今回は、現在の日本における「正しい経済対策」についてです。
結論としては
・PB黒字化を放棄し、緊縮財政をやめる
・インフレ目標に達成するまで、財政赤字拡大を行う
となります。
簡単に言えば
政府は節約なんかやめて、どんどん借金してお金を使う
というのが、今の日本においての正しい経済対策ということになります。
「失われた20年(30年)」から現在まで、日本は物価や給料が上がらず、経済成長をしない世界で唯一の国になってしまいました。
原因は、もちろんデフレです。
世界でも類を見ない長期のデフレによって、日本はどんどん貧しくなっているのです。
以下は、1990年から2018年までの、インフレ率を示すコアコアCPIの推移を表したグラフです。
(1997年と2014年に上昇しているのは、消費税増税による一時的な悪いインフレです。)

デフレが続いているのがわかりますね。
1995年から2015年までの、世界各国の名目GDP成長率(経済成長率)は以下のようになります。

日本は最下位な上に、世界で唯一のマイナスであることがわかります。
世界の中で日本だけが、どんどん貧困化しているのです。
このような状況を脱却し、日本が再び経済成長をするためには
デフレから脱却し、インフレ目標を達成し継続する
ということが必要不可欠であり、全てです。
政府もインフレ率2%を目標に掲げていますしね。
(間違った政策を続けているため、当然のように一向に実現できていませんが。)
では、インフレ率2%という目標を達成するための正しい経済対策について、説明していきます。
プライマリーバランス(PB)黒字化の破棄

まず最初にやらなければならないことは
プライマリーバランス(PB)黒字化という目標の破棄
です。
プライマリーバランスとは、国の収支(国債の返済などを除く)のことです。
つまりプライマリーバランス黒字化とは
国の収支を黒字化する
ということです。
日本政府は、このプライマリーバランス黒字化を至上命題としています。
プライマリーバランス黒字化を実現しないと、日本は財政破綻してしまう。
一刻の猶予もない。
そうしないと、後々の世代に借金を押し付けてしまうことになる。
という何一つ事実ではない、意味不明な主張をしているわけですね。
またIMF(国際通貨基金)も、日本にプライマリーバランス黒字化を求めています。
しかし、当然のことながら「政府の黒字=国民の赤字」となります。

デフレ下においてのプライマリーバランスの黒字化は、国民を貧しくすることに他なりません。

・日本は財政破綻しない。
・後々の世代が借金を背負うことはない。(背負う借金が存在しない)
・プライマリーバランスを黒字化する必要などない。
これらが、当たり前の真実です。
むしろ、プライマリーバランス黒字化に向かって緊縮財政を行うことこそが、後々の世代を苦しめることになるのは目に見えています。

ちなみに、IMFにプライマリーバランス黒字化を押し付けられて、見事にプライマリーバランス黒字化を達成した国があります。
ギリシャとアルゼンチンです。
この2国がどうなったかというと、残念ながら財政破綻してしまいました。
日本とは状況が違うとはいえ、プライマリーバランスの黒字化がどれだけ馬鹿げているかわかりますね。
そもそも、プライマリーバランスの黒字化というのは、言ってみれば民間(国民)から政府にお金を流すということです。
つまりお金の量を減らすということですから、インフレを抑えるインフレ対策です。
それに対して目標であるインフレ率2%というのは、現状よりインフレを促進させなくてはなりません。
つまり、インフレ化させるデフレ対策をしなくてはなりません。
・プライマリーバランスを黒字化させる → インフレ対策
・インフレ率2%を実現させる → デフレ対策
この二つは見ての通り、完全に逆方向です。
つまりこの二つを同時に目標とすることは、矛盾しますよね。
当然、両方を同時に実現することなど不可能です。
プライマリーバランス黒字化を主張している人たちは、こんなことすらわかっていないのです。
デフレを脱却してインフレ率2%を実現するためには、「プライマリーバランス黒字化」という馬鹿げた目標を取り下げて緊縮財政をやめることが絶対必要条件です。
逆に、プライマリーバランス黒字化なんかを実現してしまった日には、それこそ日本の経済は破綻してしまいます。
インフレ目標まで財政赤字拡大

