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知れば暴落は怖くない【平均回帰性】

知れば暴落は怖くない【平均回帰性】

今回は、「平均回帰性」についてです。

 

結論としては

・投資期間を長期にするほど、リターンは平均に収束していく

・平均回帰性から見れば、暴落はチャンスでしかない

となります。

 

「平均回帰性」という言葉は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、そんなに難しいことではありません。

平均回帰性とは

短期的には確率に偏りがあっても、長期的には平均に近づいていく

という性質のことです。

 

例えば、コイントスで考えてみましょう。

コインを1回投げると、表か裏が出る確率は1/2ずつ、つまり50%ずつです。

しかし、コインを10回ずつ投げた場合には表と裏が5回ずつ出るとは限りません。

表0 裏10

表1 裏9

表2 裏8

表9 裏1

表10 裏0

とその時の運によって、かなりばらつきが出ます。

さらに言えば、コインを2回だけ投げた場合は表が2回や裏が2回だとしても、何の不思議もありませんよね。

ちなみに余談ですが、表と裏が5回ずつ出る確率は

252 / 1024 = 24.6%

となります。

 

それに対して、仮に1万回コインを投げたら、結果は5000回ずつに近づいていきます。

10万回、100万回と投げる回数を増やせば増やすほど、50%ずつの結果に限りなく近づいていきます。

 

このように確率というのは、少ない試行回数だと偏りが出ますが、試行回数を増やすほど平均に近づいていきます。

このような性質を平均回帰性と言います。

平均の確率に、戻っていく(回帰する)ということですね。

 

そして平均回帰性は、投資のリターンについても成り立つことが分かっています。

そのため、長期投資をする上で平均回帰性について理解しているかどうかは、天と地の差があります。

平均回帰性を理解しておけば、長期投資を成功させられる可能性が圧倒的に高くなるわけです。

 

それでは、投資における平均回帰性について説明していきます。

 

投資における平均回帰性

平均回帰性は、株式や債券などへの投資のリターンについても成り立つことが分かっています。

 

具体的には

単年や短期間ではリターンの振れ幅は大きくなるが、長期になるにつれて平均のリターンに収束していく

ということです。

 

言ってみれば、1年に1回サイコロをふるようなイメージです。

毎年サイコロの目はバラバラですが、長期間毎年サイコロをふっていれば、平均はだんだんと3.5に近づいていきますよね。

投資のリターンも、それと同じようなことが起こります。

毎年のリターンが、1年に1回ふるサイコロの目と同じようなものです。

 

では、S&P500を例にして具体的に見ていきましょう。

S&P500の過去20年間のリターンは以下のようになります。

S&P500の過去20年のリターン

S&P500のインフレ調整後の平均リターンは、年率6~7%ほどになります。

グラフの黒横線のところが、それにあたります。

 

ご覧の通り、単年で黒横線の6~7%あたりのリターンはありませんよね。

+30%くらいの年もあれば、ー40%近い年もあります。

2008年の大きなマイナスは、リーマンショックですね。

期間をもっと伸ばせば、さらにプラスが大きい年もマイナスが大きい年も存在します。

 

つまり

単年で見ると、リターンの振れ幅は非常に大きく、平均とは乖離する

ということです。

 

次に、過去200年における期間別のリターンの振れ幅を見てみましょう。

株式・債券の値動き幅

このグラフの見方ですが、例えば5年の振れ幅は過去200年のうちの連続する5年間を切り取ったときの5年間のリターンの振れ幅を表しています。

5年の平均リターンは、年率+30%から-10%程度だったということです。

単年では、+50%強から-40%弱という振れ幅があるのに対して、5年・10年・15年・20年・25年と期間を伸ばしていくにつれて振れ幅が小さくなっていくのがわかりますね。

そして長期間になればなるほど、年率6~7%のリターンに近づいています。

 

このように、投資におけるリターンに関しても期間を長くするほど、平均回帰性が成り立つのです。

 

また、もう一つ注目してもらいたいポイントがあります。

それは株式のリターンにおいて

15年以上の投資期間においては、マイナスが無くなる

ということです。

さらに20年・25年と期間を伸ばしていくと、振れ幅が小さくなるだけでなく、最低のリターンが高くなっています。

25年で言えば、過去200年の中の最低のリターンの25年間でも、年率+4~5%程度はあるということです。

 

この事実が

長期投資は15年以上続けることが重要

と言われる所以なのです。

 

そして、「長期投資前提であれば、債券よりも株式」と言われるのも、このグラフからわかりますね。

長期になればなるほど、リターンの最高値も最低値も株式が債券を上回ります。

つまり

長期投資においては、株式は債券よりもローリスク・ハイリターン

ということになります。

 

もちろん、このデータは過去のデータですから未来を保証するものではありません。

しかし、このような過去を分析することによって未来の指標になるのも事実ですね。

 

暴落はチャンス

このように長期になればなるほどリターンは平均に収束していく平均回帰性を理解することで、「〇〇ショック」などの暴落時の感情のコントロールをしやすくなります。

S&P500などの優良な指数は、これまでの歴史において何度も「〇〇ショック」などの暴落を経験しましたが、そのたびに復活をしてきています。

そして15年間や20年間以上という長期間で見れば、6~7%という平均リターンに収束してきました。

 

言い方を変えれば

大きなマイナスがあれば、その後は平均に収束するために大きなプラスが期待できる

ということです。

つまりは、暴落はチャンスだということです。

 

そして逆も然りです。

株価が暴騰してイケイケ相場の後は、平均に収束するためにリターンが小さくなったりマイナスになることが考えられます。

 

つまり平均回帰性を理解することで

・暴落時などに冷静になれて、チャンスと考えられる

・暴騰時などに調子に乗らず、慎重に判断できる

となりますね。

 

つまり長期的な資産形成と平均回帰性という性質は、非常に相性が良いのです。

重要なことは、暴落などの短期的な損失に慌てて狼狽売りなどをしないことです。

しっかり長期的に保有しておけば、S&P500であれば年率6~7%相当のリターンを得られる可能性が非常に高いわけです。

 

まとめ

・平均回帰性とは「短期的に偏りがあっても長期的には平均に近づく」こと。

・株式投資などにおいても、平均回帰性は成り立つ。

・短期的にはリターンの振れ幅は、平均とは乖離して大きくなる。

・長期的に見れば、投資リターンは平均に収束する。

・平均回帰性から考えると、暴落はチャンスと捉えられる。

・長期投資は、平均回帰性と相性がいい。

 

資産形成の王道である「長期積み立て投資」において

長期的に淡々と積み立てることが重要

だということはどこでも言われていることですよね。

平均回帰性を理解したからと言って、この結論に変化もありませんし、何か別のことが付加されるわけでもありません。

 

しかし、長期投資を継続できない理由は、ほとんどの場合がメンタルです。

暴落時などに不安になってしまって、積み立てをやめてしまったり売ってしまったりすることが失敗の原因です。

 

それに対して平均回帰性を理解しておけば、メンタルの安定に役立ちます。

暴落時にはチャンスだと捉えられて、イケイケ相場のときには慎重になれる可能性が高くなります。

要するに、平均回帰性への理解は長期投資を継続するための「精神安定剤」のようなものです。

 

不安になったときには、この平均回帰性を思い出してみてください。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。