今回は、「睡眠不足による集中力の低下」についてです。
結論としては
・慢性的な睡眠不足は、集中力を低下させ続ける
・自分では、能力の低下に気づくことが出来ない
となります。
睡眠不足になると、あらゆる脳の機能が低下してしまいますが、その中でも真っ先に低下するのが「集中力」です。
仕事が忙しい時やテストの前などに
・睡眠時間を削る
・徹夜をする
ということをした経験がある人は、少なくないと思います。
そして、そのように大幅に睡眠時間を削ることによって、集中力が低下してしまうことは経験的にも想像できますよね。
しかし、そのように一度に睡眠時間を大幅に削るのではなく、慢性的な睡眠不足によっても集中力が大幅に低下してしまうことを実感している人は少ないのではないでしょうか。
実は
日頃からの慢性的な睡眠不足によっても、集中力は低下し続ける
ということがわかっています。
いつもよりも睡眠時間を削ったり徹夜をしなくても、毎日6時間睡眠などをしていると、集中力は低下し続けてしまうのです。
それでは、睡眠不足と集中力の低下について、説明していきます。
慢性的な睡眠不足による集中力の低下

睡眠不足によって、集中力がどの程度低下するのかを調べた実験を紹介します。
実験の内容は以下の通りです。
<内容>
ランダムに光が点灯し、それに対応するボタンを押す。
<グループ分け>
① 72時間起きている。
② 毎日4時間ずつ睡眠をとる。
③ 毎日6時間ずつ睡眠をとる。
④ 毎日8時間ずつ睡眠をとる。
全員に8時間睡眠をとってもらった後、この実験はスタートし、②~④に関しては15日間継続する。
①と④が基準となりますね。
②と③が①と④に対して、どの程度のパフォーマンスを示すかによって、慢性的な睡眠不足による集中力の低下の程度がわかるということです。
結果は以下のようになりました。
8時間睡眠の④のグループの結果です。
④のグループは、ほぼ完璧なパフォーマンスを見せた。
これは予想通りですね。
睡眠をとらない①のグループの結果です。
①のグループは、24時間起きている時点で、④に比べてミスが400%多かった。
起きている時間が48時間・72時間と伸びても、ミスが増えるペースは変わらず増え続け、頭打ちになる気配はなかった。
起きている時間の長さに比例して、集中力が低下し続けるということです。
これも予想の範囲内ではありますね。
次に、慢性的な睡眠不足の②と③の結果です。
②の4時間睡眠のグループ
6日後・・・24時間起きていた人と同程度のパフォーマンス
11日後・・・48時間起きていた人と同程度のパフォーマンス
③6時間睡眠のグループ
10日後・・・24時間起きていた人と同程度のパフォーマンス
かなり驚愕的な結果ですよね。
10日間6時間睡眠を続けると、丸一日起きている徹夜の状態と変わらないレベルの集中力しかなくなってしまうのです。
6時間睡眠というのは、日本人であれば、かなり多くの人の日常的睡眠時間と言えます。
また4時間睡眠も、社会人であれば忙しい時などであれば、ありえるでしょう。
それを11日間続けたら、丸二日寝ていない状態と同じになってしまうのです。
丸二日寝ていない状態は、フラフラで頭が回らないのが想像できますよね。
さらに驚くべき事実があります。
それは
15日目まで継続した結果、②と③も①と同様に、パフォーマンスの低下は頭打ちになる気配はなかった
ということです。
日数を重ねるのに比例して、集中力は下がり続けるということです。
仮に毎日6時間睡眠だとすると、能力値はひたすらに下がり続けてしまうわけです。
恐ろしいですね。
少し寝ないだけで酔っているのと同じ

もう一つ実験を紹介します。
実験の目的は以下の通りです。
<目的>
血中アルコール濃度0.08%の人と同程度の集中力になるのは、何時間くらい起きていた時か
血中アルコール濃度0.08%というのは、アメリカの法定アルコール濃度です。
ちなみに、日本の酒気帯び運転に該当する血中アルコール濃度は、0.03%です。
そう考えると、0.08%は結構アルコールが入っている状態ですよね。
結果は以下の通りです。
血中アルコール濃度0.08%の人の集中力レベル
=19時間程度、連続で起きていた人の集中力レベル
わずか19時間です。
朝6時に起きたとしたら、19時間後は深夜の1時です。
朝6時に起きて、深夜1時に車を運転して帰宅することは、十分あり得ますよね。
しかし、その行為は飲酒運転と同様のことなのです。
ちなみに集中力の低下は、15時間起きていたくらいから急激に始まるそうです。
6時に起きたとしたら、21時からですね。
このような事実を突きつけられると、夜運転するのは非常にリスクの高い行為だということがわかりますね。
飲酒運転と同じなわけですから、許されるべきではないレベルのことだということになります。
失った睡眠は取り戻せない

さらに、睡眠不足の厄介なこととして
失った睡眠を取り戻すことはできない
ということがあります。
6時間睡眠など慢性的な睡眠不足を続けた後、寝たいだけ寝る生活を3日間続けても、8時間睡眠を維持した時の能力レベルまで戻ることはなかったそうです。
つまり、平日の睡眠不足を週末にたくさん寝て解消したり、寝だめするような方法では能力レベルを元に戻すことはできないということです。
そのような方法では、仕事や勉強の生産性は右肩下がりになってしまいかねないのです。
毎日の安定した睡眠時間の確保が、何よりも重要です。
自分の能力低下に気づけない

さらに大きな問題があります。
それは
誰も、自分の能力低下を自覚することが出来ない
ということです。
慢性的な睡眠不足により、能力レベルは確実に低下しています。
しかし研究の結果では、自分の低下レベルを適切に評価できた人は、誰一人いなかったそうです。
全員が自分の能力低下レベルを、過小評価するのです。
自分の能力を過大評価するとも言えます。
これは、慢性的な睡眠不足によって徐々に能力の低下が起こるため、基準点がリセットされ続けてしまうためです。
つまり、低下した能力レベルが基準になってしまう、ということがひたすらに更新され続けてしまうのです。
俺は寝なくても全然大丈夫だから!!
と言っている人がよくいますが、実際には全く大丈夫ではありません。
自分を過信しすぎです。
ただ単に、自分では気づいていないだけなのです。
まとめ

・6時間睡眠などの慢性的な睡眠不足は、集中力を低下させ続ける
・少し寝るのが遅くなるだけで、酔っているのと同レベルになってしまう
・失った睡眠は取り戻すことが出来ない
・誰も、睡眠不足による自分の能力の低下に気づくことが出来ない
6時間睡眠でも、どんどん集中力は奪われていくのです。
日本を含めた先進国の平均睡眠時間は、7時間を切ってしまっています。
私たちは、知らず知らずのうちに、自分の能力を低下させ続けているわけです。
しかし逆に言えば、毎日しっかり睡眠をとることによって、これまでの自分よりも高いパフォーマンスを発揮できるということです。
また、睡眠不足の人の本来の能力は、今現在の能力よりもはるかに高いとも言えるのです。
そのように考えると朗報ですよね。
毎日8時間睡眠をとるだけで、能力がアップするわけですから。
良く寝ることは健康にも良いですし、こんなに良い自己投資は他にはないかもしれません。
しっかり寝ましょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。