デフレの状況をインフレにしたいのですから、必要なのは「需要拡大」「供給抑制」を行うデフレ対策です。


特に需要を拡大することは重要です。
需要を拡大するためには
・政府による財政支出拡大
・減税
を行う必要があります。
(金利引き下げは、限界まで行われています。)
・政府がどんどん借金をしてお金を使って、国民の収入・資産を増やす
・税金を安くすることで、国民の資産を増やす
ということです。
つまり
政府の財政赤字の拡大
です。
当然ながら、日本政府の借金がいくら増えようと、日本政府がデフォルト(財政破綻)することなどあり得ません。
デフォルトの可能性は0です。

ですから
デフレを脱却してインフレ目標を達成するまで、財政出動・減税により財政赤字を拡大し続ければいい
ということです。
政府の借金など、どんどん増やせばいいのです。
確かに、現在でも政府の借金は1200兆円以上あり、日本国民の資産合計は2000兆円近くあります。
国民がこれだけの資産を持ちながら、インフレにならないのは
・資産が高齢者を始めとした一部の国民に集中している
・日本全体が消費マインドではない
ということが挙げられます。
結局のところ、デフレが続いているせいで将来が不安なのです。
不安だからこそ、お金を使わずひたすらに貯めこんでいるわけです。
この貯めこんでいるお金が消費に向かえば、あっという間にインフレになるでしょう。
しかし、デフレスパイラルにはまり込んでしまっている以上、そのようなマインドにはなりません。

貯蓄マインドを消費マインドに変えるためには、国民全体に「安心感」が必要です。
その安心感を作り出せるのは、政府しかありません。
苦しくなったら、国が守ってくれる
という安心感です。
この安心感があってこそ、国民は消費に積極的になれて、お金が停滞せずに流れることになるのです。
要するに、政府の1200兆円を超える借金では、国民を安心させてインフレにするには不十分ということです。
インフレにならない理由は単純で
政府の借金(財政赤字)が足りないから
です。
ちなみに、諸外国と比べて日本政府の借金が多いことを問題視する人がいますが、見当違いです。
諸外国と比べることの意味すらありません。
民族性が違うこともありますが、日本は世界で屈指の高齢化社会であることが原因です。
高齢者数が増えて労働人口が減るわけですから、収支バランスなどとれるはずもないのです。
誰かが負担するしかないのですが、負担するのは労働者世代ではなく、政府に決まっているのです。
政府は負担したところで、何の問題もありませんからね。
痛くもかゆくもないのです。
ハイパーインフレにはならない

「じゃあ一体いくらまで財政赤字を拡大すればいいんだ」
「無限にお金を増やせば、いつかハイパーインフレになるぞ」
このようなことを言う人がいます。
確かに無限にお金を増やせば、ハイパーインフレになるでしょう。
しかし、別に無限にお金を増やすわけではありません。
「いくらまで財政赤字を拡大するのか」という質問に対して、金額を答えることはできませんが、明確な基準は存在します。
それは
インフレ目標を達成するまで
です。
今の日本はインフレ目標をインフレ率2%にしていますし、インフレ率2%というのは世界的に見てもちょうどいいインフレだとされています。
ですから、インフレ目標を2%としてのであれば
インフレ率2%になるまでは、財政赤字を拡大する
とすればいいだけです。
そして
インフレ率2%を超えたら、財政赤字を縮小する
と言うようにすればいいわけです。
インフレ率によって、インフレ対策とデフレ対策を使い分ければいいのです。
要するに
インフレが過熱しそうになったら、インフレ対策を行ってインフレを抑える
デフレになりそうになったら、デフレ対策を行ってインフレに導く
この舵取りこそが、政府の役割であり国家運営です。
もちろん、インフレ率がどんどん上がっているのに、ひたすらにお金を増やしていくような暴挙を行い続ければ、いつかはハイパーインフレになります。
言ってみれば、政府が悪意を持ってハイパーインフレを起こそうとした場合に、ハイパーインフレになるということです。
逆に言えば、しかるべき対応さえすれば、ハイパーインフレになりようがないのです。
実際にハイパーインフレになったケースは
・内戦や戦争で、供給能力が極端に失われる
・独裁政権において、めちゃくちゃな経済政策が行われる
というような異常な場合がほとんどです。
まともな状況では、まず起こりません。
税金は財源ではない

