今回は、投資においてリスク低減のための基本である「分散」についての話です。
結論を言うと
適切に分散することで、リスクを低減することができる
となります。
「そんなの当たり前だ!!」
という声が聞こえてきそうですが、本当の意味で「分散」を理解している人は少ないように思います。
・何のために、分散してリスクを低減するのか?
・分散する対象は、どのようなものにすればリスクを低減できるのか?
この2つの質問に明確に答えられないようだと、「分散」の意味をしっかり理解しているとは言えません。
では適切な分散投資について説明していきますので、上記の2つの質問に対しての答えを考えながら読んでみてください。
分散投資とは

そもそも分散投資とは
投資対象を複数に分散させること
ということです。
逆は、集中投資ですね。
以下のようなイメージです。

1社に100万円を集中して投資をしていた場合、その会社が倒産してしまえば、100万円を全額失ってしまいます。
それに対して、100社に1万円ずつ分散して投資をしておけば、1社が倒産しても失うのは1万円で済むというわけです。
このように分散することで、リスクを低減することができます。
しかし、リスクの対価がリターンですから、リスクを小さくすれば当然リターンも小さくなってしまいます。


このように、分散投資と集中投資を比較すると
分散投資は、ローリスク・ローリターン
集中投資は、ハイリスク・ハイリターン
という傾向があるわけです。
(但し、何を買うのかということにも大きく影響されます。)
リスク低減の目的

分散投資をすれば、リスクは低減できますが、その分リターンも小さくなってしまう傾向にあります。
大きなリターンを求めるなら、集中投資をした方が良いわけです。
ですから、分散してリスク低減をすることは、絶対的な正解ではありません。
しかし、ほとんどの人にとっては、分散してリスク低減した方が良いのも事実でしょう。
なぜなら集中投資によるリスクは、多くの人にとってリスク許容度を超えてしまうからです。
投資は絶対に、リスク許容度の範囲内で行わなければなりません。
つまり、「何のために、分散してリスクを低減するのか?」という質問に対する答えは
自分のリスク許容度の範囲まで、リスクを引き下げるため
ということです。
しかしリスクの対価がリターンですから、ただひたすらにリスクを低減すれば良いわけではありません。
「リスクは適切にとる」ということが重要です。
適切なリスクとは、リスク許容度の範囲内で、かつ求めるリターンと見合う程度のことです。
リスク許容度は人によって異なりますから、どれだけリスクを引き下げるべきかは、人によって違ってきます。
ですから
・どのくらい分散するのか
・分散する対象は何にするのか
ということも、人それぞれだということですね。
× とにかく分散して、出来るだけリスクを引き下げる
〇 適切なリスクをとるために、必要なだけリスクを引き下げる
これが分散投資によるリスク低減の目的なのです。
正しい分散投資

ここからが本題です。
分散にも様々な分散の種類があります。
・銘柄の分散
・地域の分散
・資産クラスの分散
などです。
銘柄の分散は、1つの会社の株に集中投資するよりも、複数の会社の株に分散するということです。
地域の分散は、例えば日本の銘柄ばかり買うのではなく、米国などの他の先進国や新興国の銘柄にも分散するということです。
資産クラスの分散は、株だけでなく債券や金や不動産や預金などの、様々な資産に分散するということですね。

様々な分散方法はありますが、正しい分散投資をするための考え方は、全て同じです。
それを限界までシンプルにして説明していきます。
正しい分散をしないと、分散したにもかかわらず、リスクの低減出来ていないなんてことになりかねません。

