今回は、インデックス投資の出口戦略についてです。
このブログでお勧めしている「長期インデックス投資」によって、資産形成し終えた後の話ですね。
結論としては
形成した資産の4%ずつ使うことで、資産は枯渇しない可能性が高い
となります。
さらに言えば、枯渇しないどころか、中央値ベースでは30年後も資産は増えているという研究結果があります。
長期的にインデックス投資を続けて、資産形成に成功し老後資金にするとしても、果たしてどの位ずつ使っていいのかわからない人も多いのではないでしょうか。
仮に1億円の預金を作れたとしても、毎年1000万円ずつ使ってしまったら10年で枯渇してしまいますよね。
かといって、資産が無くなってしまうのを恐れて使わなければ、貯めた意味がありません。
ですから
死ぬまで資産を枯渇させないためには、どの位使っても良いのか
ということについては、資産形成の出口戦略として非常に重要になります。
この疑問に対して、一つの答えを明確に出したのが「トリニティ・スタディ」という研究です。
トリニティ・スタディによって、「資産の4%ずつ取り崩していけば、資産は高確率で枯渇しない」という「4%ルール」が証明されたのです。
ただし、これには条件があります。
それは
資産取り崩し期間にも、運用は続ける
というものです。
貯めた資産を預金しておいて、そこから取り崩すのではなく、資産運用を継続しながら取り崩すということです。
新たに投資にお金はまわさないものの、取り崩す金額以外はそのまま運用を続けるわけです。
長期インデックス投資家にとっては、非常に相性の良い出口戦略とも言えます。
それでは、トリニティ・スタディや4%ルールについて説明していきます。
トリニティ・スタディ

トリニティ・スタディとは
1998年にアメリカのトリニティ大学の教授3人が発表
1926~1995年の70年間で、取り崩す金額と資産が尽きない確率を求めた
という研究です。
毎年定額で取り崩すとして、どのくらいの割合で取り崩したらどのくらいの期間資産が尽きないかという確率を出した研究です。
最近アップデートされて、1926~2017年の検証になっています。
結果は以下の通りになっています。

取り崩し期間の資産運用のアセットアロケーションとして
・株式100% 債券0%
・株式75% 債券25%
・株式50% 債券50%
・株式25% 債券75%
・株式0% 債券100%
の5パターンに対して、それぞれ取り崩し金額3%・4%・5%・6%の場合について検証しています。
仮に貯めた資産を5000万円として、4%ずつ取り崩すとしたら
5000万円 × 4% = 200万円
となり、毎年200万円を運用資産から取り崩して使うということになります。
但し、取り崩す場合に利益に税金がかかってくるので、実際には200万円より少なくなります。
表の見方としては、表の中の数字は資金が尽きなかった確率を表しています。
例えば株式100%で4%の場合、30年後には93%となっています。
これは、検証期間(1926~2017年)のあらゆる30年間を調べた結果、4%ずつ取り崩した場合には、93%の30年間では資産が枯渇しなかったことを意味します。
逆に言えば、7%の確率で資産が枯渇したということですね。
4%ずつ取り崩す場合では、預金であれば当然ながら25年で資産は枯渇します。
しかし、例えば[株式50%債券50%]の場合、30年後では100%、35年後でも96%、40年後でも86%の確率で資産が枯渇しなかったことがわかります。
枯渇しないどころか、4%ずつ取り崩しても[株式50%債券50%]の場合、中央値ベースで言えば資産は30年後には大きく増えていたこともわかっています。
これが
資産を4%ずつ使っていくことで、枯渇しない可能性が高い
という4%ルールの根拠になっているのです。
ちなみに、ここでの株式と債券は何でもいいわけではありません。
株式:S&P500インデックスファンド
債券:優良社債インデックスファンド(LQDのようなもの)
という前提があります。
トリニティ・スタディの結果をさらに見ていくと、以下のことがわかります。
・資産のアセットアロケーションは、株式50%以上が好ましい
・「3%、株式50%以上」の場合は40年後まで枯渇する確率がゼロ
・5%以上にすると、枯渇する確率が跳ね上がる
取り崩し金額を1%変えるだけで、結果が大きく変化しています。
1%がどれだけ大きいのか、よく表していますよね。
手数料として1%多く払うことのデメリットの大きさが、よくわかるのではないでしょうか。
「購入時3%・毎年2%」というような手数料を取られるファンドを買わされていたら、お金が貯まるわけないですね。
逆算して必要資産額を考える

