今回は、葛藤していたり迷っていたりする子供に対して親がとるべき行動についてです。
結論としては
親は可能な限り、子どもが自分で気持ちを整えるまで待った方が良い
です。
子供の成長のために、親などの大人が最も意識しなくてはならないことの一つに、「待つこと」があります。
多くの親は、この「待つ」ということをほとんどできていないように思えます。
親が待つということは、子どもに時間を与えるということです。
例えば何かを覚悟したり決心したりするには、大人でも時間を要する場合は多々ありますよね。
理性を司る前頭前皮質がまだ発達していない子供が、考えて物事を決めて行動するには、時間が必要なのは言うまでもありません。
脳の前頭葉の前の方に存在する前頭前皮質は、合理性・論理性・意思決定を司る脳の前方にある領域です。
脳の発達は後方から前方に向かって進み、前頭前皮質が成熟し終わるのは20歳代と言われています。

それなのに、多くの親は自分基準で考えてしまい、子どもを待って時間を与えることをしていないのです。
このことは、歯科医師として子どもの歯科治療を行う際にも頻繁に感じます。
それでは、子どもを待つことの重要さについて説明していきます。
理由を説明する

誰かに何かをやらせたいとき・やってもらいたいときには、その理由を説明する必要があります。
理由の説明は、誰もが当たり前のように行っていることですよね。
しかし相手が子どもになると、大人は急にこの説明をおざなりにしてしまいます。
(大人同士でも、ちゃんと説明しなかったり出来なかったりする人も多いですが。)
「なんで?」「どうして?」と聞く子どもに対して
「いいから、言われた通りにしなさい!!」
「いいから、早くやりなさい!!」
などと言ってしまうのです。
いったい何が「いいから」なのでしょうか。
良くないからこそ、子どもは理由を聞いているのです。
全くもって質問に答えていません。
このように「いいから」という答えをする理由として
・どうせ子どもには理解できない
・子どもには理解する必要がない
・めんどくさい
と言うように考えていると思われます。
「理解する必要がない」「めんどくさい」というのは論外なのは言うまでもありませんが、「子どもには理解できない」というのも大きな間違いです。
年齢にもよりますが、子どもは大人が思っている以上に理解できています。
そして何よりも、大人が向き合って話をすれば、子どもは理解しようとしてくれます。
このことは、子どもの歯科治療をする際にも非常に強く感じることです。
例えば、子どもが虫歯になってしまい虫歯治療が必要になったとします。
このようなとき、まずは
「なんで虫歯になってしまったと思いますか?」
「虫歯を放っておくと、どうなってしまうと思いますか?」
「虫歯をどうしたらいいと思いますか?」
というように、質問形式で説明をしていきます。
一方的に説明するよりも、質問形式にする方が自分の頭で考える機会を作れるので、良いと感じます。
説明する内容は、基本的には大人に対してと同じです。(単語はわかりやすいものを選択しますが。)
そうすると、ほとんどの場合はしっかりと考えて答えてくれますし、説明も真剣に聞いてくれて理解してくれます。
そして理解することで治療に対して前向きになってくれます。
子どもも大人と同じように、自分が理解できないことに対して前向きにはなれませんが、理解できれば前向きになりやすくなります。
当たり前のことですよね。
大人は自分は理解できないことに対して不安を訴えるくせに、子どもにはそれをさせない傾向があるのです。
子どもの決心を待つ

理解ができるように説明することは必須ですが、理解してもらうことがゴールではありません。
理解をしても、「やりたくない」という感情が合った場合、それが消えてくれるわけではありません。
大人だって同じですよね。
そのような時は、嫌な理由をしっかり聞いてあげるべきです。
理由を聞くことによって、子どもは
・自分の感情と向き合って、考える。
・自分の感情や考えを、言語化することを試みる。
というチャンスを得ることができます。
その上で、それでも例えば虫歯の治療をした方が良い理由を説明します。
こうなると子どもは
わかっちゃいるけど、なかなか決心がつかない
という状態です。
自分の心の中で葛藤しているわけですね。
この状態の子どもに対して最悪なのが
「いいから、さっさとやるよ!!」
というような大人の言葉です。
「いいから」という何一つ理由になっていないことを押し付けるだけでなく、子ども自身が考えて葛藤して乗り越えようとしているのを邪魔しているのです。
子どもが葛藤しているのは
自分をコントロールすることを試みている貴重な時間
です。
自分の頭で考えて、考えたことと感情の折り合いを付けようとしているのです。
自分をコントロールできたとしても、できなかったとしても、成長の糧になる貴重な経験です。
そのような時間を親などの大人が奪うのは、害でしかありません。
親を含めた大人がやるべきことは
子どもに繰り返しチャンスを与えて、ひたすら待つ
ということです。
大人は、「いいからさっさとやる」というのが自分の都合を押し付けているだけであって、子どものことを考えているわけではないことに気づかなくてはなりません。
はっきり言って、とんでもなく失礼ですよね。
大人同士でそんなふうに押し付けたら、信用問題です。
まとめ

・多くの親などの大人は、子どもに時間を与えて待つことをできていない
・説明すれば、子どもはしっかりと理解できる
・子どもが葛藤している時間は成長の貴重な時間
・親などの大人は、可能な限り子どもに時間を与えて待つべき
もちろん、どうしても待つことができない場合も、生活の中には存在します。
全ての場合において「とにかく待つ」ということが不可能なのは間違いありませんよね。
しかしそれでも、可能な限り子どもに時間を与えるのが、親などの大人の役割のはずです。
大人は子どもの成長を阻害するのではなく、成長の手助けをしなくてはなりません。
手助けというのは、何でもやってあげるようなことではなく、チャンスを与えて見守ることが最重要です。
子どもは、失敗をしたり間違ったりしながら一歩ずつ成長していきます。
失敗や間違いを許容して、再挑戦できるようにしてあげることが親の役割だと思うのです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。