6.銀行が貸し付ける原資

銀行が貸し付ける原資

今回は、銀行がお金を貸し付ける時の原資についてです。

 

結論としては

・銀行が貸し出す原資は、預金ではない

・銀行は、信用創造によって無から貸し出す

・銀行が貸し出す制約は、借り手の返済能力と準備預金制度

となります。

 

信用創造について、まだわかっていない人は、こちらの記事から読んでみてください。

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一般的に信じられている常識として

銀行は個人が預金したお金を元手に企業などに貸し出して、その金利差を利益としている

というものがあります。

 

銀行が企業などに貸し付けているお金の元手は、私たちが預金として預けたお金ということです。

しかし、この常識は完全に間違っています。

信用創造を理解している人であれば、間違っていることが分かるのではないでしょうか。

 

では、この常識の何が間違っていて本当の銀行の原資は何なのか、そして銀行がお金を貸し付けることに対する制約は何なのかについて説明していきます。

 

銀行が貸し付ける原資は預金ではない

 

一般的に、常識とされている銀行の預金や貸し出しの流れは、以下のようになります。

銀行の貸し出しの常識 図

①私たち個人が、貯蓄などのために銀行に預金する。(銀行にお金を貸す)

②銀行は個人による預金で集まった資金を原資にして、企業などに貸し出す。

③企業に貸したお金から得られる利息を、銀行は得ることが出来る。

④銀行は預金している個人に対して、利息を支払う。

 

その結果として、③と④の差額が銀行の利益になる。

 

このような流れを、テレビや本などでも説明していますね。

教科書のような本でも、このような説明がされています。

 

しかし信用創造を理解していれば、この流れが明らかに間違っていることがわかります。

どこか間違っているか、わかりますか?

 

②のところですよね。

信用創造によって、銀行は無からお金を貸し付け、お金を生み出すことができます。

無から貸し付けるわけですから、当然ながら元手は必要ありません。

つまり銀行は、個人などから集めた預金を貸し出しているわけではないのです。

 

これだけ明らかな間違いが、当たり前の常識かのように、堂々と教えられているのです。

 

信用創造による貸し付け

では、銀行が企業などに対して融資(貸し付け)をする場合、どのようなお金の流れになるのかを見てみましょう。

 

例として、「A社」が設備投資のために銀行から1億円借りるとします。

当然ながら、銀行はA社に1億円の札束を渡すわけではありませんよね。

 

銀行とA社の間で行われているお金のやり取りは

銀行は「A社」の預金口座に、1億円を記帳する

これだけです。

銀行からA社が1億円借りる図

 

銀行がお金を貸す際に、現金は登場しません。

ただ単に1億円分のデジタルの数字が、通帳に足されるだけです。

無から1億円を作っているのです。

個人などが預金したお金は、どこにも登場していませんよね。

 

つまり

銀行がお金を貸す原資は、個人などから集めた預金などではない

ということですね。

 

信用創造の制約

このように銀行が貸し出しをするときには、預金者からどれだけ預金を集めたかなどの、資金量という制約は存在しません。

信用創造と言う無からお金を作って貸し出しをできる機能があるので、大げさに言えばいくらでも貸し出しができます。

 

ただし銀行がお金を貸し出す際に、全く制約がないわけではなく、2つの制約があります。

・借り手の返済能力

・準備預金制度

の2つです。

 

借り手の返済能力は、当たり前ですね。

返せないと思われる人には、さすがにお金を貸せませんよね。

 

もうひとつの制約である準備預金制度について、説明していきます。

 

準備預金制度とは

準備預金制度とは

銀行が受け入れている預金の一定割合以上の金額を日本銀行に預け入れること

を義務付ける制度のことを言います。

 

銀行は日銀に当座預金口座を持っていて、銀行が日本銀行に預け入れるお金のことを「準備預金」と言い、一定割合のことを「準備率」と言います。

 

わかりにくいと思いますので、かみ砕いて説明します。

まず「預金」には、私たち個人が銀行に預けているもの以外に、もう一つありますね。

ここまで見てきたように、銀行が貸し出したお金も預金になります。

銀行が貸し出したお金は預金になる

銀行がA社に1億円を貸すと、A社の口座には1億円が入ります。

つまりA社の銀行への預金が、1億円足されたということですね。

私たち個人が銀行に預けている預金と違うのは、銀行に対して返済が必要かどうかだけです。

 