政府が国債を発行することで、いくらでもお金を作れるのすから
税金を課して国民からお金を集めなくてもいいじゃないか
と思う人もいるかもしれませんね。
それはまさにその通りなのです。
一般的な常識は
国民から徴収した税金 = 国家を運営するための財源
というものでしょう。
しかし、この誰もが信じている常識は、間違っているのです。
税金は国家運営の財源ではない
というのが真実です。
政府は、いくらでも無から無限にお金を作ることができるのです。
あえて国民からお金を徴収しなくても、いくらでもお金はありますよね。
しかし、だからと言って無税国家にすることはできません。
仮に無税国家にしてしまえば、インフレを制御できなくなって、それこそハイパーインフレになってしまいます。
まず経済的に言えば、国は「政府」と「民間(国民)」に分けることができます。
この「政府」と「民間(国民)」の間で、お金をやり取りして民間のお金の量を調節することこそが、インフレ対策やデフレ対策なのです。
民間のお金の量が重要なのであって、政府の収支はどうでもいいのです。
政府の収支はどうでもよく、政府は民間のお金の量を調節するために存在するといっても良いくらいです。
〇 民間のお金の量を調節
× 政府の収支を調節
ここを間違えるから、プライマリーバランス黒字化というようなバカげた害悪でしかない目標になってしまうのです。

政府が民間のお金の量を調節するためには
・政府が、民間のお金の量を増やす方法
・政府が、民間のお金の量を減らす方法
の二つが必要ですよね。
政府が民間のお金の量を増やす方法としては、公共事業などを増やしたり減税をしたりすることになります。
逆に政府が民間のお金の量を減らす方法としては、公共事業を減らしたり増税をしたりすることになります。
インフレが過熱してしまった場合から見ていきましょう。

インフレが過熱してしまった場合は、政府は
・公共事業などを減らす
・増税をする
という対策によって、民間からお金を吸い上げます。
それによって民間のお金の量は減りますね。
インフレ対策です。
次にデフレの場合です。

デフレになってしまった場合には
・公共事業などを増やす
・増税をする
という対策によって、民間にお金を供給します。
それによって、民間のお金の量は増えますね。
デフレ対策です。
このようにインフレやデフレといった状況に合わせて、政府は民間のお金の量を調節していきます。
インフレ率に応じて、対策を調整するわけです。
では税金を無くしてしまったら、どうなってしまうでしょうか。
政府が民間から、お金を吸い上げる方法がなくなってしまいます。
インフレが過熱したときに、公共事業削減などで民間へのお金の供給を減らすことはできても、実際にお金を民間から吸い上げるのは税金にしかできません。
そうなると、インフレを抑えることができません。
するとインフレ率はどんどん上がって、ハイパーインフレになってしまう可能性がありますよね。
要するに税金は、民間からお金を吸い上げる唯一の手段であり、増税や減税をすることで民間のお金の量を調節するものなのです。
つまり
税金はインフレ率の調整装置
なのです。
税金は、決して国家運営のための財源ではありません。
政府は、国債発行でいくらでも資金調達できますからね。
財源確保のために増税しなくてはならない!!
というよく言われることは、間違っていることがわかりますね。
残念なことに、多くの政治家や経済学者なども、税金の役割を理解していないのです。
まとめ

・PB黒字化目標と緊縮財政を即刻破棄しなくてはならない
・インフレ目標達成までは、財政赤字を拡大する必要がある
・ハイパーインフレは、適切な対応をとれば起こり得ない
・税金は財源ではなく、インフレ率調整装置
子どもや孫やその先の未来の世代のために行うべきことは、緊縮財政などではありません。
それは、むしろ未来の世代を苦しめることになります。
私たちが未来の世代に対して行うべきことは、正しい経済対策によってデフレを脱却し、成長を取り戻すことです。
そしてそのためには、大人が正しい知識を身につけ、正しい対策をしていく必要があります。
間違った常識にしがみついている場合ではありません。
一刻も争うのは、政府のPB黒字化などではなく、デフレ脱却なのです。
政治家を選んでいるのは、私たち国民です。
緊縮財政やPB黒字化を推進している政治家たちは、日本を壊そうとしているか、何もわかっていないバカです。
そのような政治家を選んではいけません。
多くの国民が、経済に対して正しい知識を得れば、日本経済は復活して成長するようになります。
未来の世代に良い社会をつなげていくために、学び続けましょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。