共に右肩上がりの、aとbのチャートがあります。
aは振れ幅が大きく、ハイリスク・ハイリターン
bは振れ幅が小さく、ローリスク・ローリターン
ということがわかりますね。
では、aとbを半分ずつ買って分散投資したとしましょう。
すると、以下のようになります。

cが、aとbに分散したものです。
当然ですが、振れ幅はaとbの中間になっています。
aから見れば、リスクは低減されたと言えますね。
しかし、これは良い分散とは言えません。
次に、良い分散について見ていきます。

aは先ほどと同じですが、bの代わりにdになっています。
bとdは、振れ幅は同じですが、決定的な違いがあります。
bとdを比べてみましょう。

上昇と下落のタイミングが、bとdでは逆ですね。
つまり
・aとbは、上昇と下落のタイミングが同じ
・aとdは、上昇と下落のタイミングが逆
ということです。
このように
・同じ方向に動くことを、「正の相関」
・逆の方向に動くことを、「負の相関(逆相関)」
と言います。
では、aとdを半分ずつ買って分散投資した場合を見てみましょう。

eが、aとdに分散したものです。
かなり振れ幅が小さくなっていますね。
では、このeと先程のc(aとbに分散)を比較してみましょう。

c 正の相関をしているものに分散
e 負の相関をしているものに分散
eの方が、振れ幅が小さくなっているのがわかりますね。
eの方がリスクが小さくなっているということです。
つまり
負の相関があるものに分散することで、リスク低減効果は発揮される
ということなのです。
但し、分散する場合は2つに分散するわけではなく、もっと多数に分散しますよね。
全てが、完全に負の相関になるわけではありません。
ですから実際には
違う値動きをするものに分散する
ということになります。
逆に言えば、「同じ値動きをするものにいくら分散しても意味ないよ」ってことですね。
例えば、いくらたくさんの銘柄に分散しても、それが全て自動車企業ばかりであれば意味ないというようなことです。
同じ業種であれば、同じような値動きをしますからね。
時間の分散

投資する対象を分散する以外にも、「時間を分散する」という考え方もあります。
一括で購入するのではなく、少しずつ定期的に購入するなどして、高値で大量につかんでしまうリスクを低減しようということですね。
いわゆる積み立て投資と言われるものです。
積立投資の中で、最も有名なものが「ドルコスト平均法」という手法です。
ドルコスト平均法は
一定期間ごとに一定金額ずつ、同じ対象を購入していく
という投資方法です。
例えば、毎月1日に3万円ずつ同じ投資対象を購入し続けるような方法ですね。
この方法だと、価格が高い時には少ししか買えませんが、価格が安い時には多く買えます。
すると平均取得価格は、平準化されていくというわけです。
ドルコスト平均法については、詳しく別の記事で説明します。
通貨の分散

分散投資で、絶対にお勧めしたいのが「通貨の分散」です。
私たちのように日本に住んでいれば、「円」で生活をしています。
給料も「円」で受け取り、銀行預金も「円」ですし、年金も「円」で受給します。
言ってみれば、円に集中投資しているとも言えます。
ですから、投資くらいは円以外の外貨にも分散した方が、リスクを低減できます。
例えば米ドルなどですね。
ネット証券を使えば、米国をはじめとした外国の銘柄やファンドも、簡単に買うことができます。
何よりも投資対象としては、日本市場よりも米国市場の方が、圧倒的に将来性もありますしね。
また、円での資産と米ドルでの資産を持つことは、逆相関の資産を持つことにもなります。
円とドルは
円が高くなれば、ドルは安くなる
円が安くなれば、ドルは高くなる
という逆相関の関係です。
つまり、リスク低減の効果が発揮されるということです。
まとめ

・適切な分散により、リスクを低減できる
・リスク許容度の範囲内になるように、リスクを低減させる
・違う値動きをするものに分散することで、リスク低減効果を発揮する
・時間の分散や通貨の分散も、リスク低減になる
分散はリスク低減の王道であることは間違いありませんが、それでもしっかりと考えて行うことが重要です。
「本当に分散する必要があるのか」
「何のために、分散してリスク低減するのか」
「分散して、どこまでリスクを低減するのか」
など、疑問を持ってそれに対して、しっかりと考えなくてはなりません。
リスク低減のための分散でも、「とりあえずリスク低減のために、分散しよう」ではないのです。
順序としては
1.自分のリスク許容度を把握する
2.リスク許容度の範囲内で、求めるリターンを明確にする
3.それを実現できる分散対象を決めていく
となりますから、全て最終的には自分で考えて判断しなくてはなりません。
まずは疑問を持って、考える癖を付けましょう。
思考停止は、絶対にダメです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。