投資などによって資産形成をするにあたって
いくらの資産を目標とするのか
というのは、非常に重要です。
そして、必要資産額は人によって違うため、各々が考えなくてはなりません。
必要な資産が既に貯まっているのにも拘らず、そのことを理解していなければ、無駄にとらなくても良いリスクをとることになってしまうかもしれません。
また、本来娯楽に仕えたはずのお金を投資に回して、人生の楽しみである娯楽を無駄に我慢することにもなりかねません。
ですから
自分にとって、いくらの資産が必要か
というのは、投資をする上で絶対に理解しておかなくてはならないのです。
この自分にとっての必要資産額を考える上で、4%ルールは一つの指標になります。
例えば、老後資金を投資によって作るとすれば、老後に生活費としてどのくらいの金額が必要かを考えればいいのです。
仮に老後は働かないとしたら
老後の年間不足金額 = 老後の年間生活費 ー 年間の年金受給額
という計算で年間不足金額がわかりますよね。
この年間不足金額を資産の4%を取り崩すことで賄えば、人生の最期までお金の心配なく生きていける可能性が高くなるということです。
つまり、この場合の必要資産額は
必要資産額 = 年間不足金額 × 25
と算出できます。
これを資産形成の目標とすることで、一つ目安になりますね。
年間必要額の25年分を貯めると・・・・

4%ルールについて、もう少し視点を変えてみましょう。
4%ずつ取り崩しても資産が枯渇しないのであれば
4%分の金額で生活できるのであれば、仕事による収入はいらない
ということになりますね。
つまり
年間支出額の25年分を貯めることができれば、リタイアできる
という理屈になります。
このことを利用した
FIRE (Financial Independence Retire Early)
というものが、今ムーブメントになっていて、目指している人が急増しています。
要は
若いうちに年間支出額の25年分を貯めて、早期にリタイアする
ということですね。
夢のある話ではありますが、年間支出額の25年分はなかなかハードル高いですね。
FIREについては、別の記事で詳しく説明します。
4%ルールの成功確率を上げるために

資産形成後の出口戦略としては、とてもわかりやすい指標になる4%ルールですが、資産が尽きてしまうこともこれまでの歴史上はあったことを忘れてはいけません。
暴落が最も悪いタイミングで来てしまうなどによって、30年後や35年後には資産がゼロになっている可能性があるのです。
そのような場合にも資産を尽きさせないための対策には
・取り崩す金額を4%より小さくする
・暴落時などは取り崩す金額を減らす
・多少なりとも働いて、余裕資金を作る
などがあります。
実際に取り崩し金額3%にすれば、40年後まで資産が尽きる確率はゼロです。
(株式50%以上の場合)
3%にするとしても、生活費を圧縮するだけが手段ではありません。
1%分だけは、働いて稼ぐのも一つですよね。
・3%だと、100%資産は枯渇しない
・4%だと、だいたい大丈夫
・5%だと、かなり怪しい
というようなざっくりしたイメージを持っておくだけでも、臨機応変に微調整できるのではないでしょうか。
(但し、過去のデータ上のことですから、未来を保障するものではありませんが。)
まとめ

・毎年資産額の4%ずつ取り崩しながら運用すると、枯渇しない可能性が高い
・4%ルールを利用して、自分の必要資産額を理解する
・年間支出の25年分を貯めることで、早期リタイアが可能になる
・4%ルールは絶対ではないので、微調整することで枯渇を避ける
未来が過去のデータと同じようになるかはわかりません。
しかし4%ルールは、資産形成後の出口戦略の大きなヒントになります。
4%ルールを軸に年金受給額なども考えて、資産形成の目標設定の参考にしてみてはいかがでしょうか。
そして、資産運用における1%がどれだけの破壊力があるのかをしっかり理解して、手数料にはこだわりましょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。