つまり「銀行が受け入れている預金」とは

・個人などが銀行に預けた預金

・銀行が企業などに、お金を貸し出すことで作られる預金

を足したもののことになります。

 

そして一定割合である準備率ですが、これは日本銀行が変動させることが出来ます。

変動させることによって、世の中のお金の量を調節します。

 

まだわかりにくいと思いますので、例を考えてみましょう。

以下の条件とします。

個人などが銀行に預けた預金       20億円

銀行が企業などに貸し出して作られた預金 80億円

準備率                 10%

この場合、銀行が準備預金として日銀に預けなくてはならない金額は

(20億円+80億円)×10% = 10億円

となります。

仮に銀行が現金で20億円保有していたとしたら、そのうち10億円を日銀に預け入れても手元に10億円残ります。

 

ここから、さらに企業に100億円貸し出したとします。

すると条件は以下のようになります。

個人などが銀行に預けた預金       20億円

銀行が企業などに貸し出して作られた預金 180億円

準備率                 10%

この場合、銀行が準備預金として日銀に預けなくてはならない金額は

(20億円+180億円)×10% = 20億円

となります。

日銀に20億円預け入れると、銀行の手元には現金が残りません。

これ以上は日銀に預け入れられませんね。

つまり、これ以上企業などにお金を貸すことで、預金を増やすことが出来ないということです。

 

準備預金制度によるインフレ率の調整

このように準備預金制度は、信用創造によって銀行がお金を貸し出してお金を作る制約になります。

そして、日銀は準備率を上下させることで、銀行がお金を生み出す量を調整しているわけです。

つまり、世の中のお金の量を調節しているということです。

 

準備率を上げる

準備率を上げると、銀行は信用創造で作れるお金の量は減ります。

貸し出せる量が減りますからね。

つまり準備率を上げることは、世の中のお金の量を減らすことです。

インフレを抑えたいときに行う「インフレ対策」です。

 

準備率を下げる

準備率を下げると、銀行は信用創造で作れるお金の量は増えます。

貸し出せる量が増えますからね。

つまり準備率を下げるということは、世の中のお金の量を増やすことです。

デフレを脱却したいときに行う「デフレ対策」です。

日銀は、準備率を変動することでお金の量を調節し、インフレ率の調整を行っているのです。

 

また、銀行において大量の現金の引き出しがあって銀行の資金量が足りない場合などは、この準備預金から引き出して支払います。

準備預金制度には、銀行が破綻することを防ぐ役割もあるわけです。

 

マイナス金利

少し余談になりますが、マイナス金利について触れておきます。

 

銀行が、準備預金の最低限度額を超えて日銀に預けている預金を「超過準備」といいます。

最低限度額とは、準備率の金額のことになります。

準備預金は本来無利子ですが、この超過準備にマイナス金利をつけることを「マイナス金利政策」と言います。

ニュースなどで、一度は「マイナス金利政策」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

金利がマイナスですから、日銀当座預金口座に預けている銀行のお金の利子分を日銀に取られてしまうということです。

これは

取られたくないなら、もっと貸し出せよ!!

ということです。

貸し出しを増やして預金合計額を増やせば、準備預金の最低限度額が上がり、超過準備が減りますからね。

世の中にお金の量を増やそうとするデフレ対策です。

 

まとめ

・銀行が貸し付ける原資は、人々が預けた預金ではない

・信用創造によって、銀行は無から貸し付けることができる

・信用創造の制約は、借り手の返済能力と準備預金制度

銀行の原資が預金ではなく、信用創造で貸し付けている以上、銀行の資金が枯渇して貸し出せなくなるということは起こり得ません。

しかし

銀行は個人が預金したお金を元手に企業などに貸し出して、その金利差を利益としている

というような完全に間違った常識が蔓延っているせいで、正しい理解をしていない人が多いのです。

 

準備預金制度に関しては、ちょっと難しいかと思いますが、完全に理解していなくても大丈夫です。

「そういう制約があるんだな」

くらいで問題ありません。

 

次からは、国の借金である国債と信用創造についてなどを説明していきます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。