今回は、「先進医療」についてです。
結論としては
・先進医療は、保険治療を超える高度な医療ではない
・先進医療は、保険治療の二軍
・ほとんどの場合において、先進医療は金額に見合わない
となります。
先進医療と言えば、「先進医療特約」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
メインの医療保険商品などに付加するオプションとして、よく登場しますよね。
先進医療に対して
保険診療では行うことができない先進的でレベルが高い医療で高額
という認識を持っている人が多いようですが、先進医療とはそのようなものではありません。
保険がきかないため費用が高額になるのは間違いありませんが、「先進医療=レベルの高い医療」という認識は完全に間違いです。
それでは、先進医療とはどんなものなのか説明していきます。
先進医療とは

先進医療とは、法律によって
厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養
と定められています。
なぜ公的な文書はこんなにもわかりにくいんですかね・・・
わざとわからないようにしているとしか思えません・・・
これをもう少しわかりやすく言うと、先進医療とは
ある程度の効果と安全性は認められているが、保険診療の一つとして認めるかどうかは、まだ検証が必要なもの
ということになります。
多くの人が
・先進医療は保険治療よりレベルの高い先進的な医療
・先進医療の方が保険治療よりも上
と言うように勘違いをしていますが、そうではないのです。
言ってみれば先進医療は
保険診療になることを目指している保険治療の候補生
ということです。

こんな感じですね。
つまり
保険診療:高い有効性と安全性が認められている
先進医療:ある程度の有効性と安全性が認められている
ということになります。
明確に保険診療が上で、先進医療が下という、上下関係が成り立ちます。
逆に捉えている人が多いですが、保険診療の方が先進医療よりも優秀だということです。
先進医療の中で、しっかりと認められたらはじめて保険診療にいれてもらえるというわけです。
これは、先進医療がダメな医療技術というわけではありません。
先進医療の中でも、検証によって高い有効性と安全性が認められたものは保険診療に適用されます。(適用されずに落とされるものもありますが。)
要するに、保険診療自体が選ばれた優秀な医療技術だということなのです。
保険診療はレベルの低い医療だと思っている人もいますが、そうではないということですね。
先進医療の罠

ではなぜ多くの人が、先進医療が「保険診療を超えたレベルの高い医療」と勘違いしてしまう先進医療の罠にはまってしまうのでしょうか。
その理由として
・名前によるミスリード
・生命保険会社の営業トーク
・因果関係の逆転
があります。
名前によるミスリード
まず名前によるミスリードですが、「先進医療」という名前が良くないですよね。
この名前を見たら、レベルの高い医療だと思ってしまいますよね。
ちょっと悪意すら感じます。
先進医療に限りませんが、名前やイメージで決めつけずに、中身をしっかり精査してください。
生命保険会社の営業トーク
次に、生命保険などの「先進医療特約」です。
保険の営業マンは、先進医療があたかもレベルが高い医療で、先進医療特約に入らないとまともな治療を受けれないような営業トークをしてきます。
保険の営業の人たちも仕事ですから、保険や特約に入ってもらうためにあの手この手を使います。
彼らはほとんどが歩合制ですから、できるだけたくさんの保険に加入させたいわけです。
彼らの目的は皆さんの健康ではなく、皆さんの支払う保険料だということを忘れないでください。
因果関係の逆転
3つ目の理由は、因果関係の逆転です。
先進医療の話に限らず、因果関係を逆転して考えてしまうことはよくあります。
先進医療は保険がきかないため、高額になります。
この高額だということが、レベルが高くて効果がある医療と錯覚させてしまうのです。
本来の基本的な原則としては
良いものは、値段が高い
ということです。
しかし、人は因果関係を逆にしてしまいがちで
値段が高いから、良いものなはずだ
と思い込んでしまうわけです。
しかし当然ながら、これは成り立ちません。
〇 良いもの → 値段が高い
× 値段が高い → 良いもの
ということです。
例えば
「高級な財布を使っていれば、お金が寄ってくる。実際に高級な財布を使っている人は、お金を持っている人が多い」
というようなやつです。
これ、完全に逆ですよね。
「お金を持っているから、高級な財布を使っている。」
というだけの話です。
高級品を売りつける時の常とう文句ですから、騙されちゃだめですよ。
先進医療について言えば、値段が高いのは「まだ保険診療として認められていないから」という理由です。
決して良いものだから高額なのではありません。
因果関係を逆転して考えてしまうことは、あらゆる場合で危険です。
注意してください。
先進医療は有効か

厚生労働省が、ある程度の有効性と安全性を認めたものが先進医療ですから、ある程度の効果は期待してもいいかもしれません。
しかし、保険診療と比べて、有効性が高いと考えられているわけではないことを忘れてはいけません。
ある調査において、がん患者に対して
・保険診療のみで治療
・保険診療と先進医療を併せて治療
・先進医療のみで治療
の予後を比べたところ、「保険診療のみで治療」した患者が最も予後が良かったそうです。
当たり前と言えば当たり前の結果です。
ただし様々な要因がありますから、これだけで断定することは危険ですので、参考の一つにしてください。
まとめ

・先進医療は、保険診療になれるかどうかの候補生。
・まだ保険診療に認められていないので、高額。
・先進医療よりも保険診療の方が、有効性は確立されている。
先進医療を活用するかどうかは、最終的には各々の判断ですが、正しい知識を持ったうえで判断してください。
そして忘れてはいけないのが、保険診療だろうが先進医療だろうが、医療は万能ではないということです。
基本的に自分の身体を治すのは、自分自身の自己治癒力です。
医療は、少しだけその手助けをできる程度でしかありません。
医療を過信しすぎてはいけません。
自分の健康を守れるのは、自分自身の生活習慣だということを忘れないでください。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。