです。
つまり
・需要を増やす
・供給を減らす
ということが、デフレ対策になります。
また、デフレはお金の流れが停滞したり減っている状態なので、世の中のお金を増やすことがデフレ対策とも言えます。
主なデフレ対策は、以下の通りです。

需要を増やす
需要を増やすというのは、消費や投資(設備投資や人材投資など)を増やすということです。
お金を増やして、流れを良くするイメージですね。
<公共事業などの増加による政府支出の増加>
公共事業や公務員などの数を増やすことによって、政府による財政支出を増やし、消費や投資を増やすことができます。
政府の経済への関与を増やすということになり、いわゆる「大きな政府」にするということを意味します。
例えば公共事業で、道に穴を掘って埋めるという仕事を作るだけでも、需要を増やすことが出来ます。
その仕事内容自体に意味はありませんが、仕事を作り雇用を作ることで人々の収入になるという点では、需要を増やすことに役立つのです。
<減税による民間支出の増加>
政府は、民間による消費や投資の増加を促すことも可能です。
減税すればいいのです。
当たり前かつシンプルですよね。
消費税を減税すれば消費は増えるでしょうし、固定資産税を減税すれば不動産の購入や投資は増えます。
このように、様々な税金を安くしたり廃止したりすれば、消費や投資は確実に増えます。
他にも税金ではありませんが、社会保険料負担を軽くするのも一つの選択肢になります。
<金利を下げる>
金利を下げるということも、需要を増やすことになります。
金利が低ければ銀行からの融資を受けやすくなるので、企業は融資を受けて投資しやすくなります。
個人も、ローンを組んで消費や投資をしやすくなります。
供給を減らす
デフレは供給過剰でもあるので、供給を減らすこともデフレ対策になります。
供給を減らすということは、企業の生産性を抑制する必要があります。
生産性を抑制するということは、競争を抑制するということです。
<規制強化・事業保護>
規制を強化したり事業を保護することで、多くの企業が市場に参入できないようにして競争を抑えることができます。
協調路線をとるということですね。
<国営化>
何でも国営化する方がいいわけではないですが、少なくともデフレ時は民営化はしない方がいい場合が多いです。
民営化するということは、競争が起こって生産性が上がるということを意味します。
インフラに近い業種などの、一時的な国営化なども選択肢として考えられます。
<保護主義>
ヒト・モノ・カネの国際的な移動を自由にするグローバル化をするということは、競争を激化するということです。
それに対して、国境の壁でグローバル化を制限し、国内市場を保護する「保護主義」は競争を抑制して供給を減らすデフレ対策になります。
インフレ対策

インフレ対策は、デフレ対策の逆になります。
インフレは「需要>供給」の状態です。
つまり「需要過剰」「供給不足」ということです。
つまり過度なインフレにならないようにしたい場合は
・需要を減らす
・供給を増やす
ということが、インフレ対策になります。
インフレはお金が良く流れている状態なので、世の中のお金を減らすことがインフレ対策とも言えますね。
主なインフレ対策は、以下の通りです。

需要を減らす
需要を減らすということは、消費や投資(設備投資や人材投資など)を減らすということです。
お金の流れを悪くするようなイメージですね。
<公共事業などの削減による政府支出の削減>
公共事業や公務員の数を減らすことによって、政府支出を減らし、消費を減少させることができます。
政府の経済への関与を減らすということになり、いわゆる「小さな政府」にするということを意味します。
<増税による民間支出の削減>
政府は課税するだけで、民間の消費や投資を減らすこともできます。
例えば固定資産税を増税したら、不動産のインフレを抑えることが出来ます。
消費税を増税したら、全体的にインフレを抑えることが出来ます。
<金利を上げる>
金利を上げることでも、消費や投資を減らすことが出来ます。
金利が上がれば、返済しなくてはならない利子が増えてしまいますよね。
そうすると企業は銀行から融資を受けにくくなって、投資が抑制されます。
また、個人においても金利が高い方が住宅ローンなどを組みにくくなります。
供給を増やす
インフレは供給不足でもあるので、供給を増やすこともインフレ対策になります。
供給を増やすということは、企業の生産性を向上させるということです。
生産性を向上させるためには、競争力を高めることが必要になります。
例えば一つの企業が独占しているようなモノやサービスは、競合がいないので価格も下がりませんし、品質もあがりにくいですよね。
そこに競合が現れて競争が起これば、勝ち残るために企業努力が発生します。
すると価格競争や品質向上が起こり、結果としてそのモノやサービスは、多くの人が手にすることができるようになります。
<規制緩和・自由化>
規制緩和や自由化を行うことで、より多くの企業が競争に参加できるようになります。
その結果として、競争力が高まります。
電力自由化などが良い例ですね。
<民営化>
国の事業を民営化することも、競争力を高めることになります。
郵政民営化が良い例です。
<グローバル化>
規制緩和や自由化を国内だけでなく、海外との国境の壁を低くするグローバル化をすることで、競争はさらに激化することになります。
まとめ

・デフレが続いているのは、政府が対策を間違い続けているから
・デフレは民間の力で自然に脱却できることはない
・デフレから脱却させられるのは、政府だけ
・政府はインフレ対策とデフレ対策で、経済のかじ取りができる
・インフレ対策は、需要を減らして、供給を増やす
・デフレ対策は、需要を増やして、供給を減らす
日本政府は、長期デフレの間に、デフレ対策をほとんどしてきませんでした。
それどころか、インフレ対策を行い続けてきたのです。
インフレ対策・・・・デフレ化させる
デフレ対策・・・・・インフレ化させる
ということですから、デフレ時にインフレ対策を行えば、泥沼のデフレに突っ込むのは明白です。
にも拘らず、日本政府はそれを行い続けてきたのです。
また、そのような日本政府を支持してきたのは国民です。
デフレ時には、本来デフレ対策を行うべきなのですが、あろうことかインフレ対策を行う政府を国民自身が支持してきたのです。
インフレ対策には
・規制緩和
・自由化
・民営化
・グローバル化
・公共事業削減
など、何となく耳障りの言い言葉が並んでいます。
一方、デフレ対策には
・規制強化
・事業保護
・国営化
・保護主義
・公共事業増加
など、何となく聞こえの悪く感じるであろう言葉が並んでいますよね。
要するに、国民も理解せずに「何となく」聞こえの良い政策を支持していたわけです。
本質的には、インフレ対策に並ぶ言葉もデフレ対策に並ぶ言葉も、良いも悪いもありません。
状況に合わせて、必要で適した対策をするだけであり、優劣はないのです。
ここでも思考停止や同調圧力が、社会を歪ませていますね。
正しい知識を得て論理的に考えれば、正しい対策は導き出せます。
思考停止にならず、まずは正しい知識を得て考えてください。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。